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2004.2.20(金) 速報!五反田古本日記(2004.2.26掲載)

■最初はハードボイルド調で
 五反田という町には、あまり馴染みがない。子どもの頃までさかのぼっても、遊び にきた記憶はない。しかし、なぜか名前は覚えている。なんらかの思い出があるよ うなのだが、それがなんなのかは解らない。
 そこで、過去の自分になにがあったかを探るため、俺は五反田に降り立ったの だ。

 ……えー、いんちきくさい文体はこの辺にしておきましょう。五反田という名前を 強烈に覚えているのは事実ですが、おそらく親戚や親の友人の勤め先だったとか なんとか、それくらいの記憶ではなかろうかと思います。
 そもそも今日は、古本を買いに来たのだ。古本の前では、あやふやな過去の自 分の記憶などなにするものぞ。ということで、今日は地下鉄に乗って五反田までや ってきました。JR山手線よりも、こっちの方が早いもんで。階段を駆け上がり、地上 に出る。
 意外とオフィス街みたいだなあというのが、駅のまわりを見た最初の感想。駅前 には駅ビルや飲食店が多いが、駅から少しあるくと、大通り沿いには会社のような ビルが建ち、小さい路地に入ると住宅街といった雰囲気の街である。
 ちなみに、こんかいも地図をつくっています。こちらでどうぞ。

■まずは古書展へ
 今回は、まず南部古書会館で行われている古書展(五反田遊古会)へ。五反田 の古書展は、ほぼ毎週やっている神保町(東京古書会館)とは違い、だいたい月 一回のペースで開催されている。「五反田の古書展はいい本が並ぶ」というのは古 本好きの間では定説のようだ。岡崎武志氏の『古本極楽ガイド』(2003年,ちくま文 庫)にもこう書かれている。

「まず手始めに五反田古書会館へ行くことをオススメする。(中略)特に五反田の 一階会場はバカ安で、一〇〇円、二〇〇円で山のように本が買える。(中略)マニ アや通の人は、一階はそこそこに軽く流しておいて、一階とはレベルが数段上の 良書が並ぶ二階への階段に陣取って、いまや遅しとドアが開くのを待つ」(pp.66- 67)

 この文章を読んだら、古本好きなら期待せずにはおられまい。ということで、駅か ら北へぷらぷらと歩いていく。飲食店が並ぶ通りを抜けて、そろそろ住宅街かな、 と思うあたりに「古書店開催中」ののぼりが見える。ちなみに、向かい側には小さな 新刊書店があった。
 一階は、想像していたよりもこじんまりとしていた。しかし、本棚・本の数は相当多 い。凝縮して詰め込まれているような印象だ。入口周辺にも縁台が置かれて、その 上に本が並ぶ。そのまわりの地べたも、新聞紙を敷いて本が置かれている。
 しかし、平日の午前中(12時近く)というのに、人の多さがすごい。中年の男性が 多いが、中には俺と同世代くらいの男性もいるし、女性もちらほらと見える。いつも いつも思うのだが、この人たちはどういう仕事をしているのだろう。まあ、お互い様 といっちゃあお互い様である。俺だって、まわりからみたら「若いのか年取っている のかよくわからない変なあんちゃん」なんだろう。
 要するに、みんな古本が好きなんだよ。それでいいじゃあないか。
 ひとり勝手に納得して、本を探しに入る。たしかに安い。200円〜1000円くらいの 本が大量に並ぶ。そして、ジャンルも時代もばらばらなので、まさに巨大な均一台 という感じ。ただ、ちょっと状態の悪い本もあるなあ。「欲しいけれどちょっとこの状 態では」とちゅうちょしてしまった本も何冊かあった。結局、一階での購入は一冊。
・岡田重雄『新新幹線車掌日記―時速210キロの人間模様』(1981年,実業 之日本社)
 著者は東海道新幹線の車掌さん。新幹線の中での有名人無名人のエピソードを 集めたもの。すごく欲しかったわけではないが、安かったのと、こういうエピソード集 が好きなので。あとは、「古本めぐりでは最初に1冊買っておくと、その後もいい買 い物ができる」という植草甚一氏の言葉にしたがって。正確な言葉は忘れたが、そ んな言い伝えが古本好きの間にはあるのだ。
 そして、その言葉が間違っていないことが、すぐ後で証明される。
 それからこの本がちょっとおもしろかった点をもう一つ。著者名が、正確には「車 掌長 岡田重雄」になっている。まあ、学術書なんかでは「理学博士 ○○」なんてい う著者名も珍しくないが、こういう読み物では珍しいのではないか。だって、「部長  ○○」みたいなもんでしょう。
 
■五反田古書会館後半
 色々なことを考えつつ、一階での買い物を終えて二階へ。荷物を受付に預けて から中に入る。これは神保町・高円寺の古書会館とも共通している。
 二階は、神保町の古書会館のように、本棚が何本も立ち並び、本が置かれてい る。これは誰かが話したか書いていたのだが、「五反田は一階は高円寺の古書会 館のような雰囲気、二階は神保町の古書会館のような雰囲気」という言葉を思い 出し、「なるほどねえ」と感じた。
 二階にも、入口入ってすぐに均一台があった。まずはここをと思いつつ眺めてい ると、びっくりするような本が見つかった。A5版の薄い冊子だったのだが、背表紙 に書かれた文字に「ぴん」と来た。
・いしいひさいち『Oh!バイトくん2』(1975年,チャンネルゼロ工房)
・いしいひさいち『Oh!バイトくん3』(1977年,チャンネルゼロ工房)
 いや、びっくりしているのは俺だけかもしれないが。これ、ミニコミとして発行され たもの。いしいひさいちの本の中でも、珍しい部類に入るはずだ。俺もいしいひさい ちのマンガは少しずつ集めているが、これは今まで見たことなかったし、購入も最 初からあきらめていた(見つけてもプレミアがついていると思ったので)。しかし、全 三冊中の二冊がバラとはいえものすごく安い。迷わず購入。おお、これだけで今日 五反田に来た甲斐あった。

 これで勢いがついたのか、その後もなかなかいい本が買えた。下記五冊を購 入。
・横田順彌『謎の宇宙人UFO』(1978年,早川書房)
 SFやミステリーの単行本が比較的安く並んでいた棚から見つける。横田氏のユ ーモアSF(ハチャハチャSFと呼ばれていた)は、少しずつだけれど、ずっと継続して 読んでいる。
・黒部進『ハヤタとして、父として』(1998年,扶桑社)
 「ウルトラマン」のハヤタ隊員を演じた著者による半生記。「ウルトラマン」出演時 の話が多いが、俳優としての思い出話などもある。娘さんで女優の吉本多香美さ んとの対談も収録されている。
・紀田順一郎『現代人の読書』(1972年,毎日新聞社)
 タイトル通り、読書法についての本。やっぱり、こういう本は好きだなあ。どうして も手が伸びる。ちょっと時代は古いけれどね。
・歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(2003年,文藝春秋)
 実は、去年の日本の推理小説界ですごく話題になった本。ただ、トリックが関係し ているのだと思うが、「すごいおもしろい。でも内容は言えない」という紹介が非常 に多かった。
 俺、歌野氏はデビュー作からほとんど読んでいるのだが、この本はまだ買ってい ませんでした。いかんなあ。ということで、この機会に購入。
・徳川夢声『いろは交遊録』(2003年,ネット武蔵野)
 1953年鱒書房版の復刊。実は、徳川夢声の本も、徳川夢声についての本も、こ れまで読んだことがない。いかんなあ。この本は、タイトルどおり氏が交友のあった 人についていろはの順にひとりずつ紹介していく。「い」が「岩田豊雄(獅子文 六)」、「ろ」が「ロッパ(古川ロッパ)」といった具合。俺が知っている人だけでも吉川 英治・武者小路実篤・内田百けん(「けん」は門の中に月)・山田耕作・榎本健一な どが登場する。おもしろそうだ。

 いやあ、初めての五反田古書会館は、なかなかの収穫でございました。「五反田 はいい」とみんなが言う理由がわかった気がする。機会を見つけて、また来よう。

■駅南側〜新刊書店とブックオフと〜
 古書会館を出て、まずは少し遅い昼食にする。色々と食べるところはあるのだ が、非常に無難なところで吉野家にしてしまう。豚キムチ丼。

 それから、駅の南側へ。ここにブックオフがあるので、見に行く。まあ、ブックオフ でした。それ以上でもそれ以下でもなかった。
 しかし、ブックオフは全部機械化すればいいのにと思う。会計も商品の検索も全 部客が機械を操作して行う。その分浮いたコストは、商品の値段を下げることで還 元する。特にあの「いらっしゃいませこんにちはー」という機械的なあいさつを聞くと そう思う。あれなら入口にセンサーを付けておいて、人が通ったら声が出るようにし ておけばいいのに、と思う。それだけでも実施してくれないかな。
 本は100円コーナーだけ見るが、収穫はなし。最近はブックオフでは、ほとんど 100円コーナーだけ見ている。それ以外は、見て回る気力がない。あとはCDコーナ ーを見て、七枚購入。いずれも1000円以下です。

・相川七瀬「FOXTROT」(2000年,motorod・CTCR-18015)
・相川七瀬「paraDOX」(1997年,motorod・CTCR-18002)
 最近、なんだか相川七瀬がいい。我ながら不思議だ。昔はそうでもなかったの に。
・イ・パクサ「李博士(イ・パクサ)のポンチャック大百科」(1996年,キューンソ ニー・KSC3-905)
 打ち込みにあわせていろんな歌をメドレーで歌う「ポンチャック」のCD。いい意味 で安っぽくて、俺は好き。
・EveryLittleThing「EveryBestSingle+3」(1999年,avex trax・AVCD- 11714)
 初期のベスト盤。以外に思われるかもしれないが、俺は結構EveryLittleThing好 きです。なんだかんだいって、「打ち込みに女性ボーカル」というのは、好きなジャ ンルのひとつなんだと思う。
・クライズラー&カンパニー「ナチュラル」(1991年,エピックソニー・ESCB- 1234)
 クラシックをアレンジしていたグループ、クライズラー&カンパニーのCD。ジャズ・ テクノなどのアレンジもあって、昔から好きだった。ちなみに、葉加瀬太郎も在籍し ていました。
・スキャットマン・ジョン「スキャット天国(パラダイス)」(1995年,BMGビクター BVCP-8818)
・SCATMAN JOHN「Everybody Jam!」(1996年,BMG・74321-34495-2)* 輸入盤
 スキャットマン・ジョン再評価を提唱する俺としては、とにかく持っていないCDは買 っておこうと思っています。しかし、いくらなんでも安すぎるぜ。ちょっと悲しい。

 ブックオフを出て、駅に戻る途中、新刊書店を二軒見つけて立ち寄ってみる。
 一軒目はあゆみBooks。チェーン系の大型書店のような雰囲気。ワンフロアで、 結構な大きさがある。後で調べたら、コーヒーチェーンを経営しているシャノアール の関連会社なのね、ここ。
 ここでは一冊購入。
・雑誌『ぼくドラえもん 創刊号』(2004年,小学館)
 各週刊で全25冊発行されるドラえもんの百科事典のような雑誌。創刊号の特集 は「奇跡の名作『のび太の恐竜』誕生秘話!」と「レギュラー声優5人組懐かし座談 会!」。付録にはパイロットフィルムと映画予告編が収録されたDVDなどもついて いる。

 もう一軒は明屋書店(はるやしょてん)。ここはどちらかというと、町の本屋のよう な雰囲気。でも、ここも結構広い。調べたら、ここもチェーン店のようだ。中野ブロ ードウェイにも店舗があるそうな。
 こちらでは購入はなし。

■まとめ
 以上で終了。帰りも地下鉄に乗ってくる。しかし、久々に古書展に行ったので、結 構疲れた。熱気のすごさを感じました。買った本の数はそれほど多くはなかった が、なかなか充実した一日であった。
 しかし、五反田はなかなかよかった。自分にとっては、寄り道したりついでに来た りする街ではないが、古書展があるときなんかは時間を見つけてまた来ようと思 う。
 ということで、今回の古本日記は以上で終了です。



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