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「横浜トリエンナーレ2008」レポート

●10月23日 ■日本郵船海岸通倉庫(BankArt Studio NYK)


 

 2008年10月23日(木)と11月16日(日)の2回、横浜トリエンナーレ2008に行ってきました。横浜トリエンナーレは、3年に一回横浜の複数会場で行われる現代美術の大規模な展覧会。今回が3回目。

横浜トリエンナーレ | YOKOHAMA TRIENNALE http://yokohamatriennale.jp/

 私が見た順番に、印象的だった展示などの感想を書いておきます。

●10月23日(木) ■日本郵船海岸通倉庫(BankArt Studio NYK)

 ここの展示は、他の会場に比べても前衛の度合いが強い。怖さや気味の悪さもあって、そうした点も含めて芸術っぽい。「15歳以下は鑑賞禁止」、「人によっては不快感を抱く内容です」などの注意書きのある展示も。

 1階と2、3階で入口が異なるので、まずは1階と思って入ってみる。そうしたらここの展示がすごい衝撃的で、いきなり度肝を抜かれる。

・ヘルマン・ニッチュ「オージー・ミステリー・シアター」
 入口に、「15歳以下は鑑賞禁止」、「人によっては不快感を抱く内容です」といった感じの注意書きが。恐る恐る入ってみると、壁に映像が。そして奥にはインスタレーションが。
 映像は、裸の人間の上に死んでからまだ時間の経っていない(であろう)動物を乗せて(重ねて)、その動物を解剖する、というもの。血も流れるし、解剖した人々が内蔵を取り出して、ぐちゃぐちゃになる。
 そしてインスタレーションは、その解剖に使ったのであろう台や道具などを展示する。液体のシミなどもあって、使ってから長い時間が経っていると頭では分かっていても、気持ちは生々しく感じる。
 そして最初の印象の衝撃で、私は本当に人間を解剖しているのかと思って、思わず「うわー」と声を上げそうになってしまいました。
 これが横浜トリエンナーレで初めて見た展示で、当分忘れないと思う。

・勅使川原三郎「時間の破片 - Fragments of Time」
 同じく1階にあるのが、勅使川原三郎の「時間の破片 - Fragments of Time」。縦3m・横2m・奥行10mくらいのスペースに、床も壁も天井も、ガラスの破片が張り付けられる(床には敷き詰められる)。その上で勅使川原氏が踊るというパフォーマンス。
 この日はパフォーマンスは見ることができなかったが、ガラスを踏む音が展示空間に流れて、一人で静かに見たこともあって、パフォーマンスを想像できるような、そんな展示。

・田中泯「場踊り」
 このふたつに芸術の怖さのようなものを感じて圧倒されてしまったが、続いて1階の外で見た田中泯「場踊り」には、真剣さとユーモアの同居を感じて面白かった。設置された小屋の中や周りでのダンス・パフォーマンスなのだが、この日はパフォーマンスはなし。ただし、小屋の中に入ってモニターで場踊りの映像を見ることができる。その中で、富士吉田の小さな駅舎でのパフォーマンスは、観客が間近にいるので、見ている人の反応も含めての面白さがある映像。

・ツィ・クァンユー「友情の測定」
 2階に上って、まず面白かったのはツィ・クァンユーの「友情の測定」というビデオ作品。川の上の岩に板を乗せ、二人の男性が天秤のようにバランスを保って板の両側に立つ様子を映したもの。映像を途中から見たのだが、再び再生された最初の場面を見て、その意外性に笑ってしまった。

 その他2階で印象的だったのは、

・小杉武久「レゾナンス」
 展示空間内に、ほのかに光る照明装置と、静かな電子音を発する音響装置が設置されている。
 デジタルなホタルと虫の音のようでもあるし、アンビエントなディスコのようでもある。繊細だけれど、その場にいて飽きることがない。

・クロード・ワンブラー「無題の彫刻(大きくしなやかでセクシーな自分を喰らう裸のヴァンパイア)」
 彫刻の影だけが壁に映っている作品。想像力を刺激される。

・笹本 晃「Remembering / modifying / developing」
 一見、洋服ダンスなどがある人の部屋のようでありながら、明らかに奇妙な空間を作っているインスタレーション。ここでパフォーマンスを行うらしい。
 面白かったのは、空間内に置かれたカメラとモニターの位置関係で、想像していないモニターに自分が映ること。展示を見る者である自分が、実は別の人から見られる者になっている。

 そして3階へ。

・ロドニー・グラハム「銅鑼にポテトを投げ当てる」他
 3階でまず気に入ったのは、「銅鑼にポテトを投げ当てる」をはじめとするロドニー・グラハムの作品群。 「銅鑼にポテトを投げ当てる」は、タイトル通りの行為を淡々と続ける様子を映した映像。ポテトを投げる人(たぶん、ロドニー・グラハム本人なのだろう)は真剣なのが面白くて面白くて。
 同じ作者による写真「山積みのポテトでスタジオに入れない」や、オブジェ「ポテト・ウォッカ」なども展示されている。

・ダグラス・ゴードン「非自然史」
 ダグラス・ゴードン「非自然史」は、カラスやサソリなどの動物の映像。中でも、「いまいましい蛙」は”fucking frogs”という原題のとおり、蛙の交尾を静かに映す、という映像作品なのだが、これがなぜか妙にしみじみした趣を感じてしまう。

・ポール・チャン「6番目の光」
 ポール・チャンの、窓を通して床に映る影を模した映像作品「6番目の光」も、見ていると本当の影に思えてきて、不思議な感覚になる。

・オノ・ヨーコ「カット・ピース」&ジミー・ロベール
 オノ・ヨーコの「断”服”式」という感じのパフォーマンス「カット・ピース」や、それに影響を受けているのであろうジミー・ロベールのパフォーマンス(体に貼ったテープをお客さんに少しずつはがしてもらう!)の映像も興味深かった。この二つの映像を、向かい合うようにモニタを置いて流すのが面白い。

 BankArt Studio NYKでは、空間を比較的大きく使った展示の仕方も印象的だった。
 以上でBankArt Studio NYKを跡にする。小雨の中ぶらぶらと歩いて、新港ピアへ。

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