「エノケンと浅草の笑い」展レポート
2004.12.25 下町風俗資料館にて(2004.12.28掲載)

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 12月25日(土)、下町風俗資料館(台東区上野公園2−1)で行われている「エノケンと浅草の
笑い」展を見てきました。



 エノケンについては、説明は不要かと思いますが、念のため簡単に紹介を。なお、引用は断
りがない場合、すべて展示会パンフレットからのものです。

 榎本健一(一九〇四〜一九七〇)は、「浅草の舞台で、大衆の絶大な人気を得て丸の内界
隈の劇場に移り、映画でも大活躍して『喜劇王』と呼ばれ」た。
 昭和四年、二十五歳で「浅草公園の水族館二階で劇団カジノ・フォーリーを旗揚げ」、「以後
約一〇年間、新カジノ・フォーリー、プペ・ダンサント、ピエル・ブリヤント(のちのエノケン一座)
を率いて、玉木座、オペラ館、松竹座などの舞台を踏み、浅草を活動拠点にして」活躍。
 戦後は、脱疽により義足となるなどの経験をしながらも、映画・舞台で活躍を続けた。

 そんなエノケンと、彼を中心とした浅草の喜劇を紹介したのが今回の展示会。早速、会場へ
向かう。下町風俗資料館は、JR線・京成線の上野駅から歩いて五分くらい、不忍池のそばに
あります。前から、一度行ってみたいと気になっていた場所だったのだが、今回の展示をきっ
かけにようやく来ることができた。

 入口で入場料三〇〇円(一般・学生は一〇〇円)を払って中へ。一階の常設展は後で見ると
して、早速二階へ。会場は、思ったよりもこじんまりとしている。小学校の教室を、縦に二つつ
なげたくらいではなかろうか。
 だがその中に、当時の写真、ポスター、新聞・雑誌、パンフレットなどが、無駄なく展示されて
いる。
 展示の内容は、大きく分けて次の部分に分かれている。

・昭和モダン−新時代の幕開け
・エノケン登場−浅草時代の榎本健一
・エノケンの舞台
・エノケンの映画
・エノケンの歌
・素顔の喜劇王
・浅草喜劇

 まず、数々のエノケンの写真に目がいく。大きな目、豊かな表情、動きを感じさせる躍動感が
印象に残る。エノケン一人の写真だけではなく、スナップ写真には多くの喜劇人たちと一緒に
写ったものも多い。特に、エノケン、柳家金語楼、古川緑波(ロッパ)の三人が一緒に写った写
真を見ていたら、訳もなくなく感動して、ちょっと泣きそうになった。

 そして、俺は恥ずかしながらエノケンの舞台・映画の映像をちゃんと見た記憶がなかったの
だが、会場内で「最後の伝令」の舞台の映像が上映されていて、見ることができた。
 これがまあ、今見ても面白い。役者全員のテンポが良くて、音楽もうまく使われていて、すご
いなあと思いながら笑っていた。

 しかし、必ずしも楽しいことばかりの人生ではなかったことも事実だと思う。戦時中は劇場の
閉鎖もあったし、喜劇への圧力もあっただろう。また戦後は、脱疽で右足を切断し、義足で舞
台に立つべく訓練をしたり、息子さんを二六歳の若さで亡くしたりという経験もしている。
 その中でも、見る人には笑いを提供し続けたというのは、月並みな表現だけれど、やはりす
ごいと思う。後世まで名が残るのは、こういう人なんだろうなと思った。
 デスマスクも展示されているが、非常に穏やかな表情という印象を受けた。

 その他印象に残った点をいくつか。

・会場内にBGMとして流れるエノケンの歌が、耳に残る。思わず後でCD屋で見つけたCDを買
ってしまいました。

・入口近くにエノケンが時代劇で使用したのと同じような、車のついた刀が展示されている。こ
れは、実際に手にとってころころ転がすことができる。俺も動かしてみました。その他にも、「昭
和モダン」の展示で、当時のカフェを再現し、当時のゲームなどを遊べるスペースがつくられる
など、実際に経験できる展示もいくつかあった。


 最後に、常設展についても少し紹介を。

 二階では、けん玉、こまなど、昔のおもちゃで実際に遊ぶことができるスペースがある。
 一階は、大正時代の東京の下町の様子が再現されている。商家・駄菓子屋・職人の家・お稲
荷様があり、靴を脱いで中に上がることもできる。押入れやたんすの中にもちゃんと小物が入
っていて、これを見ることもできる。
 この常設点だけでも、好きな人にはたまらないのではないかと思う。

 ということで、下町風俗資料館、おすすめできます。上野動物園や上野公園にある美術館・
博物館も近いし、実は浅草とも地下鉄銀座線から三駅なので、近くに来られる際には立ち寄る
場所に加えてみるのもよろしいのでは。

 なお、「エノケンと浅草の笑い」展は、平成17年1月30日(日)まで。開館時間は9時30分〜16
時30分(入館は16時まで)、休館日は月曜日(祝日と重なる場合は翌日)と12月29日〜1月3日
です。

 ちなみに俺が買ったCDは、・榎本健一『エノケンの大全集』(1991年,TOCT6019-20・
Amazon.co.jpの紹介ページ)です。





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