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2003.6.11(水)・7.8(火) 豪華2本立て! 原点回帰の神保町古本屋めぐり の巻(2003.8.15掲載)

 ええと、なんだかんだで約3ヶ月ぶりの神保町です。実は、神田小川町のブックマ ーケットや、ヴィレッジヴァンガードお茶の水店には、月に2〜3回は会社の帰りに 寄り道している。しかし、大体夜8時とか9時とかに行くので、他の本屋は軒並み閉 まっている。昼の古本屋街を歩くのは久々だ。
 ということで、6月11日(水)と7月8日(火)のそれぞれについて、古本日記、行って みましょう。ちなみに、燃朗作成の神保町地図もありますので参考までにどうぞ。

■6.11 前半戦
 今日の目的は、とにかく久々に神保町を歩くと、これに尽きます。そのため、普段 神保町に来るときはもってこないデジタルカメラも持参していた。これで神保町の 風景を撮影しようというわけです。果たしてどんな写真撮れたか? その結果は ちらをどうぞ。
 久々にJR御茶ノ水駅で電車を降り、歩き始める。最近は日本教育会館の古書展 に行くために地下鉄神保町から降りることがほとんどだった。しかし、7月からは古 書展の会場も東京古書会館に戻ることだし、また御茶ノ水駅から歩くルートが中心 になるだろうな。
 そうなると一番はじめに立ち寄るのは、丸善だ。店内は新刊を中心に見るが、購 入はなし。しかし、店外でぞっき本(自由価格本という表現をしていた)をワゴンで 販売しており、ここから山下武『古書のざわめき』(1993年,青弓社)を購入。著 者は作家であり、古本に関するエッセイでも知られている。俺はこれまで名前だけ 聞いたことがあったのだが、ここで見つけたのもなにかの縁と思い、購入。
 丸善を出て、今日は明大通りの方には行かずに、一本東の通りを南下する。教 会のニコライ堂の外観を撮影し、日本大学の駿河台校舎の脇を通る。途中でガラ クタ貿易(雑貨と服の店)、おと虫(中古レコード屋)、中古のおもちゃやフィギュアを 売っている店などを覗く。この辺はちょっと古本とは関係ありませんが、普段歩か ない道を歩くのもまた楽しい。途中で、改築中の古書会館も見てくる。えらく大きい ビルになっていてちょっと驚いた。

 古書会館のあたりから明大通りを横断して、いよいよ古書店街に入る。まずは靖 国通り北側へ。ヴィレッジヴァンガードに入る。今日はなんと営業をしながら改装も していた。売り場の配置がかなり変わっている。まだ本の置かれていない棚や、床 に敷いたダンボールに積まれた本など、かなり混沌とした状況になっている。しか し、このごちゃごちゃした感じもまたヴィレッジヴァンガードらしい。そんな状態に文 句も言わず店の中を見ているお客さんも、いかにもといった感じだ。
 しかし、いかんせんこの状況では落ち着いて本を見ることもできず、購入はなし。
 その後すぐそばの長島書店へ。ここに来るのは久々だ。地下は絶版マンガのコ ーナー。1階は一般書中心の品揃え。1階で、松田哲夫『これを読まずして、編集 を語ることなかれ。』(1995年,径書房)を購入。筑摩書房専務取締役であり、 現在も現役の編集者である著者による編集についての本。対談も収録されてい る。対談の相手は赤瀬川原平・荒俣宏・南伸坊など、著者ゆかりの人々。好きな 出版社のひとつに筑摩書房を挙げる俺としては、興味津津だ。

 その後、虔十(けいじゅう)書林文庫川村をまわる。虔十書林はサブカルチャー の本が多い。音楽や映画、テレビの本などが小さめの店内に所狭しと並んでい る。ただ、外に面した部分はガラス張りだし、店頭のワゴンや棚も多いので、狭い 感じはしない。文庫川村は名前の通りの文庫専門店。新書も一部扱う。特に岩波 文庫は山陽堂書店(岩波ブックサービスセンターの2階)と並ぶくらいの品揃えなの で、探している人には頼りになると思う。ただ、今日は両店とも購入はなし。

 靖国通りの南側へ。書泉ブックマート三省堂書店東京堂書店などの新刊書店 を見ながらすずらん通りを歩くが、特に購入はなし。一本南に入って、トキヤ(時刻 屋)書房を見る。ここもサブカルチャーの本が多い。しかし、最近はマンガと雑誌が 中心になっていて、単行本はちょっと少ない。
 それからすずらん通りに戻って西に進み、途中古書かんたんむ文省堂田村書 などの店頭均一台を見て歩く。ここでも、残念ながら購入はなし。しかし、平日の 昼だというのに神保町は人出が多い。田村書店の均一台なんて、人が多すぎてな かなか見ることができなかったよ。いったいどういう人たちなんだろうかと、自分の ことを棚に上げて考えてしまった。

■6.11 後半戦
 ここまで歩いてきてさすがにおなかがすいたので、キッチン南海で昼食にする。 久々にここのカツカレーを食べました。
 食欲も満たされたところで、再び古本屋まわりを開始。キッチン南海の向かいに ある書肆アクセスへ。ミニコミの棚を中心に見るが、今日は購入はなし。その代わ りといってはなんだが、フリーペーパー『モクローくん通信』PR誌『本の街』 いただく。『モクローくん通信』は、南陀楼綾繁と内澤旬子の両氏が作成している、 古書目録についてのフリーペーパー。B5判1枚両面だが結構な情報量で、古本好 きにはたまらない。それから『本の街』は、神田・お茶の水の情報誌。地元の人々 によるコラムや、お店の広告などが掲載されている。古本の話が中心というわけで はないが、地図も掲載されていて、古本屋以外の店について知ることができるの で、神保町を歩く楽しみが増えると思う。

 さて、書肆アクセスの隣には2件並んで湘南堂書店があるのだが、なぜか看板に 「大都書店」という紙が貼られていた。しかし、店内は棚の配置や並んでいる本も 湘南堂の頃のまま。ちなみに靖国通り沿いの店は長島書店になっていました。うう む、どういうことなのだろうか。謎だ。
 一般書を扱っている店では、在庫入れ替えのため店内半額セールを行っていた ので、丹念に探して、早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』(1982年,晶文社) 見つける。これはかつてジャックスというバンドのボーカルで知られ、現在も再び歌 手活動を行っている著者が、書店を経営していた頃の記録。本好きの人には必読 の本かもしれないが、実は俺は未読でした。今回は迷わず購入。それから100円 均一でけらえいこ『たたかうお嫁さま』(1992年,メディアファクトリー)。著者は 『あたしンち』(メディアファクトリー)で有名な漫画家。でも、この人には自分の結婚 生活を描いたエッセイ漫画というもう一つの代表作がある。これもそのシリーズの1 冊。プロポーズから結婚まで、どんな道のりが待っているかを紹介している。俺は この人の漫画、結構好き。見つけたら買っている。
 なお、隣の写真集やマンガをメインに扱っている方の店では半額セールは行って いないようでした。

 神保町交差点を渡って、靖国通り側に出る。神田古書センターへ。7階の文献書 に久々に行く。ここは女性アイドルの写真集や雑誌が多い。俺の目当ては奥の 方にある文庫本だったが、今日は購入はなし。ちなみに、古書センターの隣にある ブンケンロックサイドは男性アイドルやバンドの雑誌を中心にした姉妹店。店主さ んも本当に姉妹です。古書センター内では、中野書店の古書部(3F)と漫画部(2F) も覗く。漫画部はちょっと棚の配置が変更になり、絶版本も新書版と大判がまとめ て並ぶようになった。しかし、最近ここでは古本よりもぞっき本を見ることが増えた なあ。まあ、俺が最近あんまり古本マンガを探していないことが原因だろうけれど。
 古書センターを出て、さらに西へ。日本特価書籍に入る。今日はここのぞっき本 に収穫があった。3冊購入
 赤瀬川原平『赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ』(2000年,ギャップ出 版):本のタイトルだけを読んで、書評をするという珍しい本。赤瀬川氏だからこそ できる、という感じがする。
 岡崎武志『古本屋さんの謎』(2000年,同朋舎):俺が古本にのめりこむきっ かけをつくった人のひとり、岡崎氏の本。もちろんタイトルどおり古本についての本 です。かつて図書館で借りて読んだことがあるが、立ち読みしたらまた読みたくなっ たので、購入。
 大竹誠『街の忘れがたみ』(1999年,ギャップ出版):著者は大竹まこと氏とは 別人ですよ。昭和30年代の東京を、写真と文章で紹介したもの。街にあるお店や 風景を数多く取り上げている。町田忍氏の本とも近い雰囲気がある。こういう本、 最近興味が出てきたなあ。
 その隣のヴィンテージにも行く。1階が音楽系の雑誌、2階がサブカル系の雑誌と 単行本、それからアイドル写真集・雑誌。俺は2階のサブカルの単行本を中心に見 る。しかし、購入はなし。ううむ、今日は「しかし購入はなし」が多いなあ、我ながら。

 その後、靖国通りを西に進んで@ワンダーの店頭、波多野書店の店頭の均一台 を見て歩く。このあたりでさくら通りに入って、神保町交差点に戻るように東に進 む。ブックパワーRBに立ち寄り、店頭の均一台でいとうせいこう『全文掲載』 (1992年,新潮社)を見つけ、購入。いとう氏が1986年から1991年に書いたすべ ての文章を1冊にまとめた本。目次を眺めると、今の自分が興味を持っている固有 名詞がいくつも出ている。1980年代に関する本を収集ジャンルのひとつとしている 俺としては、これは欲しい。ということで購入を即決。

 帰りは神保町から地下鉄半蔵門線を使用する。購入した本の数はあまり多くな かったですが、個人的には久々の神保町で満足でした。

■7.8 前半戦 〜神保町交差点西側〜
 本日の目的は、無事改装も終了した東京古書会館でのイベント、「トークライブ 『本屋さんのつくり方』」を聴きに行くこと。イベントは夕方からだが、昼過ぎには神 保町に到着。今日は地下鉄神保町の一番西側の出口(A1)から出て、いつものよ うに古本屋めぐりを開始。
 しかし、今日はずっと小雨が降り続いていたため、古本の購入はあまりなし。雨 の日は店頭の均一台が見られないからなあ。透明ビニールがかかっている店はま だいい方で、色付きのカバーで覆われていたり、均一台そのものがしまわれてしま ったりして、見られない店も多い。
 そんな中を、ひたすら歩いていく。まずは@ワンダーへ。3階のワンダー3も見る。 同じ建物の2階にある金沢書店風通信社にも足を伸ばす。2階は、文庫・新書の コーナーがますます充実している。教養系の新書(岩波・中公・講談社など)だけで なく、ごま書房・KKベストセラーズ・祥伝社などのちょっと軽めで怪しげな新書も数 が揃っている。この辺りは棚を眺めているだけでも面白い。しかし、購入はなし。
 そのまま靖国通りを東に向かって進む。ヴィンテージは臨時休業中だった。日本 特価書籍では新書を2冊購入
 諸岡達一『死亡記事を読む』(2003年,新潮新書):新聞に掲載される訃報に ついて取り上げた本。なんとなく興味があって購入。
 外山滋比古『ユーモアのレッスン』(2003年,中公新書):最初にユーモアの 定義についての話があり、その後古今東西のユーモアの例が紹介される本。内容 ももちろん、著者が外山滋比古氏というのもいいじゃないですか。

 その隣の長島書店に入る。ここは元々湘南堂書店だった店だ。歴史関係の本が 多いような印象を受ける。しかし演芸に関する本や、書評・本についての本のコー ナーもあり、なかなか面白そう。これから神保町をまわるときには定期的に立ち寄 ろう。
 古書センターは、今日は2階の中野書店漫画部を見た後で1階のワゴンセールを 覗く。雨がぽつぽつ降り出していたせいか、全品値札の半額になっていた。それな らということで、3冊購入。
 今福龍太:編『山口昌男著作集1 知』(2002年,筑摩書房):半額だったこと もあり、かなりお買い得になっていたので思い切って購入。山口昌男氏は人類学 者であり現在札幌大学学長。氏の著作は俺にはかなり難しいのだが、それでも興 味を惹かれる。
 G・K・チェスタトン『木曜の男』(1960年,創元推理文庫):名探偵「ブラウン神 父」の登場するシリーズを書いたチェスタトンの長編小説。
 ぼくらはカルチャー探偵団:編『活字中毒養成ギプス ジャンル別文庫本ベ スト500』(1988年,角川文庫):文庫本のブックガイド。池澤夏樹氏他、様々な書 き手が紹介しているが、巻頭の浅田彰・高橋源一郎の両氏による対談が面白そう だったので購入。
 古書センターの隣の岩波ブックサービスセンターでは、文庫・新書・本の本を中 心に見る。東京都古書籍商業協同組合:編『古本カタログ』(2003年,晶文社) を購入。同一テーマで現在古本として知られている本と、これから古本として評価 されるであろう本を並べたもの。紹介されている本はすべて表紙も掲載されている ので、眺めているだけでも面白そうだ。

■7.8 後半戦 〜神保町交差点東側。そしてイベントへ〜
 神保町交差点を渡って、すずらん通りに入る。
 大都書店(旧湘南堂書店)の店内全品半額セールはこの日も行われていた。後 書肆アクセスなどを見て歩く。古書かんたんむの均一台は、店の外壁の棚のみ 見ることができた。
 しかし、雨だとどうしても気分が乗らない。やっぱり古本屋めぐりは晴天に限るよ なあ。そんなことを考えながらすずらん通りを東へ東へ。
 東京堂書店1階の新刊の平台で雑誌『文藝 2003秋 特集:川上弘美』(2003 年,河出書房新社)を見つけて、購入。小説『センセイの鞄』(2001年,平凡社) どで知られる川上氏のインタビュー、著作紹介などが掲載されている。それから2 階の古本文庫やさんの棚も眺める。しかし、欲しいと思う気持ちと値段を比較する と、どうしても他の店でもっと安く探し出したいと思ってしまう。その後3階へ。リニュ ーアル当時は少なかったサブカルチャー関連の棚が増えてきたのが個人的には 嬉しい。平林享子:編『グラフィック・デザイナーの仕事』(2003年,平凡社) 購入。夕方のトークショーの出演者でもあるクローバーブックスの平林さんの編集 した本。祖父江慎、角田純一、グルーヴィジョンズ、クラフト・エヴィング商會へのイ ンタビューが中心。グラフィックデザインの門外漢である俺にとっても、面白そうな 内容だ。
 三省堂書店は新刊の棚をさっと眺める程度。しかし、ここはいつ来ても立ち読み している人が多いよなあ。三省堂から靖国通りに出て、洋書タトル(東京ランダム ウォーク)へ。一通り棚を見る。
 靖国通りを渡って北側へ。ちょうど三省堂書店の向かいあたりに、自遊時間とい う三省堂の新店ができていた。「食・旅・道・楽」というテーマに沿った本やグッズが 並んでいる。セレクトショップのような感じか。カフェも併設されている。ヴィレッジヴ ァンガードとともに、これまでの神保町とはちょっと違った雰囲気のある書店。
 そのヴィレッジヴァンガードへも立ち寄る。店内をひととおりまわって、植草甚一 『古本とジャズ』(1997年,角川春樹事務所)を購入。実はこれまで植草甚一の 本は読んだことがなかったのである。
 このあたりでそろそろ古書会館へ向かう。まだ開始20分くらい前だが、入場は先 着順なので、万が一締め切られたりしたら悔やんでも悔やみきれない。ということ で明大通りを渡る。しかし、すごい建物だなあ。この間完成間近の様子を見たとき もずいぶん様子が変わったと思ったが、いざ完成したのを見ると、以前とは見違え てしまった。これからはここで古書展を行うのか、すごいなあ。
 早速2階の会場へ。客席は7割くらいが埋まっていた。俺も空いている席を見つけ て座る。しばらく待つうちに、続々と人が入場し、追加で座席が用意されるくらいの 入りになった。全部で100人くらいはいるだろうか。
 そして、午後6時からいよいよ「トークライブ『本屋さんのつくり方』」が開始。司会 はライターの永江朗氏。ゲストはライターであり、オンライン古本屋杉並北尾堂 主である北尾トロ氏、ライター・編集者でありオンライン書店クローバー・ブックス 主の平林享子氏、目黒区学芸大学の新刊書店恭文堂書店店長の田中淳一郎 氏。それぞれの方の立場から本や本についての話が聞けて面白かった。特に、恭 文堂書店が参加している「NET21」の話は興味深かった。全国の中小書店が、本 の注文を共同で行ったり、販売データを共有したりという取り組みらしい。
 聴いている人たちも熱心で、最後の質疑応答も色々な質問が出ていた。あっとい う間の2時間であった。
 イベントの後、古書会館の上にあるホールで懇談会が行われ、俺もちゃっかりと 参加してしまいました。新しい古書会館は従来の古書展会場以外にも、さまざまな イベントができるように部屋が造られているようだ。これからどんなイベントが行わ れるか楽しみ。
 懇談会のあと、帰りに北尾さんとコーヒーを飲みつつ古本のことなど色々な話を 伺う。そして御茶ノ水駅からJR線に乗って帰って来たのでありました。

 …ということで、初夏の神保町は個人的にはなかなか充実した日々でありまし た。



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