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2003.6.1(日) 初夏の西荻・吉祥寺、情熱の古本屋めぐり の巻(2003.6.24 掲載)

 えー、ここのところちょっと中央線沿線の古本屋めぐりが続いておりますが、ご了 承ください。今回は、西荻窪で開かれる北尾堂ブックカフェを目当てに、4月に引き 続いての吉祥寺・西荻窪古本屋めぐりとなりました。
 ところで、古本屋めぐりといえばこれまでリュックサックを背負っての道中だった のだが、今回は小さめのショルダーバッグとトートバッグという組み合わせを試して みることにした。これが古本屋めぐりに楽だという意見を聞いたもので。果たして効 果はいかに。

■吉祥寺編 前編
 まずは駅南口の古本センターで2冊購入。
ポッププロジェクト編『広告キャラクター大博物館』(1994年,日本文芸社)
 グリコの「ランニングマーク」、不二家の「ペコちゃん」に始まり、企業の広告に登 場するキャラクターを紹介した本。写真や絵も多く、見ているだけでも面白そう。こ ういう本、最近面白いと思うようになった。前に読んだ綱島理友『マスコット物語@ A』(1996年・1997年,スターツ出版)なんかも、面白かったなあ。
加藤尚武『ジョーク哲学史』(1988年,河出文庫)
 古今東西の哲学者を紹介し、その人物や思想にまつわる小噺が掲載されている 本。著者は哲学・倫理学の専門家として知られる(現在鳥取環境大学学長)。大学 生の頃、俺は氏の『応用倫理学のすすめ』(1994年,丸善ライブラリー)を読んだ り、NHK教育テレビで放送された『NHK人間講座 21世紀の倫理を求めて』(2000年 7月〜9月)を見たりして、色々と影響を受けた。俺のいた大学で特別講義を行った ときも聴講したことも思い出した。
 まあ、本の内容も講義の内容も、あんまり覚えていないんだけれどね。

 その後、本日は初めての店を目指して歩く。中道通りを5分くらい西に行ったとこ ろにあるトリック&トラップという店。ミステリーの専門店で、探偵事務所のような雰 囲気らしい。ということでやってきたのだが、開いていないので残念ながら中には 入れなかった。開店時間が遅いのか、それともたまたま休みだったのか。しかし、 完全にマンションの1室のようだ。郵便局から小さな路地を隔てて向かいにあるマ ンションです。1階は半地下になっていて、カフェがありました。ちなみに、郵便局の 隣には中古レコード屋もある。このレコード屋も覗いてみたが、購入はなし。

 そこから少し北に歩いて、ヴィレッジヴァンガード吉祥寺店へ。店内を一周して、 プラスチックス『ウェルカム・プラスチックス』(VICL2013,1990年ビクター音楽産業) というCDを買う。あと、ダイエットジンジャーエールも買う。輸入物の飲み物です ね。先日ダイエットドクターペッパーを見つけたときも(これもヴィレッジヴァンガード で見つけた)驚いたが、今回も結構驚きだった。ちなみに、味はちょっと酸味が強 いので、個人的には普通のジンジャーエールの方がいいかな。ちなみにダイエット ドクターペッパーは個人的にはおいしいと思った。
 …ああ、音楽やジュースの話ばかりしている場合ではありませんでしたね。

 ヴィレッジヴァンガードを出て東へ向かう。東急の横を通り、吉祥寺通りを横断し てサンロードというアーケード街に入る。吉祥寺駅から北に伸びる商店街です。こ こにある外口書店さかえ書房という二軒の古本屋へ入る。外口は比較的新しい 文庫や小説が多く、さかえは昔ながらの古本屋といった雰囲気。この二店がほぼ 軒を連ね、更にさかえの隣には新刊書店(ブックス ルーエ)もあるんだから、すご いよなあ。
 ちなみに、外口・さかえのどちらも久々にじっくり見るが、残念ながら購入はなし。
 サンロードを北に抜けて、五日市街道沿いの藤井書店へ。ここで別冊宝島339 『1970年大百科』(1997年,宝島社)を均一棚から見つけ、購入。この店の均一 棚は、店頭の他に一階から二階への階段にもある。ここでは意外な本が安く手に 入ることがある。あと、店頭で荻窪・西荻窪・吉祥寺の古本屋地図&案内「おに吉」 を入手。古本屋めぐりに便利だし、岡崎武志・坪内祐三他の諸氏による古本にま つわる文章も載っている。これが無料で手に入るのはお得だ。荻窪・西荻窪・吉祥 寺の古本屋の多くで配布されているようですので、気になる方はそれぞれの町に 行ってみましょう。

■吉祥寺編 後編
 藤井書店を出て、五日市街道を東に進む。5分くらいで古本すうさい堂へ到着。こ こで2冊購入。
唐沢俊一『カラサワ堂怪書目録』(1999年,学陽書房)
 唐沢俊一氏の見つけた変わった本が紹介されている。登場する本も面白そうだ が、その本に対する唐沢氏のつっこみもまた面白そうだ。
雑誌『マルコポーロ 1993年12月号 特集:読書狂い、本と遊べ』(文藝春秋)
 『マルコポーロ』は、実は初めて買う。『マルコポーロ』で連載していたコラムやエッ セイが単行本になったものは読んだことがあるし、1995年2月号に「ナチ『ガス室』 はなかった」という記事を掲載したことが問題になり、廃刊となったエピソードがや はり印象に残っている。しかし、実際にどんな雑誌なのか知らなかったので、この 機会にと思い購入。

 購入後しばらくお店にお邪魔し、その後ご主人と色々と話し込む。すうさい堂はご 主人の趣味や個性が店に表れていて、面白いなあ。

 すうさい堂を出て南へ向かいし、JRの高架下にあるりぶる・りべろへ到着。店頭 で以下の四冊を見つける。
鏡明・関三喜夫・南伸坊『シンボーズ・オフィスへようこそ! Part1・Part2』 (1985年/1986年,角川文庫)
 色々な人を招いての対談集。「色々な人」というのは、呉智英・糸井重里・藤原和 博・村松友規・井崎脩五郎・内藤陳・久住昌之、などなど。この顔ぶれと南伸坊氏 たちとの話というだけで面白そうだ。
外山滋比古『メモと日記の方法』(1984年,潮文庫)
 氏のエッセイ集が最近面白い。「知的な生活へのヒント」とでも言うのでしょうか。 他の人が書いたら読む気もしないテーマでも、不思議と面白く読めてしまう。という ことで購入。
雑誌『散歩の達人 2000年6月号 特集:柴又・堀切・水元公園』(弘済出版 社)
 『散歩の達人』は、出版社の名前が現在の「交通新聞社」になる前のですね。特 集が自分の住んでいる葛飾区のものだったので、購入。

 りぶる・りべろの店内も久々に覗いてみる。中は文庫や新書の棚を中心に見る が、こちらでは購入はなし。

 昼食はりぶる・りべろの隣の武蔵家でラーメンを食べる。好き嫌いはあるだろう が、俺はこのこってりした感じが好き。しかし、調子に乗って油多めで頼んだら、ち ょっとこってりしすぎてしまった。おいしいのだけれど、油のとりすぎが心配。
 …まあ、古本屋めぐりでカロリーを消費しよう。

 武蔵家を出て、JRの高架をくぐって更に南下し、よみた屋へ。ここでも、店頭で二 冊を見つけ、購入。
法月綸太郎『法月綸太郎の新冒険』(1999年,講談社ノベルス)
 ミステリーの短編集。この人の小説は前から結構好きなので、購入。
ウィルソン・ブライアン・キイ『メディア・セックス』(1989年,リブロポート)
 これはサブリミナル効果についての本ですね。この理論自体は間違っていること が後に判明したのだが、話として面白そうなので購入。この本、これまで色々な古 本屋で見たが、今回の店頭均一で見たのが一番安い値段だった。買い逃した経 験もあるだけに、ここぞとばかり購入。そんなに意気込むほど高い値段じゃないん だけれどね。

 本日は、よみた屋の先にあるブックスターション和は泣く泣くパスして、駅に戻る ように歩く。時間が足りなくなりそうだったので。そのわりには、駅前にできたブック オフに入ってみる。前回来たときは、立ち読みをする人の多さと、店内のうるささ (店内放送、店員の機械的なあいさつ、買取り待ちの客を呼ぶ大音量の放送)に 耐えかねてすぐ出てしまったのだが、今日は100円均一だけ覗く。それでも三冊購 入。
綱島理友『全日本なんでか大疑問調査団』(1997年,講談社文庫)
 綱島氏お得意の雑学本ですね。「ラムネ瓶のビー玉はどうやって入れるか」と か、「東京タワーのペンキ塗り替えを見に行く」とか、ささいだけれど気になる話が 次々登場する。
横田順彌『水晶の涙』(1992年,徳間文庫)
 押川春浪を主役にした小説。氏の小説は、かつてはユーモアSF(「ハチャハチャ SF」と呼ばれていた)が多かった。ハチャハチャも好きだが、近年の明治を舞台に した小説も好きだなあ。
立花晶『まんが生活』(1999年,白泉社)
 女性マンガ家によるマンガにまつわるエッセイマンガ(我ながらわかりにくい説明 だ)。著者がいかにマンガを好きになったかの思い出や、マンガにまつわるイベン ト(コミックマーケットや展覧会。SF大会にも行っている)のレポートなどが掲載され ている。なぜかマンガではなく単行本の棚にあった。

 ここまでて、吉祥寺編はおしまい。すでに、かなり「おなかいっぱい」という感じで すが、これから西荻窪があるのです! ということで、JRで一駅隣の西荻窪へ。

■西荻窪編
 JR中央線で新宿方面へ一駅戻って西荻窪に到着。まずは駅北口の興居島屋 (ごごしまや)へ。ここでは古本ではなく新刊のミニコミ『スムース別冊 まるごと 一冊中公文庫』(2003年)を購入。興居島屋は久々に来たけれど、いい雰囲気 のある店だなあ。店の雰囲気がいい意味での古さを感じさせる。看板の絵も、うま くいえないのだがなんとなく懐かしい感じがする。CDや子供向けの絵本なども置い てありますので、そうした本を探している人にも面白い本が見つかるのではないで しょうか。
 いったん駅前まで戻り、駅の北西へ進みハートランドへ。ここに来たのも実は久 しぶりであった。ここは奥がカフェスペースになっていて、コーヒーなども飲める。表 に均一台がないと、外から見たら古本屋とは思わないかもしれないなあ。それくら いお洒落な雰囲気。最近一部の棚を「古本フリマ」として貸し出ししているようだ。 その古本フリマの棚のうち、古本うさぎ書房の棚から1冊購入。
伊東四朗『この顔で悪いか!』(1997年,集英社)
 氏の若い頃の思い出話や、交友のある人との思い出などを集めたエッセイ集。 やはり喜劇役者や芸人の書いた本は気になってしまう。

 ハートランドを出て、すぐ近くの音羽館へ。家族連れなど、店内には常時が5〜6 人の人がいた。店頭の均一台からJ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴 えたやりかた』(1987年,ハヤカワSF文庫)を見つける。J・ティプトリー・ジュニ アといえば、学生の頃『老いたる霊長類の星への賛歌』(1989年,ハヤカワSF文 庫)を読んで、「よくわからないけれどなんだか面白い」という不思議な感想を持っ た記憶がある。ということで購入。
 それから店内で坂本龍一『週刊本6 本本堂未刊行図書目録』(1984年,朝 日出版社)を見つけ、これも購入。これは前から欲しかった本。架空の本を紹介 する本である。クラフト・エヴィング商會の作品を想像してもらえれば近いかもしれ ない。当時の定価よりも高かったが、なかなか見かけない本なので思い切って買っ てしまいました。

 音羽館を出て、JRの高架をくぐり駅の南へ。ここにあるカフェギャラリーサパナ 北尾堂ブックカフェの会場。ようやく到着しました。店内でカフェオレなど飲みなが ら、店主の北尾トロさんと今日買ってきた本の話など、古本の話を中心に色々話 す。ここはリラックスできる空気が流れていて楽しいなあ。
 もちろん、ブックカフェというからには古本も置いてあるわけで、ここでもじっくりと 棚を眺めて唐沢商会『ガラダマ天国』(1997年、ぴあ)を購入。これは唐沢俊一 氏・なおき氏の兄弟コンビによるエッセイマンガ。原作の俊一氏のウンチクと、作 画のなおき氏の絵が、なんともいい味を出している。
 
 本当はもう少しサパナでのんびりしていたかったのだが、もう少し西荻窪の古本 屋巡りをするためおいとまする。この時点で時刻は午後7:30くらいなのだが、中央 線沿線の古本屋は結構遅くまで営業しているので、まだまだまわることが出来る。
 ということで、まずは新しくできたカノポスへ。明神通りを南東へ向かって、公園の 向かいにあります。表には「古本」と書かれた看板はあるけれど、均一台などの解 りやすい目印はないので見逃さないようご注意を。サパナでおすすめを受けて行っ てみたのだが、ここはなかなかいい。特にミステリー・写真集・日本の懐かしもの (昭和30年代くらい)などの本が目に止まった。現代文学も、各作家ごとにかなり在 庫がある。俺が唯一といっていいくらい読む日本の現代文学作家、高橋源一郎の 著作もかなりそろっていた。
 今回は購入はなかったが、定期的に通ってみたいと思わされる店であった。

 そして最後はスコブル社へ。カノポスから駅の方に戻り、駅南通りを南下する。い つもどおり、本が山のように積まれていた。俺はあの本の中を歩き回るのは楽し い。ただし、残念ながら本日は購入はなし。

■まとめと次回予告
 ということで、今回はかなり盛りだくさんの古本日記であった。しかし、時間の関 係で行けなかった店もあるし、ブックカフェは6月一杯開催なので、今年中にもう一 度行ってみようと思っています。などと書いている6月24日現在、既にブックカフェに もう一度おじゃましました。ということで、次回「古本小僧の明日はどっちだ! 〜荻 窪・西荻窪古本屋巡りの巻(仮)」をお楽しみに!
 そうそう、最後にひとこと。リュックサックの代わりにトートバッグを持って歩いた 今回の古本屋めぐりですが、トートバッグは便利です。想像以上に本が入るし、重 さも想像したほど感じない。それに、店の中で人が後ろを通るのを気にしなくてい いのが楽だ。リュックは迷惑かもしれないと思ってリュックを背負ったり下ろしたりし て、それだけでも結構疲れるのです。
 ということで、「古本屋めぐりにトートバッグ」という意見には、俺も賛成です。




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