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2003.7.12(土)・8.10(日) 新宿古本めぐり 〜本とCD探すため、都心の喧 騒駆け抜ける(2003.9.15掲載)

 さて、前回の渋谷に続いて、今回は新宿です。サブタイトルが前回の予告と違う のは、ご勘弁を。どちらにしろ意味不明です。しかし、新宿もめったに行かないな あ。どうも得体の知れない街というイメージが付きまとう。しかし、自分の興味を元 に行動範囲を決めると、それなりに面白い時間が過ごせます。俺の場合は、「本と CDを探す」というテーマで新宿を歩くことが多いですね。ということで、夏の間に新 宿を歩いた記録をご紹介。
 例によって、地図もつくっています。

■7月12日(土)
 この日はそもそも、国立競技場にサッカーを見に行っている。その模様はこちら に書きました。その後JRの代々木駅まで歩いて、そこから電車で新宿に到着。着 いた時点で午後5時を過ぎている。時間的・体力的な制約があるので、今日は見に 行く店をしぼることにする。

 東口から出て、甲州街道を東に進む。新宿御苑に沿って歩くと、ミニコミを中心に 扱う新刊書店、模索舎が見えてくる。ここ、ミニコミに関する本で触れられているこ とが多く、一度行ってみたいと思っていたのである。
 しかし、自分が想像していたのとは店の雰囲気が違いましたね。ミニコミって、も ともと1960年代〜70年代の安保闘争、それから色々な市民運動のパンフレットや ビラが始まりらしい。その後、個人の趣味の雑誌や情報誌もミニコミという言葉で 表現されるようになる。俺が興味を持っているのは趣味・情報などの、どちらかとい うとサブカル系のミニコミなのだが、模索舎に並んでいるのは政治的な思想につい てのミニコミが多い。それも、どっちかというと左寄り。
 俺はそういう思想を(右寄りでも左寄りでもでも)否定も肯定もしないけれど、店の 中に漂うただならぬ雰囲気に腰が引けて、あまり長居はせずに出てきてしまった。 購入もなし。なんというか、思想が押し付けられるような怖さがあって、どうにも苦 手だ。まあ、これはあくまでも個人的な意見なので、人によっては「こういう店を探し ていた」ということもあると思う。
 駅の方に向かって戻るように歩く。途中、世界堂という文房具屋を見つけ、入って みる。フロア数も多く、扱い商材も画材や額縁などもあり、中を歩くだけでも楽し い。東急ハンズもそうだけれど、こういう店は面白いなあ。なんというか、ものをつく る情熱が湧いてくる。

 世界堂をでて、再び駅の方に歩く。途中、小さい路地に入って畸人堂新宿店へ。 ちょっと説明しにくい場所にあるのだが、駅からは近い。住所は「東京都新宿区新 宿4-2-7」なので、詳しく知りたい人は地図で調べてみてください。
 ここは、置いてある本はそれほど特別ではない。文庫と小説の単行本が中心。マ ンガもあるし、アダルト雑誌もある。パソコン関係の本も店内入ってすぐに並んでい る。よくある街の古本屋なのだが、いわゆる「つまらない本」が少ない。まあ、アダ ルト雑誌やマンガは見ないから、その辺の品揃えはわからないけれど。文庫本な どは、絶版文庫も一部別の棚に揃っていて、なかなか面白い。そんなに店の面積 は広くないのだが、見ごたえがある店だ。今日は一冊購入。
・世阿弥(野上豊一郎・西尾実 校訂)『風姿花伝』(1958年,岩波文庫 青1- 1)
 世阿弥は、室町時代の能作者・能役者。日本史の授業で一回くらいは名前を聞 いた人もいるのではないだろうか。この本は、世阿弥の父観阿弥の口述を中心に まとめた、能楽論・芸術論である。『花伝書』とも呼ばれている。
 なぜ俺がいきなりこの本を買ったのかといえば、前に読んだ春風亭柳昇『寄席は 毎日休みなし』(1999年,うなぎ書房)で取り上げられていて、興味を持ったから。 新刊で買い求めてもよかったのだが、おそらく古本でも置いてあるだろうと思い、 探していたのである。ということで購入。

 畸人堂を出てすぐそばにあるタカシマヤ・タイムズ・スクエアに行き、中にある東 急ハンズとHMVを見て歩く。HMVで、クラフトワークのCD「TOUR DE FRANCE 2003」の輸入盤を見つけて購入。シングルの方ですね。俺は外国のミュージシャン のCDは、ほとんどライナーノーツを読まないので、輸入盤と日本語盤があれはだ いたい輸入盤を買う。発売も早いし、値段も少し安いからね。
 以上で買い物終了。帰りに歌舞伎町にちょっと入ったところにあるラーメン屋、 下一品でラーメン食べて帰る。この日は、JR代々木駅前の木久蔵ラーメンを食べ ようと思ったのだが、営業時間外で食べられなかったのだ。その悔しさを晴らす、と いうことでもないが、夕飯はここでこってりラーメンを食べようと思っていた。ちなみ に、夜の歌舞伎町は、入口付近でも独特の雰囲気を持っていました。
 どうでもよいのですが、この日は本一冊しか買っていないことにこの日記を書い ていて気がついた。

■8/10(日) この日は本も買ってます!
 今日の目的は、まず伊勢丹で行われている大古本市。暑い中新宿まで行ってま いりました。8月7日(木)から12日(火)まで開催していたのて、日程的にはちょうど半 分くらいの時期ですね。
 JR新宿駅に降り立ったのは、昼過ぎ。まずは腹ごしらえで、ラーメン屋天下一品 へ。「新宿で他にメシ食うところ知らんのか」と言われそうですが、我ながらそう思い ます。
 その後伊勢丹へ。人出は多く、会場は7〜8割の入りといった感じ。夏休み中の 日曜日ということもあって、子ども連れと女性が多かった。デパート古本市のひとつ の特徴に、女性のお客さんの多さがあげられましょう。まあ、古書会館で行われる 古書展に来る女性が少なすぎるんだろうけれどね。古本屋だって、女性のお客さ んは頻繁に見かけるわけだし。
 それから、古本市では変わったおやじも必ずと言っていいほど出没するのだが、 今日もちらほらと見かけた。カンカン帽にアロハシャツというおそろいの格好で 色々なことをしゃべりながら本を眺める三人組おやじ。「俺、親戚に伊勢丹の人間 がいるんだけど、カタログただでもらえるかなあ」と古本屋の人をつかまえて言って いる意味不明おやじ、などなど。
 そんなおやじの間をかいくぐりながら購入したのは、次の四冊。
・串間努『ザ・おかし』(1999年,扶桑社文庫)
 扶桑社からは、この手の駄菓子関係の本が結構出版されている。こういう、身近 にあるだけに忘れられてしまうものを調べる本というのは貴重だと思う。
・矢野徹 編『矢野徹の狂乱酒場1988』(1990年,角川文庫)
 SF作家矢野徹氏が、かつてパソコン通信で解説していた掲示板の記録。今の webサイトに載っている掲示板の書き込みを集めたものを想像してもらえればいい と思う。当時パソコン通信をしていた人は、ごく限られた人だと思うのだが、掲示板 の雰囲気は今と変わらず、色々な話が登場している。
・別冊宝島293『このアニメがすごい!』(1997年,宝島社)
 1980年代の作品を中心とした、アニメーションの紹介と評論を集めたもの。ロボ ットアニメが中心だが、幅広く取り上げられている。
・別冊宝島176『わかりたいあなたのための 社会学・入門』(1993年,宝島 社)
 なんとなく興味があったので購入。これでも、学生時代には社会学をかじったこと もあるのです。本当にかじった程度なので、詳しいことを聞かれても答えに窮する のだが。

 ということで、以上で伊勢丹を出る。その後、久々にまんだらけ新宿店に行って みようと歩いていくが、閉店していた。そうだったのか、しらなんだ。
 そこから紀伊国屋書店へ。ここに来るのも久々だなあ。まずは最上階の児童書 のコーナーへ。ここで一冊購入。
・雑誌『おおきなポケット2003年9月号』(福音館書店)
 これは小学校低学年用の学習絵本の雑誌。この号ではたご舎店主でイラストレ ーターのたごもりのりこさんが絵本「もののけ工作絵巻」を描いているのです。 とい うことで購入。いやあ、こういう子ども向けの本なんて、もう何年も買っていないな あ。大学生の頃は教職課程を専攻していたのだが、こういう本には縁がなかった。 なにしろ全然専攻と関係ない科目ばかり勉強していたから(社会学をかじったり ね)。
 まあ、そんな話はいいか。
 その後2階の雑誌・文庫・新書のコーナーへ。新刊を中心に見て、一冊購入。
・都筑道夫『都筑道夫コレクション《SF編》翔び去りしものの伝説』(2003年, 光文社文庫)
 最近毎月のように刊行されている光文社文庫の都筑道夫コレクション。収録され ている小説の中には、既に読んだものもあるのだが、単行本未収録の小説やエッ セイも掲載されているし、都筑氏の小説は改めて再読したいと思っているので、出 るたびに購入している。

 それから、畸人堂にも行くが、今日は購入はなし。その後、久々に西口へ行く。 小滝橋通りを北へ、新大久保駅に向かうように歩き出す。このあたりに、小さなCD ショップが点在しているという情報を仕入れて、ちょっと見てみようと思ったのだ。途 中で買ったお茶を飲みながら、通りをぶらぶら歩いていく。
 しかし、通りに面してわかり易く店を設けているところはなかった。雑居ビルの3階 だとか、マンションの一室だとかに、CDを売っている店がひょこっとある。売ってい るのは、洋楽の中古盤や日本のインディーズの聞いたこともないようなCDが多い。 中には100円玉数枚で買えるような、CD-Rに自作の音楽をコピーしたものも売って いる。何枚かちょこちょこ購入する。
 しかし、マンションなどは本当に普通のマンションで、他の部屋に怪しいビデオ屋 や企業や個人の事務所もあった。住人らしき人には出会わなかったけれど、中に は住んでいる人もいるのかなあ。ちょっと怖かったけれど、こういう所を歩くのもた まには面白い。

 駅へと戻る道すがら、JR線の西口を出てすぐのあたりに、天下堂書店という古本 屋を見つける。文庫と漫画と雑誌がほとんどの、とても小さい古本屋。あまり珍しい 本もないし、きれいな本ばかりでもないが、値段は安い。ただし、今日は購入はな し。
 最後は、南口の改札を出てすぐそばのルミネの中にあるタワーレコードへ。ここ クラフトワークのCD「TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS」を購入。7月に買った ものと名前が似ていますが、こっちはアルバム盤。日本語盤よりも輸入盤が早く店 頭に並んだので、迷わず購入。
 ということで、この日は古本とCDの購入を中心に新宿をめぐりました。しかし、我 ながら偏った新宿案内だなあ。

■まとめ
 まあ、俺のように新宿が似合わない人間にも、それなりの新宿の楽しみ方がある ことが伝わればいいなと思います。
 さあ、次回はもっと似合わない街に行くよ。それは六本木だ! 乞うご期待!



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