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総集編〜2003年下半期、神保町めぐり(2004.2.20掲載)

 今回は少し趣向を変えまして、2003年夏以降に神保町へ行った際の記録を、時 間順に紹介していきます。掲示板や日記に書いていたものを、せっかくなのでまと めておこうと思ったのです。同じ場所に継続的に通った記録をまとめて読んでいた だくと、いつもとちょっと違った面白さがあるのではないかという考えもあります。
 というわけで、早速行ってみましょう。ちなみに、神保町の地図はこちらでどうぞ。

■2003.9.20(土)前半 古書会館リニューアル後の古書展に行った。
 この日は、改装が終わった東京古書会館の古書展に行ってきました。いやあ、き れいになっている。この間は2階でイベントを見たのだが、今日は地下で行われて いる古書展へ。
 前に比べたら、建物はずいぶんきれいになったなあ。でも、本が並ぶ様子や、本 を買いに来る人の様子は変わらないね。
 会場内をぐるっとまわって、下記の本を購入。

・横田順彌『銀河残侠伝』(1990年,徳間文庫)
 任侠SF小説という、非常に独特なジャンルの小説。横田氏の著作は、小説もノン フィクションも、俺が集めている本のひとつだ。
・有遊会『寄席爆笑帳』(1985年,三一新書)
 噺家・講談師・漫才師などのエピソード集。ちなみに有遊会の代表は、演芸・相 撲の評論家の故・小島貞二氏です。
・織田正吉『ジョークとトリック』(1983年,講談社現代新書)
 これは発想法の本。古今東西のジョークを例に挙げ、柔軟なものの見方を紹介 する本。著者は演芸・ユーモアに関する著作で知られている
・澤田隆治『上方芸能・笑いの放送史』(1994年,日本放送出版協会)
 NHK教育の人間大学のテキスト。それほどぶ厚い本ではないので、ポイントとな る人物・番組を取り上げている。エンタツ・アチャコや、「てなもんや三度笠」、横山 やすし・西川きよしなど。
・雑誌『広告批評 2001年2月号 特集:100年後に送る100人の21世紀最初 の1日』(2001年,マドラ出版)
 特集は100人の2001年1月1日の記録。文章だったり、写真・絵だったりする。登 場するのは赤瀬川原平、細野晴臣、明和電機、所ジョージなどなど。なんせ100人 もいるので、気になる人だけを挙げてもきりがない。

 そういえば古書会館の地下にいた時に、ちょっと大きな地震があった。しかし、ほ とんどの人が動じずに、そのまま本を探していた。中には「俺地震あったなんて知 らなかったよー」などと笑っていたじいさんもいた。そう考えると俺なんかまだまだだ なあ。「逃げた方がいいのか、でも持っている本を手放して逃げるのも惜しいなあ」 などと一瞬悩んだくらいだから。
 まあ、地震も関係なく、倒れる本棚や落ちてくる古本の間を縫って本を探すのも 考えものだけれどね。

 古書会館を出たあたりから、ぽつぽつと雨が降ってきた。そんな中、神保町の古 本屋をまわっていく。まずは古書会館周辺の店から。
 かつて、中古CD屋の「おと虫」のあった場所に、かげろう文庫という古本屋がで きていた。画集や写真集のような美術系の本が多かった。俺の興味とはちょっと違 うけれど、なかなか雰囲気のいい店だった。
 それから、草古堂へ。3冊購入。
・三善里沙子『中央線なヒト 沿線文化人類学』(2000年,ブロンズ新社)
 中央線沿線、それも新宿から西側を中心に紹介したエッセイ。中央線沿線って 面白い町が多いよなあ。しかし、まさか自分が足しげく通うようになるとは思わなか ったよ。
・山田風太郎『コレデオシマイ』(1996年,角川春樹事務所)
 作家山田風太郎の、晩年のインタビュー集。この本の内容の抄録を、前に『風太 郎の死ぬ話』(1998年,角川春樹事務所)で読んで、面白そうだと思っていたので。
・梅棹忠夫『知的生産の技術』(1969年,岩波新書)
 最近、この手の知的な生活に関する本が面白い。その中でも有名な1冊。名前だ けは知っていたが、なかなか手にする機会がなかった。これまで見た中で一番安 かったこともあり、購入。

 その後、平行するすずらん通り・靖国通りを行ったり来たりしながら、神保町交差 点に向かって西へ西へと歩く。新刊書店では東京堂書店書肆アクセスに寄る。書 肆アクセスで2冊購入。
・雑誌『中洲通信 2003年10月号 特集:エノケンの凄味』(2003年,リンドバ ーグ)
 『中洲通信』は、九州の博多でつくられているミニコミ。毎回色々な特集をしてい て、特集によっては買うようにしている。今回は、エノケンこと榎本健一の特集。エ ノケンの未亡人である榎本よしゑさん、エノケン一座文芸部に在籍した吉村平吉 氏へのインタビュー、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチへのインタビュ ーなど。
・古書目録『古本共和国18』(2003年)
 これは、10月に行われる「第18回早稲田青空古本祭」の目録。目録というのは、 古本のカタログです。古本祭に参加する店が商品を掲載し、買いたい人が申し込 む。注文が重複したら抽選などの方法で購入できる人を決める。目録だけでなく、 古本祭についてのインタビューや座談会もあり、面白そうなので購入。早稲田、行 ってみようかなあ(結局、行けませんでした)。

 その他、古本屋では、古書かんたんむ小宮山書店の店頭、大都書店を見る。 雨がぽつぽつ降ってきて、ビニールがかけられはじめた均一台も出てきた。こうな ると、中を見ることはできなくなってしまう。そんな中、古書かんたんむは店の外壁 に面した均一棚だけは開いていたので、見てみる。しかし、購入はなし。
 大都書店で横田順彌『ポエム君とミラクルタウンの仲間たち』(1980年,集英 社文庫)を購入。古書展に続いてまたまた横田氏の本。これは短編集。架空の国 を舞台にしたSFファンタジーらしい。

■2003.9.20(土)後半 神保町交差点から西へ。そして小川町まで。
 神保町の交差点から、更に西へ。岩波ブックサービスセンターで新刊の台を中 心に見る。1冊購入。
・高橋源一郎『人に言えない習慣、罪深い愉しみ 読書中毒者の懺悔』(2003 年,朝日文庫)
 書評集。『週刊朝日』と『読売新聞』に掲載したものをまとめている。高橋氏の書 評・文芸時評は、とにかく読んで面白いので、今回はほぼ迷わず購入。

 それから神田古本センターへ。2階の中野書店漫画部で、山岸涼子『日出処の 天子 一・三・四・五・六』(1994年,白泉社文庫)を購入。これは最近薦められ た漫画。初めの巻を借りて読んだら面白かったので、自分でそろえるべく購入。2 巻と7巻がなかったが、これは地道に探そう。場合によっては、新刊書店で買って も構わないだろう。

 靖国通り沿いの書店を見て歩く。日本特価書籍ヴィンテージなど立ち寄る。しか し、購入はなし。@ワンダーの店頭などは、雨のため既に均一台が片付けられてし まっていた。これで、本日の神保町は終了。都営地下鉄の新宿線に乗り、隣の小 川町で降りる。ふと、駅前の新古本屋ブックマーケット神田小川町店に行こうと思 ったのだ。
 しかし店に近づいてみると、なんだか人が多い。実はこの時閉店直前で、全品 70%引きセール中だったのだ。ここのところ来ていなかったので、知らなかった。 閉店セールは何日か前からやっていたようで、めぼしい本はほとんど買われてしま ったようである。それでも、4冊購入。
・板倉雄一郎『社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由』(1998年,日経BP社)
 前に同じ著者が書いた『ベンチャーわれ倒産す 昔、大臣賞。今、自己破産。』 (1999年,小学館文庫)を読んで面白かったので、興味を持って購入。あとは、7割 引という価格も影響したかな。
・『魔導大全 1996年版』(1996年,ソフトバンク)
 これは、テレビゲーム『ぷよぷよ』・『魔導物語』シリーズ(いずれもコンパイル)の 用語辞典。コンパイルは経営再建中だったのだが、2003年の1月に解散してしまっ た。かつてよく遊んだだけに、感慨深いなあ。本の内容は、かなり細かくつくられた 用語集です。
・いしいひさいち『バイトくんブックス2 食いすぎた男』(1989年,チャンネルゼ ロ)
・いしいひさいち『ドーナッツブックス いしいひさいち選集33』(1998年,双葉 社)
 いしいひさいちの漫画は、こつこつ集めている。全部集めるのは相当先になりそ うですが。

 ということで、本日の古本買いは終了。帰りはJR秋葉原まで歩いて、そこから帰 ってくる。

■2003.10.8(水) 神保町寄り道日記
 休みの前の日なので、会社帰りに久々に寄り道をした。ここのところ自宅と会社 を往復し、家では寝るだけの毎日だったので。などと書くと非常に過酷な仕事をし ているようだが、そうではなく、体力がないので家に帰ってすぐ寝てしまうという、そ れだけのことです。
 夜の街をお茶の水に向かって歩き、古本屋の草古堂と、本のほかCDや雑貨も 売っている新刊書店ヴィレッジヴァンガードお茶の水店へ。草古堂では全部の棚を 一通り眺めた程度だが、2冊見つけて購入。
・織田正吉『ことば遊びコレクション』(1986年,講談社現代新書)
 著者はユーモアに関する著作などで知られている。この本はしゃれ・語呂あわ せ・早口言葉・アナグラム・回文などの例を紹介している。
・須田泰成『モンティ・パイソン大全』(1999年,洋泉社)
 イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンの研究書。全シリーズの全エピソード解 説など、結構充実した内容のようだ。

 ヴィレッジヴァンガードでは本3冊とCD1枚を購入。
・雑誌『テレビブロス』(東京ニュース通信社)
 今回は「実写版セーラームーン」「勝新太郎」「天才バカボンと赤塚不二夫」など が巻頭で特集されている。相変わらずテレビと微妙な距離を取っている感じがい い。テレビ雑誌なのに。この雑誌のこういうところ、好きだなあ。
・高野文子『絶対安全剃刀』(1982年,白泉社)
 マンガ家高野文子氏の最初の単行本。この間読んだ同じ著者の『るきさん』 (1996年,ちくま文庫)が面白かったので、これも、と思った。
・加藤昌治『考具』(2003年,阪急コミュニケーションズ)
 「考具」とは著者の造語。アイデアを生むため、考えるための道具のことである。 それらの道具を駆使して、いかにアイデアをつくるか、という内容の本。

 CDは『1+1 ISHIDATE+NAGOYA Feat dj takawo』(カエルカフェ,KACA1093)。名 古屋章と石立鉄男の声(サンプリング用CD)を使ったダンスミュージック。4曲入り のCD。変な感じだ。でもクセになりそう。

 帰りに、地下鉄神保町の駅のそばの、ちょっと路地に入ったラーメン屋でとんこ つラーメンとチャーハンのセット食べる。久々に心の針が触れないものを食べた。 うまくはないのだが、驚くほど変な味なわけでもない。なんとも中途半端だった。駅 に広告が出ていたのを見て行ったのだが、期待したほどではなかった。
 その後、地下鉄の神保町駅で「メトロニュース」「メトロガイド」というふたつのフ リーペーパーをもらう。新しい号がおいてあると、もらってしまう。いかにも地下鉄会 社がつくっている、ある種の堅さはあるけれど、沿線の情報を知るのには情報もま とまっているし、便利。

■2003.11.2(日) 古本まつりでは惨敗す。
 この日は神保町で第44回神田古本まつり・神保町ブックフェスティバルがあって、 勇んで行ってきたのですが、天候の悪さと人の多さで色々な意味で惨敗でございま した。
 とにかく人があまりに多すぎて、その間を縫うようにして歩くだけで疲れた。活気 がある中を歩くのは面白いけれど、ゆっくり本も見られないのはちょっとつらいな あ。とりあえず見て来たのは、靖国通り沿いの古本のワゴンと、すずらん通り・さく ら通りの出版社の新本セールが中心。
 三省堂書店の中と、岩波ホールのそばの青空古本市は、人の多さにさっと見るく らいだった。まあ、この時期に神保町に来る人は、この時期しか来ない人も多いの かもしれない。そう考えると、この時期はあえて避けるのもひとつの方法なのかもし れないなあ。

 とりあえず買った本の紹介。全部で5冊。去年の古本祭りはおろか、いつもの神 保町めぐりより少ない。

・『古本 神田神保町ガイド』(2003年,毎日新聞社)
 中野書店の漫画部でひょっこり見つけて、「そういえば今年はまだ買ってないな あ」と思って購入。神保町の古本屋はもちろん、建物・食なども紹介している。新し くなった古書会館の紹介もある。
・竹内書店新社編集部・編『超ロングセラー大図鑑 花王石鹸からカップヌー ドルまで』(2001年,竹内書店新社)
 すずらん通りのワゴンで購入。明治から昭和40年代までに生まれた商品で、今で も売られているものの紹介。カルピスやセメダイン、ナビスコのお菓子オレオなど も、全部大正時代に生まれたものなんだ、など、色々なことがわかる。
・雑誌『季刊メディアプレビュー 1980年秋号』(1980年,東京313センター)
 @ワンダーの店頭で購入。マスコミ時評みたいな内容の雑誌かなあ。どういう雑 誌か全然知らなかったのだが、山口昌男へのインタビュー「編集者とは何か―そ の現代的条件を語る」が収録されていて、これだけでも読もうと思って購入。「現代 エディター・シップ考」という特集で、他には、和田勉・伊丹十三などへのインタビュ ーもある。巻頭ではイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃の成婚のニュースに ついて、各メディアがどのように取り上げたかの考察もしている。
・小宮豊隆・編『寺田寅彦随筆集第二巻』(1947年,岩浪文庫緑37-2)
 @ワンダーの店頭で見つけて購入。寺田寅彦の随筆を知ったのは、高校の現代 国語の授業だったなあ。熱心な読者なわけではないのだが、なんとなく気になる。
・益田喜頓『キートンの浅草ばなし』(1986年,読売新聞社)
 すずらん通りのワゴンで購入。元「あきれたぼういず」のキートン氏による、浅草 喜劇の回想録。このジャンルの本は、少しずつでも読んでいきたい。膨大な量の 本があるジャンルだと思うけれどね。 

 ちなみにこの後、俺は1ヶ月以上にわたる風邪で苦しむのであった。たぶん、あ の人ごみと寒さ、小雨にやられたんだと、今でも思う。

■2003.12.17(水) 神保町寄り道日記。
 次の日が休みなので、会社帰りに久々に寄り道してきた。最近は風邪が長引い ていて、休みの前日でも気力や体力がなく、まっすぐ帰っていた。しかし、ようやく 元気になって、ぼちぼち本調子という感じなので、神保町へ。
 まあ、元気になるといそいそと古本屋に行くというのも、我ながらどうかと思うが。 これは仕方ないね。風邪は治っても、古本病は治りません。

 神保町へ行く途中、かつてブックマーケット小川町店があった場所(地下鉄新宿 線の小川町駅を出てすぐ)も見に行ったが、薬局になっていた。個人的にはちょっ と残念。本かCDか雑貨を売るような店ができたらいいなあと思っていたので。
 しかし、小川町の駅から靖国通りを神保町に向かって少し歩いた所に、サワグチ 書店という古本屋を発見。新しい本が中心の品揃えだが、古本屋自体が久々だっ たので、結構楽しかった。2冊購入。
・手塚るみ子『オサムシに伝えて』(2003年,光文社知恵の森文庫)
 故・手塚治虫氏の長女である、るみ子氏が語る思い出話。
・ぼくらはカルチャー探偵団 編『知的新人類のための現代用語集<2>』 (1987年,角川文庫)
 泉麻人「風俗」、高橋源一郎「文学」、尾辻克彦「グルメ」など、一人がワンテーマ を担当した用語集。しかし、実は少し前に同じ本を買っていたことが後に判明し た。ああ!

 それから定番コースの草古堂へ。今日は1階だけを見て、文庫を2冊購入。
・カート・ヴォネガット『スラップスティック』(1986年,ハヤカワ文庫SF)
 カート・ヴォネガットの小説って、なんと表現したらいいのか難しい。ハヤカワ文庫 SFには入っていても、純粋なSFじゃない気がするし。ちなみに俺は、高橋源一郎 の小説の影響を受けてヴォネガットを読むようになりました。
・いしいひさいち『新ノンキャリウーマン』(1999年,双葉文庫)
 いしいひさいちの漫画は、値段がある水準より安かったら、とにかく買うようにし ている。
 しかし、会社を舞台にした四コマを読むと、「この人、会社勤めをしたことがある んじゃないかなあ」と思うような細かいネタが出てくることもある。あるいは、ネタを 提供している人がいるのかねえ。いしいひさいちって、結構謎に包まれた作家だよ なあ。

 夕飯は駿河台下の大戸屋で「豚とキムチの野菜どんぶり」を食べる。個人的には ちょっと味が濃かった。ちょっと前だったら、すごく好みの味だったと思うのだが、最 近味が濃いのはだめになってきた。

 その後、ヴィレッジヴァンガードお茶の水店へ。杉浦茂のマンガ『猿飛佐助』のト レーディングフィギュアを買う。こういう商品もあるんだねえ。奥が深い。
 その他フリーペーパーを何枚かもらって、ヴィレッジヴァンガードを出る。本・CD は購入なし。明大通りをぷらぷらとJR御茶ノ水駅に向かって歩き、総武線で帰宅。

■というわけで、
 実際に行ってから掲載までえらく時間が空きましたが、2003年後半の神保町日 記でした。次回は6月くらいに「2004年上半期神保町訪問まとめ」かなあ。




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