「アート&テクノロジーの過去と未来」展レポート
(2005.12.2 初台NTTインターコミュニケーション・センターにて)
(2005.12.16掲載)
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 12月2日(金)、初台の東京オペラシティ内にあるインターコミュニケーションセンター(INTERCOMMUNICATION CENTER:ICC)で、開催中の「アート&テクノロジーの過去と未来」展を見てきました。

 「アート&テクノロジーの過去と未来」展では、戦後日本のテクノロジーを用いた様々なアーティストによる作品を展示している。このようなテーマのため、作品は音楽や映像(パフォーマンスを撮影したものなども含む)、インスタレーションなど、立体的で動きのあるものが多く、また自分が体験できる展示もあり、面白かった。
 個人的には、電気的な技術を使った芸術作品って好きなので、楽しかったなあ。ICCの展示でいえば、最近の「明和電機 ナンセンス=マシーンズ」展(2004年)や、「ローリー・アンダーソン『時間の記録』展」(2005年)なども面白かった。

 印象に残った展示をいくつか紹介します。

・佐藤慶次郎「エレクトロニックラーガ」
 台の上に置かれた二つの半球に手を触れると、「ぶーん」という低い電子音が流れる。手の位置や触れ方で、音が変化する。
 音の出方や、操作する感覚がテルミンのような印象を受けた。
 はじめ、骨伝導みたいに、自分にしか音が聞こえないのだろうと思って、調子に乗ってぎゅいんぎゅいんと電子音を出していたら、後で会場内に聞こえてることを知り、ちょっと恥ずかしかった。でも、音を出していると面白くてくせになる。

・中谷芙二子「卵の静力学」
 ビデオ作品。机の上に卵を立てようとする様子を、ずっと映し続ける。
 卵はなかなかうまく立たず、「ごろん」と卵が転がっては、また手に持って立てようとする。ただそれだけといえば、それだけなのだが、その単純な反復に、なぜか見入ってしまう。

・小杉武久「マノ・ダルマ・エレクトロニック」
 部屋の中の前方三方向には、波の映像が映っている。そして、天井からは、周波数の発信器と受信機がいくつもぶら下がっている。この機械から、ノイズのような音が流れる。
 扇風機からの風が発信器・受信機を動かし、音が少しずつ変化する。
 あの音は、耳障りな人には耳障りだと思う。でも俺は、なんだか聴き入ってしまった。

・阿部修也、ナムジュン・パイク「ロボット K-456」
 がらくたを寄せ集めたかのようなロボットが、路上を歩くパフォーマンスのビデオと写真。不気味なユーモアがある。なんだか、人間とはかけ離れたロボットがよろよろと動くのが、逆にやけに人間味がある。

・岩井俊雄「時間層II」

 仕組みはよく分からないのだが、円い台の上にのったたくさんの人形(小さく薄っぺらく、真っ白な人の形。右のイラストのような)が、色々な動きを見せる。単純なリズムと、時々入ってくるパチンコ台のリーチで聴けるような音にあわせた動き。
 面白いのだけれど結構不気味で、複雑な人形の動きを夢中になって見てしまうと、気分が悪くなりそうだった。

絵:木の葉燃朗

・飯村隆彦氏ビデオ作品
 「くず」「視姦について」「AI(Love)」「リリパット王国舞踏会」の四作品。
 中でも「リリパット王国舞踏会」は、ラジオ体操をBGMに色々な動きをしたり、毛布に包まった人間がごろごろ転げ回ったりと、現代美術がどうこうと考えるより前に純粋に笑ってしまう。

・江渡浩一郎「Modulobe」
 部品の組み合わせでつくられたCG(動物に似ている形のものもある)を、トラックボールでぐりぐりと動かせる(公式サイト:http://www.modulobe.com/)。
 CGは単純な点と線の組み合わせなのだが、それがスムーズに動くのが面白い。トラックボールの動きとCGの動きのタイミングがよく、テレビゲームなどでいう「操作性が非常にいい」印象。

・三上晴子+市川創太「gravicells[グラヴィセルズ]─重力と抵抗」
 5m四方くらいの部屋の中で、床のパネルを踏むと、その力の加わりが前に置かれた画面にリアルタイムに表現される。レーダーのようなフレームのCGが、自分の動きにあわせて変化する。更に床も動きにあわせて表示が変わり、パネルの周囲で電球が点灯し、「ジジジ」と電気が流れるような音が鳴る。
 面白くて、パネルの上をうろうろとしてしまった。

・前林明次「ものと音,空間と身体のための4つの作品」
 一人ずつ、ヘッドホンをして、暗闇の中を歩く。全部で四つの小部屋があり、それぞれの場所でヘッドホンから音が聞こえ、更に小部屋の中が照らされて、中の様子が分かったり、部屋に映像が映ったりする。
 暗闇は本当に真っ暗なので、聴覚が敏感になり、ちょっとびびる。でも、貴重な経験だった。  

  12月25日(日)まで開催していますので、興味のある方はどうぞ。また、一度入場した人は、会期中にもう一度だけ半券持参で入場できます(展示の入れ替えがあるためらしい)。

・ICC > 「アート&テクノロジーの過去と未来」展
  http://www.ntticc.or.jp/Schedule/2005/PossibleFutures/index_j.html
・ICCトップページ http://www.ntticc.or.jp/  トップページのフラッシュも楽しいです。


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