ローリー・アンダーソン「時間の記録」展レポート
(2005.09.28 初台NTTインターコミュニケーション・センター)
(2005.10.4掲載)

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 9月28日、初台のNTTインターコミュニケーション・センター(東京オペラシティタワー内)で行われていた「ローリー・アンダーソン『時間の記録』展」を見てきました。
 
 ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson,1947-)のことは、実は知らなかったのですが、いくつかの新聞やwebサイトでこの展覧会の紹介を読み、興味を持った次第。

 展覧会のチラシを元に少し紹介しておきますと、ローリー・アンダーソンは「80年代初頭にニューヨークのアートシーンで独自のエレクトロニック・パフォーマンスによって一躍脚光を浴び、現在まで第一線で世界的に活躍するアーティスト」です。「シンセサイザーやヴィデオ、コンピュータ・グラフィックス、自作のエレクトロニック・ガジェットの数々を使用し、音楽、映像、言語、アクションといったさまざまな要素、および表現領域をテクノロジーによってミックス」したパフォーマンスを行っています。
 「愛・地球博」でも、「日本庭園でのインスタレーションや映像作品やパフォーマンスを発表」したそうで、これは知らなかった。
 

(右の画像はクリックすると拡大します)

 ただ、俺自身は事前にはこうした情報はほとんど知らず、なんとなく面白そうに思って行ってみたのでした。
 感想としては、期待通りの面白さでした。1980年代のニュー・ウェーブの音楽とか、現在の明和電機などに通じる面白さがあって、個人的には非常に楽しかった。  いくつか印象に残った展示を紹介しましょう。
●言葉の滝(2005年)
 縦長の電光掲示板の中に、上から日本語の文章が降りてくる(1)。それが一番下まで落ちると、下のモニターに円形の英文翻訳されてとして広がり、文章が消えていく(2)。俺の分かりにくいイラストで恐縮ですが、実際に眺めていると、意味のある文章が絵や模様のように見えてきて不思議な気分になります。
 
●ドラム・ダンス(1985年)
 映像作品。シンセドラムのインターフェース(音を鳴らすコントローラー)をくっつけたつなぎの服を着てダンスをする。動きにあわせてドラムが鳴る。
 これを見た時に、明和電機との共通点を感じた。

●風の本(1974年)
 上部がガラスになった箱の中に、一冊の本が入っている。箱の左右から風が吹き、ページが自動的にめくれていく。

●トーキング・ピロー(1977年,1985年)
 見た目は普通の枕。耳を近づけると、内蔵されたスピーカーから声が聞こえてくる。不気味といえば不気味だが、ユーモラスといえばユーモラス。

●ハンドフォン・テーブル(1978年)
 テーブルにひじをついて、手のひらで耳を覆うと、自分の手のひらから音が聴こえてくる。おそらく、音の骨伝導を利用しているのだろう。
 また、音を聴こうとすると、イラストのように落ち込んでいるというか考え込んでいるというか、そんな姿勢になってしまうのが面白かった。
 

●カセット・イン・マウス(1978年,2002年)
 口にくわえたコントローラーを動かす(口を動かす)と、そこからつながったバイオリンの音が鳴る、というパフォーマンス。
 この映像がずっと流れていて、真剣に見ている人もいたのだが、俺は笑わずにはいられなかった。口を「いー」とか「あー」とか動かす顔のアップの映像に合わせて、「ぎー」、「ぶー」と音が鳴る。アートとコメディのギリギリを行くような作品だと思った。

●スロー・スキャン(《男 女 家 木》の演奏)(1977年)
 画像のデータをテープに録音し、それをカセットレコーダーで再生する。すると、音が聞こえる。音といっても、ノイズのような音。その音とともに、テープのデータを再生した画像を映す。昔のパソコンは、カセットでデータを保存していたので、この作品の仕組みはなんとなく分かった。
 ぼやけた画像と、ノイズ。人によっては気味が悪いかもしれないが、俺はなんだかはまってしまい、ぼんやりと見続けてしまった。

●制度の中の夢(1972-73年)
●ダーク・ドッグズ/アメリカン・ドリームズ(1980年)

 「制度の中の夢」は、色々な場所(海岸・トイレのそばのベンチ、など)で実際に眠ってみて、眠った場所が夢に影響するかを試し、写真と文章でその様子を記している。
 「ダーク・ドッグズ/アメリカン・ドリームズ」は、10人の人物の写真が展示され、ボタンで一人を選ぶとその人が見た夢を語る、というもの。目標などの夢かと思ったら(アメリカン・ドリームズ)だし、眠っているときの夢だったというのが面白かった。
 どちらも、語られる夢の内容は幻想的。

●ヴィデオ上映:「Language Is a Virus」(1986年),「Sharkey's Day」(1984年),「O Superman」(1981年)
 自分が見たのがどの作品だったのかはっきり分かりませんが、ミニマルミュージックのような音楽と、特殊効果の使われた映像の組み合わせ。
 好きでない人には単調に感じると思う。でも、好きな人にはあの電子音と映像はたまらないですな。

 感想を書いていると、どの展示についても紹介したくなってしまうので、このあたりで終了。とにかく、非常に有意義な時間を過ごせました。
 図録も販売されていたのですが、ややいいお値段だったので躊躇してしまいました。でも、展示会を思い出すと欲しくなってくる。買おうかなあ。

・『ローリー・アンダーソン時間の記録』(2005.7,NTT出版)

オンライン書店ビーケーワン:ローリー・アンダーソン時間の記録

リヨン現代美術館によって企画された「ローリー・アンダーソン時間の記録」展の日本での開催に際し出版されたもの。パフォーマンス・アートのスーパースターであるローリー・アンダーソンの全貌がわかる!」 (オンライン書店bk1の紹介文)



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