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マリアの「こんばんは悪夢さん」

ペンネーム「マリア」さんによる、「ちょっと怖い夢の話」を原作に、木の葉燃朗が書いたショートショー
トです。

第二夜 「どうやら、突然心臓麻痺で亡くなったそうです…」(2004.1.15)

第一夜 「そして、もがけばもがくほどつらそうな鳴き声をあげます…」(2003.4.9)


第二夜 「どうやら、突然心臓麻痺で亡くなったそうです…」(2004.1.15)

 これも私が見た夢です。私は、地下鉄の駅に立っています。たぶん会社の近くの駅なんですが、はっきりとはわかりません。でも、隣に会社の上司がいて、なんとなく会社が終わって今から帰るんだな、という雰囲気を感じました。
 そして、本当に突然なんですが、電車を待つ人々でいっぱいのホームに、船が突っ込んでくるんです。別にその駅は海岸沿いにあるわけでもないのに、天井や壁を崩すようにして巨大な船が地下にめり込んで来たのです。なにがなんだかわからないけれど、「逃げなくちゃ!」と思って、とにかく駆け出します。
 さいわい、私はかすり傷ひとつ負わずに助かったのですが、地下鉄の駅は入口で地上と分断されてしまいます。また怪我をしている人や、崩れた壁や天井の下敷きになった人もたくさんいるのでしょう。そう思ってすごく怖くなってきます。
 それで、なぜかさっきまで一緒にいた上司はいなくなってしまい、私は妹と二人で小さくなっています。でも、上司がいなくなってしまったことを疑問にも不安にも思わないんです。忘れてしまっているというか。
 地下はわずかな灯りしかないので、時間がどれくらい過ぎているかもはっきりしません。いつになったら脱出できるのかも。食料の配給をもらっては妹と分けて食べ、どちらかが情報を得るためにあたりを歩きます。そしてまた配給があればもらいに行って食べ、情報を見つけに行く……。そうやって時間を過ごします。そのうち、ある人が無線で地上の情報をることができるようになり、何時間か経つ度に、私たちのどちらかがその人に話を聞きに行きます。
 徐々に色々なことがわかってきます。地下鉄の駅に突っ込んできた船は、日本の四分の一くらいの大きさであること(どう考えてもそんな大きさはありないのですが)。地上でも大パニックになっていて、必死の救出活動が続けられていること。でも、これからのことはまだわかりません。自分たちがどうなるのかを考えて、私たちは二人で寄り添って怯えています。
 そうこうするうち、無線で情報を得ている人から、「もうすぐ助かるかもしれない」という話を聞きます。そして、この大惨事の原因も知ることになります。
「いったい、なにが原因だったんですか?」
 私の問いかけに、その人が答えます。
「船の操縦士が、どうやら、突然心臓麻痺で亡くなったそうです。それで船の動きが制御できず、地下に突っ込んできてしまったようです」

 私は、「船の操縦士が、突然心臓麻痺で亡くなった」という話がとても恐ろしく、全身が震えてしまいました。しかし、「自分たちがもうすぐ助かるんだ」ということを早く伝えたいと思い、妹のところに駆け戻っていきます。
 そこで目が覚めました。今思い出しても不思議な夢ですね。

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第一夜 「そして、もがけばもがくほどつらそうな鳴き声をあげます…」(2003.4.9)

 みなさんは「ハッシュパピー」というメーカーをご存知でしょうか? アメリカでカジュアルシューズをつくっているメーカーです。マスコットキャラクターのバセットハウンドという種類の犬と、ちょっと奇抜な店頭のディスプレイで知られていて、日本にも販売店があります。
 これは私が見た夢なんですが、夢の中で私は銀座のような街の大通りを歩いています。通りにはハッシュパピーの店が見えます。もちろん、実際にある場所・店ではなくて、あくまでイメージです。その店では通りに面して商品が飾られていて、遠くから見るとバセットハウンドの置物があるのもわかります。あたりが夜で暗い中、店だけがディスプレイの光で目立っている、といった感じです。
 興味が出て、よく見ようと思って近づくと、そこでなにかが変なことに気づきました。なにが変なのかはすぐにはわからないのですが、よく見ると、バセットハウンドの置物が変なんですね。
 実はそれは置物ではなくて、本物のバセットハウンドの足を釘で台に打ちつけてあるんです。そして、バセットハウンドは悲しそうな声で鳴きながらもがいているんです。
 「えー! こんなことっていいの」と思って近づくと、私に気付いたバセットハウンドがこちらに向かって来ようとするんです。でも足が釘で打たれているので、動くことはできないし、足は血でにじんでしまっている。それでもバセットハウンドは鳴きながらもがき続けています。そして、もがけばもがくほどつらそうな鳴き声をあげます。
 私は、「私がここにいたらバセットハウンドは向かって来ようとする。そうしたらもっとひどいことになる。私はここにいちゃいけない」と思って、逃げるようにその店から離れました。

 ……でも、少し歩いたところで「はっ」と思うんです。「私、なんで逃げているのよ!」って。あんなひどいことをそのままにしておくなんてどうかしている。店のガラスを叩き壊して、釘なんて引き抜いて、あのバセットハウンドを助けてあげればいいじゃない。それを「私がいなくなれば動かなくてすむから、痛い思いをしない」なんて、私の身勝手な考えだ、って。
 それですぐに引き返すんですが、来た道を戻っているはずなのに、全然店にたどり着きません。そうなるとさっき逃げたことがどんどん悔やまれてきて、最後は涙をぼろぼろこぼしながら走り回るんです。
 大体そのあたりで目が覚めるんですよ。目が覚めると、「私、本当は助けてあげなきゃいけない人を助けていないのかなあ」と、なんとなく不安になることもあるんですよね。

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