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「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LA FOLLE JOURNEE au JAPON) 熱狂の日音楽祭 2008」極私的レポート

昨年の極私的レポートはこちら


 東京国際フォーラムを中心に、有楽町・丸の内で行われたクラシック音楽の音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LA FOLLE JOURNEE au JAPON) 熱狂の日音楽祭 2008」、今年も昨年と同じく、会場に通い詰めてきました。極私的な内容ではありますが、レポートを。

2008年4月29日(火)

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 4/29、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2008」(以下「ラ・フォル・ジュルネ」)がいよいよ始まりました。

 東京国際フォーラムでの有料公演は5/2から始まりますが、今日4/29にはオープニングセレモニーが行われ、今日から丸の内を中心に無料のエリアコンサートが行われます。

 オープニングセレモニーといくつかのエリアコンサートを見てきたので、感想を書いておきます。

●13:00-13:30:LFJオープニングセレモニー@丸ビル1F「MARUCUBE」

 オープニングセレモニーとして、主催者・来賓挨拶、セレモニー(五線譜のオブジェに音符のオブジェを設置)。

●13:30-14:00:LFJオープニングコンサート@丸ビル1F「MARUCUBE」(出演:エーデルワイスカペレ)

 民俗音楽の演奏・研究を行うエーデルワイスカペレによるオープニングコンサート。管楽器とアコーディオン、曲によってシンセサイザーで弦楽器の音を出すという編成なので、オーケストラの曲も巧みにアレンジされている。曲名をメモした範囲で、曲目を書いておきます(表記がおかしかったら教えてもらえれば幸いです)。

・シューベルト「軍隊行進曲」1番・2番
・シューベルト「悲しみのワルツ」(ワルツ・2番)
・シューベルト「8つのエコセーズ」
・シューベルト「ウィーンの夫人のためのグランド行進曲」
・シューベルト「二つのメヌエット」


●14:00-14:30:エリアコンサート@東京ビルTOKIA「西側貫通通路」

 ピアノ(須藤千春)と弦楽四重奏(ヴァイオリン:千葉清加、ヴィオラ:瀧本麻衣子、チェロ:中美穂、コントラバス:小野聡美)による室内楽。
 MARUCUBEのコンサート後に向かったので、途中から。シューベルトの「ます」の第4楽章が聴けました。

●15:00-15:30:エリアコンサート@東京駅前(丸の内側)特設会場(出演:enpers)

 丸ビルと新丸ビルの間の通りの中央を、特別に会場として設営。ここで見たのはパーカッショングループのenpers。ドラムとマリンバが中心。
 タンゴにアレンジした葉加瀬太郎「情熱大陸」や、様々なパーカッションの楽器を使ったサンバなども良かったけれど、個人的にはマリンバによるシューベルト「アヴェ・マリア」が印象的だった。他には久石譲「風の通り道」(「となりのトトロ」で使用された曲)

●15:30-16:00:エリアコンサート@丸ビル1F「MARUCUBE」


 橋本抄和(ヴァイオリン)、松本玲奈(ピアノ)のふたりによるシューベルト「アヴェ・マリア」と、ブラームス「バイオリンソナタ・第3番」。ここまで聴いたエリアコンサートは、比較的短い曲が多かったので、「バイオリンソナタ」はじっくり聴いた、という感じでした。

2008年5月1日(木)





 本公演はいよいよ明日から始まる「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2008」(以下「ラ・フォル・ジュルネ2008」)ですが、今日は「熱狂のプレナイト」として東京国際フォーラムの地上広場で無料コンサートと屋台村による飲食販売が行われました。
 私も見に行ってきましたので、感想を。

19:15-20:00・21:00-21:30:エーデルワイスカペレ



 ヨーロッパの民俗音楽の演奏と研究を行うエーデルワイスカペレ。全3ステージのうち、2回目と3回目を見ました。

 4/29のオープニングコンサートでも見たのですが、今回の方が楽器も曲目も本来の形なのかなと思う。オーストリア(チロル)・東欧(スラブ)などの民族音楽を演奏。歌入りの曲もいくつか(ドイツ語とイタリア語の両方が登場する曲も)。聴き惚れるようないいメロディーの曲から、思わず手拍子しながら聴いてしまうノリのいい曲まで。

 楽器も、木のスプーンを打楽器にしたり、小さなトランペットや、見た目はアコーディオンみたいだけれどハーモニカの仲間という楽器など、珍しいものを使っていた。
 珍しいといえば、牛の首につける鈴(クーグロッケン)をハンドベルのように演奏するのは面白かったなあ。音の異なる大小20個くらいの鈴(かなり重そう)を、紅一点の見た目は華奢な女性が巧みに演奏する。ずっと振り続けないと音が続かない鈴を、それぞれの手で順番に持って演奏しては置いてを繰り返す。あれはかっこいい。



エーデルワイスカペレ公式ホームページ

20:00-21:00:レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラ



 名前の通り、スティール・ドラム(スティール・パン)で演奏するトリニダード・トバゴの楽団。
 スティール・ドラム自体も、どうやって音の高低を出しているか不思議。おそらく、ドラムの形の違いとたたく場所が関係しているのだろう。またそれぞれの楽器(大きさや楽器を叩くバチが異なる)がどのようなパートなのかも、見た目には分からなくて不思議な感じ。それだけに、ライブで見る醍醐味が味わえた。

 前半はクラシックを演奏。シューベルト「軍隊行進曲」・「死と乙女」、バッハ「アヴェ・マリア」などが演奏される。「アヴェ・マリア」は、特に音色がきれいに感じた。

 ラスト3曲は、それまでとは一転して、まさしくカリブのダンス・ミュージックという感じの激しく楽しい演奏。指揮者の方も後ろでパーカッションを担当するのだが(つまり、ここでは指揮者不在なのだが)、メンバー全員の息がぴったりと合った演奏。あれはやはり、国・地域に長く受け継がれてきたリズムなんだろうなあ。見ている方も、聴きながら手拍子しつつ、踊りつつ盛り上がる。

 ということで、プレナイトから面白かった。明日は夜に公演もふたつ見るので、今から楽しみです。東京国際フォーラム内でのイベントも明日から始まるしね。



2008年5月2日(金)

 いよいよ、東京国際フォーラムでの本公演が始まった「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2008」(以下「ラ・フォル・ジュルネ2008」)。今日からを「初日」と表現する場合も多いようです。

 私も、仕事帰りに行ってきました。

19:10-19:30 いちむじん@地上広場【ヨーゼフ広場】・ミュージックキオスク

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 ギターデュオ「いちむじん」、昨年も地上広場を中心に出演していたのは知っていたが、ちゃんと聴いたのは今回がはじめて。
 今回は、すべてシューベルトの曲(ワルツを7曲・軍隊行進曲・セレナーデ)を演奏。
 軍隊行進曲は、ギター2本の演奏だと、おおらかな雰囲気でまた違った面白さがある。ワルツはヨーロッパの民謡のように聴こえる。

 ちなみに、曲間の話によると、シューベルトはギター曲こそつくらなかったものの、作曲は19世紀のギター(今のものよりもひとまわり小さい)で行っていたらしい。

 なお、地上広場はチケットの半券や見る前のチケットが無くても見ることのできる、完全フリーの会場です。
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 コンサートの後、そのまま地上広場の屋台村で夕食。牛タン丼にする。その後、今年最初の本公演へ。
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公演番号145 20:15-21:30@ホールC

シューベルト/ベリオ:シューベルト/ベリオ:レンダリング (交響曲ニ長調 D936aをもとに)
シューベルト/レーガー:「糸を紡ぐグレートヒェン」 作品2 D118
シューベルト/ウェーベルン:「君の姿」 (歌曲集「白鳥の歌」 D957より)
シューベルト/レーガー:「君こそ我が憩い」 作品59-3 D776
シューベルト/ウェーベルン:「道しるべ」 (歌曲集「冬の旅」 D911 より)
シューベルト/リスト:「若い尼僧」 D828
シューベルト/レーガー:「音楽に寄す」 D547
シューベルト/ブリテン:「ます」作品32 D550
シューベルト/レーガー:「魔王」 D328

ナタリー・ゴードフロワ(ソプラノ)
トーマス・バウアー(バリトン)
ポワトゥ=シャラント管弦楽団
ジャンー=フランソワ・エッセール(指揮)


 「レンダリング (交響曲ニ長調 D936aをもとに)」は、シューベルトの曲をイタリアの現代音楽家が再構築したもの。たしかに、ところどころ「これ、ミニマル・ミュージックみたい」と思うような部分も。
 以降は歌曲。「ます」や「魔王」のようなポピュラーな曲も印象的だったが、一番印象に残ったのは「音楽に寄す」のメロディー。「泣ける」という意味でいいメロディーがところどころに登場する。このメロディーの雰囲気は、四つの即興曲にも通ずるものがある。
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 ホールCの公演を見てから、次の公演までのわずかな間、ガラス棟地下の展示ホール(【グラーベン広場】 &【トラウト】 )へ。ここでの今日のコンサートは終了していた時間でしたが、物販ブースや展示をしばらく眺める。

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 スティール・ドラムが展示されていて、触ることもできたので、指で弾いて音を出してみる。イメージとしては、金ダライの一部をへこませて、そこをバチで叩いて音を鳴らす楽器。
演奏を見ていても面白かったけれど、いじってみても面白い。適当に叩いても、なんとなく中南米っぽい音が出る。
 ただ、これでクラシック音楽を演奏するのは、相当な練習が必要だと思う。改めてレネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラのすごさを感じる。

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 そうこうするうち時間になったので、ホールAへ移動。
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公演番号115 22:15-23:05@ホールA

シューベルト:バイオリンと管弦楽のためのロンド イ長調 D438
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」

庄司紗矢香(バイオリン)
ボリス・ベレゾフスキー(ピアノ)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ヤツェク・カスプシク(指揮)


シューベルト:バイオリンと管弦楽のためのロンド イ長調 D438
 庄司紗矢香さんのバイオリンを生で聴いたのは初めてですが、華麗で存在感のある演奏だった。ソロバイオリンは、曲中でほとんど途切れることなく演奏される。その音色が美しい。いやあ、聴けてよかった。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 ボリス・ベレゾフスキーのピアノも、存在感がある。勇壮な前半、優雅な後半、ピアノに合わせて、オーケストラの音の雰囲気も変化する。前半・後半のそれぞれが魅力的だった。
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 という感じで、初日から満喫してきました。それからもうひとつ、ガラス棟の地下を歩いている際にルネ・マルタン氏(ラ・フォル・ジュルネの生みの親)とすれ違いました! ルネ・マルタン氏は一人で移動中だったし(ちょっと急いでいる風だった)、私はフランス語も英語もろくにしゃべれないしで、ただ後ろ姿を見送ったのですが。まわりのスタッフの方も「あ!」って感じで見ていました。
 ルネ・マルタン氏、ラ・フォル・ジュルネの会場内で神出鬼没とは聞いていましたが、本当なんだなあ。

 さて。明日は朝一番に(10:15開演)レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラをホールAで見てきます。

2008年5月3日(土)

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 本日が本公演2日目となる「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2008」(以下「ラ・フォル・ジュルネ2008」)。私は時間の都合上、本日は朝一番の下記の公演のみ見てきました。

公演番号211 10:15-11:00@ホールA

シューベルト/レネゲイズ:3つの軍隊行進曲 D733 より抜粋
シューベルト/レネゲイズ:楽興の時 作品94 D780 より抜粋
シューベルト/レネゲイズ:「セレナード」(歌曲集「白鳥の歌」 D957より)
シューベルト/レネゲイズ:即興曲集より抜粋
シューベルト/レネゲイズ:2つのスケルツォ D593より抜粋
シューベルト/レネゲイズ:弦楽四重奏第14番「死と乙女」より
シューベルト/レネゲイズ:交響曲第7番ロ短調 D759 「未完成」より抜粋
シューベルト/レネゲイズ:「魔王」 D328
シューベルト/レネゲイズ:「アヴェ・マリア」 作品52-6 D839
*本音楽祭のために特別にスティール・バンド用に編曲されました。

レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラ


 5/1のプレナイトで、地上広場でも聴いたレネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラ(以下、「レネゲイズ」)ですが、今回はホールAでの公演。衣装もタキシード・ドレスのオーケストラ・スタイル。

 レネゲイズはトリニダード・トバゴのオーケストラ。使用する楽器は、元はドラム缶でつくられていたという、音の出る打楽器「スティール・ドラム」。スティール・ドラムの音は、不思議な響き方をする。ホール内での反響なのか、あるいは楽器同士の共鳴なのか分からないのですが。また、見た目のインパクトもあって(ドラム缶や金ダライのような外見をしている)、なんとも不思議で、魅力のある楽器。
 元々は、カリブのダンス・ミュージックや民族音楽に使う楽器なのだと思うが、これでクラシック音楽を演奏するというのも珍しい。

 曲目は、シューベルトのポピュラーな曲からポピュラーな部分を抜粋していて、親しみやすいメロディーが続く。「軍隊行進曲」や「楽興の時」のようなにぎやかな曲も似合うのだが、「即興曲集」や「アヴェ・マリア」のような曲が、実は似合う。先ほど書いたように、私はスティール・ドラムってダンス・ミュージック向けの楽器という先入観があったので、その音色の美しさは意外性があって印象的だった。

 コンサートの後、物販ブースで行われたサイン会にも参加してしまいました。

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Renegades Steel Band Orchestra『Schubert(Renegades): Works [Limited] 』(2008/04/29、Mirare・MIR073)  @TOWER.JP

2008年5月4日(日)

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 本日は仕事も休みなので、昼頃から東京国際フォーラムに来ています。

●13:10-13:30@地上広場

 女声五人のアカペラグループ「アウラ」による演奏。

・モーツァルト「トルコ行進曲」
・シューベルト「野ばら〜ます」
・シューベルト「アヴェ・マリア」
・ベートーベン「田園」(ワーズワースの詩を付けて)


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(チューニング中の写真です。本番中は撮影不可だったので)

 最初の「トルコ行進曲」に詩(おそらくドイツ語かな)のついたアカペラというのが、意表を付かれて面白かった。スキャットで歌うのは聴いた記憶があるけれど。

 シューベルトの代表的な歌曲をアカペラで聴けたのもうれしかった。「ます」では伴奏の低音のメロディーも声で奏でられて、音の幅の広さを感じさせる。

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公演番号313 14:30-15:40@ホールA

バッハ:3台のピアノのための協奏曲ニ短調 BWV1063
シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D944 「グレイト」

小曽根真(ピアノ)
児玉麻里(ピアノ)
児玉桃(ピアノ)
上海交響楽団
大友直人(指揮)


 最初のバッハ「3台のピアノのための協奏曲ニ短調」は、まずステージに並ぶ3台のピアノというのが壮観。
 初めて聴いた曲だったのですが、「あ、バッハだ」というのが感じられるメロディー。ミサ曲などに共通する雰囲気がありました。
 ピアノのみで演奏される部分、オーケストラとの演奏を行う部分、いずれもメロディーが美しい。

 シューベルトの交響曲第8番「グレイト」は、起伏に富んでいて、特にラストに向かうにつれてどんどん盛り上がっていく。オーケストラの演奏の醍醐味という感じ。
 やや残念だったのは、客席が(私の座っていた席の回りが)やや落ち着かない雰囲気だったこと。咳が止まらない子や泣き出してしまう子、楽章の途切れに起きてしまった拍手(曲終わりだと勘違いしてしまった方がいたようです)など、ちょっと演奏を聴くことに集中できない出来事があった。

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「シャニ・ディリュカのピアノの音色に酔う」

公演番号365 16:45-17:30@G409

シューベルト:3つのピアノ曲 D946
シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 作品120 D664

シャニ・ディリュカ(ピアノ)


 今年はこれまで、ホールA・ホールCという大きなホールで聴いていたので、客席150席弱のこぢんまりした会場は初めて。
 ここで、楽しみにしていたシャニ・ディリュカさんのピアノ・ソロを聴く。

・シューベルト:3つのピアノ曲 D946

 最初のメロディーで、私は思わず涙が出た。シューベルトの曲の中には、私の涙腺を刺激するものがあって、ピアノの音色なら4つの即興曲、他にも「アヴェ・マリア」なども自然に涙が出てくる。この曲もそうなんだよなあ。

・シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 作品120 D664

 ピアノ・ソナタも、美しいメロディ。この美しい音楽を聴けるという幸福感に、感激に近い思いを抱いて、やはり涙腺が刺激される。

・アンコール:グリーグ「Marche Des Trolls」

 アンコールには、彼女が最も得意とするグリーグの作品。抒情小曲集から1曲披露してくれる。この曲は、早いテンポで力強く、しかも正確なテクニックに圧倒されました。

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 3曲に共通して感じたのは、シャニ・ディリュカさんがピアノを弾く時の繊細さと情熱。これが曲の雰囲気と合わせて、演奏の中で表現される。
 ちなみに、容姿もとても美しい。スリランカ人の両親の元、モナコで生まれ育った方なので、エキゾチックな美しさを持っている。そして奏でるピアノの音色も美しく、私は去年演奏を聴いてファンになりました。

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(チューニング中の画像です)

「世界で一番と言ってもいいくらい美しい「アヴェ・マリア」」

●18:30‐18:50@展示ホール「グラーベン広場」

 スティール・ドラムのオーケストラ、レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラの演奏を聴く。今回は、ホールAで見た公演と同じくタキシード、ドレスという衣装。足元は今年のシューベルトのイメージイラストが履いているスニーカーでそろえていました。

 最初に「軍隊行進曲」、次が交響曲「未完成」(たっだと思う。ご覧になった方、誤りだったら教えてください)、最後が「アヴェ・マリア」と、すべてシューベルトの曲。
 もしかしたら、彼ら本来の音楽であるカリブのダンスミュージックを1曲演奏するかと思ったのですが(プレ・ナイトでは演奏してくれた)、今回はテーマに合わせたシューベルトの曲。

 中でもよかったのは、「アヴェ・マリア」。スティール・ドラムの透明感のある音が、似合うんです。これまで聴いたシューベルトの「アヴェ・マリア」の中でも、1、2を争うくらい美しい演奏かもしれない。このアレンジ、すごく好きです。

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(シューベルトのリアルな人形@展示ホール2)

●20:30-21:30 トラウトナイト@地下展示ホール2「トラウト」

田中泰(ぴあクラシック担当デスク)
ゲスト:ルネ・マルタン


 展示ホールでのトラウトナイトでは、毎晩コンサート・ワークショップ・トークショーなどが行われる。今回はぴあの田中泰氏が、ラ・フォル・ジュルネの生みの親、ルネ・マルタン氏を招いてのトークショー。
 今年のラ・フォル・ジュルネについて、また今後の日本での予定について、面白い話を聴けました。ルネ・マルタンさんの話を聴けるのは、コンサートを一公演見るのと同じくらいの価値があると思う。

 ルネ・マルタンさんは、自分が面白いと思うものをとことん突き詰めて、その魅力を人に伝える力がある人だと思う。それもご本人の自己満足ではなく、いかに多くの人に広めるかをしっかり考え、説得力のある行動を実行し、実際に結果を出してるところに敬意を抱きます。
 また、そういうすごい方なのに、雰囲気がビジネス臭くなく、シャイでチャーミングなおじさんという感じ(実は意外と小柄)なのも、人間的な魅力を感じさせる。でも、話は非常に明快で、聴いていると常に音楽や芸術について考えているのだろうと感じる。

 以下、ルネ・マルタン氏の話から印象に残った部分を紹介します。

ラ・フォル・ジュルネを思いついたきっかけは、クラシック音楽のコンサートとU2(ロックバンド)のコンサートを比較して、U2のコンサートにたくさんの人が来るのはなぜだろうかと思ったこと。

●シューベルトは、誰かの依頼ではなく、自分が作りたいから作曲した初めての作曲家。初めてのフリーランスの作曲家。
 はじめ、シューベルトは悲しい曲が多く、ラ・フォル・ジュルネで取り上げるテーマにはそぐわないのではないかという声もあった。しかし、実際はよい反応が多く、シューベルトの音楽の博愛のイメージが広まったと思う。

ラ・フォル・ジュルネのプログラムは、2-3年前から考えている。今は2009年や2010年のコンサートのアイデアを考えている。それは、プログラムに取り入れる曲をすべて知りたくて、しっかりと聴きたいから。

●東京に来ると、時間があればCDショップを回って、毎回50-100枚くらいのCDを買っている。

レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラについて

 今年のナントでのラ・フォル・ジュルネにあわせて、シューベルトの曲の編曲を依頼した。シューベルトの精神を継いだ演奏だと思う。
 シューベルトは午前中に作曲し、夜は友人と演奏をしていたという。シューベルトがレネゲイズの演奏を見たら喜んだだろう。

●シューベルトは、自分が作曲した曲をホールで指揮した経験はなかった。生きている間に彼の曲がコンサートで演奏されたのも2回だった。
 祖父・父、本人も学校の先生だったので、学校で友人や家族と一緒に演奏していた。

ベートーヴェンとシューベルト

 同時代人だが、シューベルトは内気だったのでベートーヴェンに話しかけることはなかった。しかし、ベートーヴェンはシューベルトに注目していた。
 お互い、亡くなる前に相手の楽譜・音楽を求めたというエピソードもある。ふたりには通ずるものがあったのではないか。

金沢でのラ・フォル・ジュルネ(テーマはベートーヴェン)について

 東京という大都市につづいて、地方にある小都市でのコンサートを希望していた。それぞれで開催することで、日本について分かると思った。金沢には、伝統音楽、日本文化、21世紀の音楽、美しい庭園がある。
 また、金沢・東京とも、これまでクラシックのコンサートにあった壁・垣根を取り除こうという理念をスタッフが持ってくれている。

 金沢ではベートーヴェンがテーマ。新たに開始したブラジルのリオ・デ・ジャネイロのテーマもベートーヴェン。最初に行う場所では、ベートーヴェン・モーツァルトの順でテーマにするのが通常。
 ベートーヴェンはクラシック音楽のテーマとして普遍であり、曲には愛・博愛がある。
 ブラジルでのラ・フォル・ジュルネには、リズム、優れたオーケーストラ・ソリスト、エネルギー、有名なポピュラーミュージックなど、色々な力がある。

(田中氏から質問:ベートーヴェンというと、日本では年末に「第九」が多数演奏されるが、フランスでは?)
 フランスではない。バッハのオラトリオやヘンデルのメサイヤのようなキリスト教の宗教曲が多い。

●来年について。来年のテーマはJ.S.バッハとその家族

 J.S.バッハの妻・子どもも優れた作曲家だった。友人にも優れた作曲家が多い。バッハの曲を編曲した後の作曲家も多く、19世紀・20世紀の音楽への影響も大きい。
 ピアノ曲、オーケストラ曲は全曲演奏を予定。ミサ曲も予定。また初来日を含むバロック音楽の演奏家を多数来日させる予定。

(田中氏:バッハといえばオルガン曲が有名ですが、東京国際フォーラムにはオルガンはありませんよね?)
 サントリーホールには素晴らしいオルガンがありますね。また、来年の初めにサプライズを発表できるかもしれません。

 バッハは、ジャズのミュージシャンにも影響を与えている。アメリカのジャズ・ピアニストも呼び、小曽根真さんにも出演してもらう予定。3-4台のピアノでの演奏もや、フーガを6-7のバージョンで演奏することも考えている。

●2008年11月のルネ・マルタン氏プロデュースによるコンサート。
 東京の東京オペラシティ、大阪、名古屋で、ショパンのピアノ曲の全曲演奏を行う

 ショパンが作曲した年代別に、年代の異なる6人のピアニストが演奏(ショパンの作曲した年齢と同じ年齢のピアニストに演奏してもらう)。1回1時間を14回行う。

(田中氏:コンサートに来る方へのアドバイスを)
●プログラムに準備している曲、出演する音楽家はすべて素晴らしい。詳しい方に質問しても、偶然でもいいので、コンサートに足を運んで欲しい。
(田中氏:ラ・フォル・ジュルネは、「誰が・どこで・なにを演奏したのか」を聴くというよりも、「ラ・フォル・ジュルネで音楽を聴いた」というように、見る方の意識を変えたのかもしれない)

 その後、ルネ・マルタンさんから、5/5・5/6の公演の中で特にオススメの公演の紹介もあり。思わず5/6のチケットを追加で買ってしまいました。

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 そしてもう一つ、この日は公演の合間に、ガラス棟地下のロビーギャラリーで行なわれている、クラシック専門のデジタルラジオ・インターネットラジオ「OTTAVA」の公開生放送、「OTTAVA シューベルティアーデ スペシャル」も聴きに足を運びました。

 公開生放送は5/2から行なわれていて、私も機会を見ては足を運んでいたのですが、今日は特に行きたい理由があった。
 それは、この日の放送を担当したプレゼンター(DJ)のひとりが、宮前景さんだったため。宮前さんが担当で、平日22:00-25:00生放送の「OTTAVA con brio」は、家にいる時は大体聴いていて、その素敵な声が好きなのです。実際に拝見して、声と同じくらいご本人も素敵な方でした。ますますファンになりそうだ。
 番組自体も、コンサートを終えた音楽家を中心に入れ替わり立ち替わり様々なゲストが登場し、面白かった。

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2008年5月5日(月)

 本日は有料公演のチケットは買っていなかったのですが、気になる無料公演があったので、やはり仕事が終わった夜から東京国際フォーラムへ。

●20:00-20:20@グラーベン広場

・シューベルト「野ばら」
・シューベルト「菩提樹」(『冬の旅』より)
・シューベルト「郵便馬車」(『冬の旅』より)
・シューベルト「魔王」
・シューベルト「アヴェ・マリア」

青島広志(ピアノ・お話)
平松剛一(指揮)
平松混声合唱団


 シューベルトの歌曲を、青島広志氏の編曲により合唱曲にしたものを演奏。「アヴェ・マリア」以外は、青島氏の日本語訳詞で歌われた。「魔王」を登場人物ごとに別のパートで歌うのは、アイデアとしては想像できるが、魔王を女声二部で担当するなど、配役の妙が感じられて興味深かった。

●20:30-22:00 トラウトナイト「小曽根真ワークショップ」@展示ホール2「トラウト」

 ジャズ・ピアニストで、クラシック音楽の演奏も行う小曽根真氏が登場。ラ・フォル・ジュルネでも、2006年のモーツァルト、2007年のガーシュウィン、そして今年はシューベルトにバッハと、演奏を披露している。
 演奏を交えながら、自身の音楽観を話すというスタイル。後半には質疑応答も。

 印象的だった話を紹介します。

鍵盤を演奏し始めたのは四歳の頃、家にあったハモンド・オルガン。黒鍵の部分だけを弾いていた。曲としては「お座敷小唄」やマック・ザ・ナイフなどを弾いていた。
 しかし、五歳でピアノを習い始めて、バイエルで嫌になって、十二歳までピアノを弾くことがなかった。
 十二歳の時、友人の代わりにオスカー・ピーターソンのコンサートをみて衝撃を受け、それからピアノを弾くようになった。

♪そのコンサートでオスカー・ピーターソンが弾いたという「クバーノ・チャント」を演奏。

●ジャズとクラシックの違い。

 クラシックはそれぞれのライン(音程)、メロディーがある。ヨコのつながり。

 ジャズは、コード、タテのつながりを重視する。そして、リズムが重要(音程を間違えてもリズムは間違えるな、と言ったトランペット奏者のエピソードもありました)。
ジャズでは、ピアノやギターもドラムやベースと同じリズムの楽器。鍵盤もはたくように弾く(例えばラテンの「モントゥーノ」という演奏法)。

 ジャズの感覚でモーツァルトの練習を始めた時、自分でもなにか違うと思った。そこから、メロディーを大切にするクラシックの演奏を勉強していった。

●ハーモニーとアドリブ

 楽譜を暗譜する場合も、ハーモニーで覚えている。

♪モーツァルト「ピアノ協奏曲ソナタ・27番」(だったと思う。間違っていたら教えてください)のハーモニーをどのように感じるかを表現しながら演奏。

 クラシックの曲のハーモニーは、今演奏したように聴こえる。アドリブのフレーズも、ハーモニーから浮かぶ。

●アドリブはどうやって生まれるか

 外国語を覚えるのと同じ。真似から始まる。そこから、新しいものを弾きたくなってバリエーションが増えていく。

 日本語でしゃべるのを考えると、読み書きより先にしゃべるのを覚えた。ボキャブラリーは知らないうちに増えていき、後からしゃべっていた言葉と読み書きが結びついた。
 音楽と楽譜の関係も、この言葉の関係に近いかもしれない。

 自分の音楽性を作るためにどうすればよいか。チック・コリアに質問した時、「作曲をすることだ」と言われた。

 ブルースは、3つのコードとブルーノート・スケールと呼ばれる音階で曲を作れる。ひとつの音のリズムのバリエーションでも曲になる。

♪チャーリー・パーカー「Now's the Time」を演奏

 クラシックの演奏でも、ジャズのように他の演奏者を見ながら演奏してしまうことがある。本当は指揮者を見なければいけないのだけれど。

 会話をするように、他の楽器とフレーズのやり取りをするのも、アドリブの面白さ。

●質疑応答

Q.小曽根さんにとってクラシック音楽とは?
A.すごいところに足を突っ込んだという感じ。

 作曲家としては、音楽を作るうえでの宝箱。和音が多いジャズとは異なり、少ない音でいい音楽ができる。アイデアがわいてくる。

 ピアニストとしては、演奏・練習をする中で、ピアノがうまくなった。精神的も肉体的にもまだ伸びることが分かった。ただ、素晴らしい作品が多すぎて、どこから手をつけようかと思ってしまう。周りの方にアドバイスを受けていく。
 クラシックのピアニストのような弾き方もしてみたいが、正統派の演奏があるとともに、クラシックのピアニストでも自分の弾き方をする人もいる。自分の弾き方を探していきたい。

Q.ジャズ・ボーカルを歌ってみたい。勉強するのにオススメのジャズ・ボーカリストは?
A.フランク・シナトラやメル・トーメ。黒人のボーカリストは、持って生まれたリズムが違うので真似をするのが難しい。その点、フランク・シナトラはいいのではないか。

Q.ジャズの聴き方。聴くのは好きだけれど、なにを聴いたらいいのか分からない。
A.明るいピアノならオスカー・ピーターソンがオススメ。他にチック・コリアにも明るい曲がある。バラードならビル・エヴァンスやキース・ジャレットなど。

Q.クラシック音楽の中で苦手なジャンルはあるか。
A.かつてはバッハやバロック音楽は数学的に感じて苦手だった。しかし、実際に弾くようになって世界の深さを感じた。
 クラシックも、モーツァルトまでは即興で演奏する人もいたらしい。

Q.クラシック音楽を退屈だと感じたことは。
A.昔はあった。今は感じ方が変わった。クラシック音楽を聴くようになったのはデビュー直前。それまでオスカー・ピーターソンのように弾くことが自分のゴールだった。しかし、デビューするにあたってはピーターソンの真似ではだめ。そこで勉強する中でクラシック音楽も聴くようになった。その時友人に教えてもらったのはアシュケナージが弾いたプロコフィエフの曲だった。
 本格的にクラシックを聴くようになったのは、モーツァルトを弾くことになったここ4年くらいかもしれない。

 ジャズは自由に感じるが、アドリブは自分のフレーズのボキャブラリーの範囲が限界。クラシックは一見不自由に感じるが、曲をどう表現するかという幅・自由は大きい。
 クラシックの制限の中で、そこで曲の世界を壊さず、かつ自分なりのプラスアルファを出すことは、実は怖い。ただジャズ風にすると、安っぽくなってしまう。例えばカデンツァ(即興演奏)の部分で弾けた演奏をするのもひとつの考え方。でもそれは、そこまで作曲家の言葉を朗読していて、突然自分の普段のしゃべり方をするようなもの。それでは、曲の持つ物語や、自分が重ねたその曲の練習を壊してしまうのではないかと思う。
 カデンツァといっても、好きに弾いていいわけではないし、ルールのある楽しさや自由さもある。

Q.今後、クラシック音楽を録音する予定や、今後のオーケストラとの共演について。
A.ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」はぜひレコーディングしたいと思っている。
 同じガーシュウィンの「へ調コンチェルト」も好きで、バーンスタイン「不安の時代」とともに収録したCDを出したいと企画したことがあったが、実現していない。
 「ラプソディ・イン・ブルー」は、演奏するたびに色々なことが見えてくるので、もう少し弾き込んでからCDに収録したいと思っている。

Q.オーケストラとのコミュニケーションや、これから即興演奏を行う可能性などについて
A.ソリストとオーケストラが共演すると、化学反応が起こる。譜面どおりに演奏しても、ある種の即興になると思う。
 また演奏の一部でアドリブもできる。「ラプソディ・イン・ブルー」では何度か行った。無理にやってはいけないが、アドリブをやってみたい方とは演奏してみたい。

 音楽は、言われたからではなく、演奏したいから演奏する。自分の感性を信じるのが芸術だと考える。音楽に限らず、どんな芸術でも。

 アドリブ演奏でも外国語でも、間違えたくないという思いがあると思う。でも、まずはじめてみる、動いてみることが大切だと思う。自分はそうして音楽を演奏してきたので、知らないことを恐れずにモーツァルトの演奏に挑戦できたのだと思う。

 オーケストラの人には音楽の蓄積がある。そこから取り出せば、素晴らしい即興演奏もできると思う。

Q.指揮に興味はありますか
A.あります。でも実際に指揮をするのは、まだ怖い。

♪最後に、シャルル・アズナブール「She」を演奏して、ワークショップは終了。

 小曽根真さんがすごい、という話は聴いていたし、5/4に演奏も聴きましたが、色々な話、ジャズ演奏を近くで聴くと、改めてすごい、と感じました。

 オスカー・ピーターソンをはじめ、話の中に登場したジャズ・クラシックの音楽家の中で、名前しか知らなかったり名前も知らなかったりした人がいたので、ぜひ聴いてみたい。オスカー・ピーターソンは特に聴こうと思います。

2008年5月6日(火)

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  いよいよ5/6が最終日です。今日は仕事が休みだったので、昼には東京国際フォーラムに到着。

 今日はいきなり色々な人とすれ違う。地下のロビーでは、展示ホールでの公演を終えたばかりのレネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラの指揮者の方とすれ違う。
 さらに、地上広場でクラシック専門のラジオ曲「ottava」のプレゼンター(DJ)森雄一さんを見かけ、思わず声をかけてしまう。ラジオと同じ(当たり前だけれど)、渋い声の素敵な方でした。

 そんなこともありつつ、屋台村で昼ごはんを食べつつ、本日最初の公演へ。
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●公演番号543 13:00-13:45@ホールC

シューベルト:ミサ曲第4番ハ長調 作品48 D452
ベートーヴェン:合唱幻想曲 作品80

カタリーナ・ライヘ(ソプラノ)
ヴィープケ・レームクール(メゾ・ソプラノ)→クリスティーネ・ミッターマイアに変更
シュテファン・ツェルク(テノール)
有馬牧太郎(バス)
ウルリーケ・パイヤー(ピアノ)
シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭合唱団
オーケストラ・アンサンブル金沢
ロルフ・ベック(指揮)


シューベルト:ミサ曲第4番ハ長調 作品48 D452

 ミサ曲なので、静かな曲が続くのかと想像していたら、意外と力強い曲もあったりする。ミサ曲=レクイエムと勝手に思い込んでいたのですが、そうではなく、讃美歌のような神様への感謝などを歌うってことなんですね。

ベートーヴェン:合唱幻想曲 作品80

 ピアノ・オーケストラ・歌という、ちょっと珍しい組み合わせ。これが非常に素晴らしかった。

 第一楽章は、ピアノの独奏。少ない音数で、緊張感のある演奏。

 第二楽章は、ピアノとオーケストラによる演奏。第一楽章から続く緊張感と、音数・楽器が増えていく軽やかな演奏が交互に登場して、徐々に音楽が盛り上がっていく。

 そして第三楽章。はじまりは、やはり少しずつ音が出て、そこから少しずつ各楽器が加わる。そして、後半に歌手が一斉に起立し、合唱が加わった時の躍動感というか生命力が素晴らしかった。公演プログラムに「旋律も『喜びの歌』そっくり」とあるが、たしかに似ているし、なにより曲が盛り上がっていく雰囲気が似ている。

 これは、聴けてよかったなあ。
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 そのまますぐ、次の公演を見るためにホールを移動。

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●公演番号513 14:30-15:15@ホールA

ウェーバー:「オイリアンテ」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58

小山実稚恵(ピアノ)
フランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団
クワメ・ライアン(指揮)


ウェーバー:「オイリアンテ」序曲

 私が今年の公演で聴いた、初めてと言ってもいいくらい勇ましい曲。この曲はこの曲でよかったし、一方で今年数多く多く聴いたシューベルトの曲の内気さや優しさのようなものにも思いを馳せてしまった。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58

 実は初めて聴いた曲で、私には馴染みのあるメロディーもない曲。でも、聴いていると引き込まれる。
 大きな音や、連続した響きの続く派手な曲ではないのだけれど、ピアノとオーケストラが少しずつ音を重ねていって、じわじわときれいな曲だと感じる。
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 その後、次の公演までは少し時間があったので、東京国際フォーラムの中を歩き、無料公演も聴く。

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●15:30-15:50 グラーベン広場コンサート@地下展示ホール1「グラーベン広場」

シューベルト交響曲第7番「未完成」

尾原勝吉記念オーケストラ
指揮:高橋隆元


 「未完成」は、レネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラのスティール・ドラム版アレンジで聴いたので、オーケストラによる演奏は会場内では始めて。これが未完成に終わったのは、惜しいなあということを、聴きながら改めて感じた。
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 それから、一時的に東京国際フォーラムを離れたエリアコンサートにも行く。とはいえ、道路を一本挟んだ隣のビルですが。

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(TOKIA方向から東京国際フォーラムを臨む)

●16:00-16:30 丸の内エリアコンサート@東京ビルTOKIA1階【西側貫通通路】

シューベルト「八重奏曲より、第1楽章・第3楽章・第6楽章」

アンサンブルMarunouchi(横山奈加子、島田真千子、赤坂智子、大成雅志、奈波和美、大森啓示 他 (全日本ピアノ指導者協会))


 バイオリン2、ビオラ、チェロ、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネットという編成。「八重奏曲」の途切れることのないハーモニーが印象的。

 会場は、高さが10mくらいあるビル内の通路で、上はガラス張り。この室内だけれども開放的な雰囲気が、なんだか魅力的。東京国際フォーラムのガラス棟の地下にも似た雰囲気がある。音響も、意外といいのです。
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 戻ってくると、そろそろ次の公演の入場にいい時間になっていました。

●公演番号514 17:00-17:50@ホールA

モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626

谷村由美子(ソプラノ)
ヴァレリー・ボナール(アルト)
マティアス・ロイサー(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)
ローザンヌ声楽アンサンブル
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ミシェル・コルボ(指揮)


 ミシェル・コルボ指揮によるレクイエムは、去年のフォーレのレクイエムに続いて2回目。

 私は歌曲を聴く時も、解説パンフレットの日本語を読みながら聴くことはないし(悪い聴き方かもしれないが)、モーツァルトのレクイエムの歌詞の内容も詳しくは知らなかった。この曲について知っていたのは、シューベルトが亡くなった後、友人たちが追悼ためにこの曲の演奏を行った、ということ。

 そんな状態で聴いても、演奏の持つ凄さに心を奪われたというか、心が震えた。
 オーケストラ・合唱・独唱のそれぞれのメロディーに、涙が出てくることもあり、幸福な気持ちになることもあり。これを生のコンサートで見たことは、貴重な経験だったと、後々も思い出すだろうと思う。
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 最後の公演開始までの間、地上広場の屋台村で夕飯を食べたり、物販ブースで買い物をしたり、ottavaの公開生放送を聴いたり。
 コンサートや会場の様子を撮影した写真を飾るフォトギャラリーに、「音楽祭川柳」というのが掲載されていました。ラ・フォル・ジュルネの会場やコンサートの様子を綴った川柳を応募したもの。
 見覚えのある川柳が。

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「会場は 人でいっぱい でも楽し」

 こ、これは私の送った川柳じゃないか! オフィシャルカメラマンのスタッフさんのブログの応募に答えてメールを送ったのですが、採用されました。ちなみにこれは、私は人がたくさんいる場所は苦手なのに、「これでもか」というくらい人がたくさんのラ・フォル・ジュルネの会場は不思議に楽しい(たぶんそれは、会場内にいる人が同じ気持ちを共有しているから)、という思いを書いたものです。

 そうこうするうちに、ラストのコンサートに向かう時間が来ました。

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 展示ホールは19:30で終了。いよいよラ・フォル・ジュルネの終わりが近づいてきました。
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●公演番号515 20:00-20:45@ホールA

シューベルト/ウェーベルン:ドイツ舞曲 D820 (管弦楽版)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19

アンコール:シューベルト「交響曲第2番・第2楽章」

ローザンヌ室内管弦楽団
クリスティアン・ツァハリアス(ピアノ&指揮)

シューベルト/ウェーベルン:ドイツ舞曲 D820 (管弦楽版)

 ドイツ舞曲は、予定していたプログラムに一部追加して、シューベルトオリジナルのピアノ版とウェールベン編曲の管弦楽版を交互に演奏する。1〜3楽章、4〜6楽章を、ピアノ版、管弦楽版と順番に演奏。

 曲の雰囲気は、ずいぶんと異なる。正確には、曲から感じる雰囲気は同じなのだが、「同じ印象を受ける別の曲を聴いている感じ」とでも言おうか。舞曲なので、どちらのバージョンもやはり軽やかで心地いい。
 この構成は本日だけということなので、得をした気分。さすがラストコンサートという感じ。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19

 これは、聴き馴染みのあるメロディーもあるし、分かりやすい華やかさがあって、私にも親しみやすかった。クリスティアン・ツァハリアス氏の、ピアノの独奏をしつつ、オーケストラを指揮しつつ、ところによってピアノとオーケストラであわせて演奏しつつと、変幻自在の演奏ぶりがかっこいい。

アンコール:シューベルト 交響曲第2番・第2楽章

 ラストは、「シューベルトがテーマの今年のラ・フォル・ジュルネは、やはりシューベルトの曲で終わりたい」とのツァハリアス氏のあいさつの後、交響曲第2番・第2楽章。
 これもまた明るく、美しく、華やかにラストを飾る、という感じの曲だった。
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 ということで、これで今年の東京でのラ・フォル・ジュルネは終了。ホールを出る鴇の、スタッフの人たちの「また来年もお待ちしています」という挨拶に、「ああ、今年は終わりなんだなあ」と改めて思う。
 ラ・フォル・ジュルネって、スタッフの人たちのホスピタリティ(もてなしの気持ち)の強さも、魅力のひとつだと思う。だから、お客さんのマナーも比較的いいんじゃないか。

 コンサートの後、ottavaの公開生放送のラストへ駆けつける。放送後の会場へのあいさつを聴いて、帰ってきました。

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 非常に楽しかったので、終わるのは寂しいですが、昨年ほどの喪失感はないかな、という気もする。

 なぜなら、まず今年は昨年の終わりくらいからずっと楽しみにしていて、自分なりに色々な準備もして、その上で楽しんだから。去年は、直前に興味を持って、プレ・ナイトを見て本格的に好きになって、会期中に空席のある公演からとにかくチケットを買って、という感じだったから(でも、それもすごく楽しかったんだよ! 去年の私的レポートはこちら)。今年は、心残りはたくさんあるけれど(買えなかった公演チケットもたくさんあった)、ひとまず堪能したという充実感に浸っています。
 それから、昨年の経験から、次の年のラ・フォル・ジュルネが、意外と早くやってくることも感じている。また、来年までの間、クラシックのCDを聴いたり、ottavaのようなクラシックのラジオを聴いたり、コンサートに行ったり、クラシック音楽を楽しむ気持ちがあれば、いくらでも楽しめることも、去年のラ・フォル・ジュルネで分かったから。

 例えるなら、ロックが好きな人が、普段CDやライブを聴くのとは別に、年に1回(か数回か)はロック・フェスに行くのと同じことなのだと思う。私はロック・フェスに行ったことはないけれど、ラ・フォル・ジュルネ楽しさの方向性はそれらに近いのだと思う。

 ということで、来年を楽しみにしつつ、今年も音楽を楽しんで行きたいと思います。

 来年のテーマは、「バッハとヨーロッパ」、ですよ。

来年のテーマは「バッハとヨーロッパ」! - ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」公式

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 「ラ・フォル・ジュルネ2008」の公式サイトは下記のとおり。

LA FOLLE JOURNEE au JAPON - ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2008

 「ラ・フォル・ジュルネ」の公式レポート、撮影スタッフによるレポート、ottava(オッターヴァ。会場でも公開生放送を行っているクラシック専門のデジタル・ネットラジオ曲)によるレポートは下記のとおり。

最新のエントリー - ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」公式レポート
「熱狂の日」音楽祭 裏話
OTTAVA LA FOLLE JOURNEE Tips!




木の葉燃朗のがらくた書斎 >>レポート >>「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LA FOLLE JOURNEE au JAPON) 熱狂の日音楽祭 2008」極私的レポート

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