ミニレポート「チャールズ&レイ・イームズ〜創造の遺産〜」展
2005年12月6日(火) 目黒区美術館にて (2006.1.24掲載)
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2005年12月6日(火)、開催中の「チャールズ&レイ・イームズ〜創造の遺産〜」展に行ってきました。
目黒駅を出て、権之助坂をぶらぶらと歩いて下り、目黒川沿いを少し歩いた目黒区美術館が会場。
俺はイームズというと椅子などのインテリアデザインくらいしかイメージがなかったのだが、そんな俺が見ても興味深かった。
まず、チャールズとレイのイームズ夫妻が、色々なものを集めて、色々なものをつくっていたことが印象に残った。家具だけではなかったんですね。
例えば、約35万枚を撮影したというフィルムの一部を見ることができるのだが、工業製品や看板から、ショーの様子、自然の風景、食べ物まで、色々なものを撮影している。
そして、収集していた各国の人形やおみやげや、ふたりの使っていた引出しの中身を、見ても、様々な、雑多ともいえるくらいたくさんのものをコレクションしていたことが分かる。引出しの中のメモさえも、なんだかかっこよく感じた。
ちなみに、引出しの中身は、実際に引き出しを出し入れして覗き見る形式になっていました。これも面白かった(引出しはふたりが使っていたものではなかったけれども)。
それから、欧米のアートやデザインだけでなく、インドへの興味を感じさせるコレクションがあったり、日本の赤ベコを持っていたり、チャップリンを招いて行われた日本式の茶会(1951)の写真や丹下健三氏からの年賀状など、色々な地域の文化から影響を受けていたことも伺えた。
他に意外だったのは、映像作品が多く、それがまた面白いこと。
アスファルトに清掃用の洗浄液が流れる映像に、バッハの曲を乗せた「アスファルト」は、はじめは前衛的な感じもしたが、見入ってしまう。
色々なコマが回るのを撮影した「コマ」や、色々なパンを撮影した「パン」(これがまた非常においしそうな映像)なども面白かった。「コマ」の説明文に、この映像を見た子どもが「コマは生まれて、生きて、そして死ぬんだ」という感想を残したとあったが、まさにそんな感じだった。
そして、ある風景を10の24乗メートルのマクロから、10のマイナス16条(10の16条分の1)のミクロまで拡大・縮小して見せる「パワーズ・オブ・テン(POWERS
OF TEN)」にも、想像力とそれを映像にする技術に圧倒された。
これらの映像のほとんどは、イームズのデザインした椅子に座って見ることができました。椅子には、美術館内の他、すぐ隣の区民ギャラリーでも実際に座れました。
区民ギャラリー
座り心地は、よかったですねえ。見るだけだとちょっと質感が硬そうな椅子も、座ってみると非常にしっくりくる。なかなかイームズの椅子に座る機会もないので、貴重な経験だった。
この椅子ができるまでの過程を記録した映像も見ることが出来たのだが、機械での加工と手作業とで非常に手間がかかっていて、これは芸術作品のようでいて、工業製品なのだと感じた。
会場内には、実際に動かせる椅子の耐久性デモ用の機械もあった。密閉された(側面は透明の)輪の中に椅子が入っていて、機械を動かすと輪がぐるぐる回り、椅子がその中をごろごろと動く(リスやハムスターの運動用の輪っかをイメージしてもらえると分かりやすいかもしれない)。そうしてぶつかっても、椅子は壊れませんよという様子が分かる。
そうして使い勝手も考えている一方、デザインとしても優れているんだよなあ。
会場内で紹介されていた、チャールズのこんな言葉が印象的だった。「デザインは、最大多数の人々に、最良のものを最大限に最低の価格でもたらすべきである」。
いい展覧会を見ることができました。
【参考】イームズ関連の本・DVD
・Magazine House MOOK『Eames-The universe
of design』(2003.8,マガジ ンハウス)
「椅子だけじゃありません! 天才デザイナー、イームズのすべて。保存版「イームズ・デザイン展」ガイドブックも掲載。特別付録「プライ ウッド・エレファント」ペーパークラフト付き」(オンライン書店bk1の紹介文)
・イームズ・デミトリオス:著、泉川真紀:日本語版監修、助川晃自:訳『イームズ入門』(2004.10,日本文教出版)
「チャールズ&レイ・イームズは「20世紀の座り方」を変えた。彼らは変化を生み出し、変化を予見し、ひとつの方向を示した…。彼らの人生と仕事、プロジェクト、テーマ、発想、業績についての入門書」(オンライン書店bk1の紹介文)
・DVD『EAMES
FILMS: チャールズ&レイ・イームズの映像世界』
(Amazon.co.jpの紹介ページ)
「パワーズ・オブ・テン」他収録。
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