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2003.3.30(日) 追憶の町〜千葉県市川市八幡周辺古本屋めぐりの巻(2003.5.1掲載)


はじめに

 八幡という町を知っている人も知らない人も「なんでまたおまえはその町に古本を買いに行くのか?」とお思いかもしれません。実は、八幡は学生時代の俺にとって 思い出深い町なのです。大学生の頃、俺は東京から千葉へと通っていました。その途中でよく寄り道したのが、この八幡なのですよ。
 なぜかといえば、「駅前に古本屋があるから」という、非常にわかりやすい理由です。学生時代からそういう男でした、俺は。
 それから、学生時代に神保町に行くときは、本八幡から都営地下鉄新宿線に乗っていた。なぜなら、定期券があったので、このルートの方が交通費を節約できた から。時間はかかるんですけれどね。あの頃は時間はあったけれど、お金がなかったのよ。懐かしいなあ。

 ちなみに当時通っていたのは、京成線八幡駅の前にある「山本書店」と、駅に隣接した市川京成百貨店内の「ブックサークル」の2店。しかし、今回インターネットで 調べてみると、その他にも5店舗の古本屋が駅周辺に見つかった。またJR総武線の本八幡駅前には、ブックオフもできたようだ。これは、ちょっと気合を入れてまわ ることになりそうだ。
 ということで、いつもとはちょっと違う場所を尋ねる今回の古本日記、はじまりで す。
 …と、その前に。今回も古本マップを掲載しておきましょう。この町の古本マップを個人で作っているのは、珍しいのではなかろうか。まあ、たいした地図ではありま せんが、参考にはなると思いますのでどうぞ。
■ JR本八幡駅・京成八幡駅周辺古本マップ

いきなりちょっと意気消沈

 3月20日。天気もよくて、かなり暖かい日。もう春は近いと思いつつ、俺は京成線八幡駅に降り立った。特急に乗れば、実は家から30分とかからない位置なんです ね、この町は。つまり神保町に行くよりも近い。しかし、ここには特別な用でもないと「行こう」とは思わないよなあ。学生時代は3日に1日くらいの割合で寄り道してい たんだけれどなあ。
 駅の様子はほとんど変わっていないので、なんだかほっとする。まずは、改札口を出て駅に直結している京成百科店内のブックサークルへ向かう。なお、京成百 貨店は、名前から想像するほど大きなデパートではない。地元の人が寄るスーパーを想像してもらえればいいかな。
 だが、なかった。いきなり肩透かしを食らってしまったが、ブックサークルがあった所には、マッサージ屋ができていた。移転したのかと思い、他の階にも行ってみる が、ない。どうやら閉店してしまったらしい。ううむ、出鼻をくじかれた思いだ。ちなみに当時の記憶に頼って書いておくと、ブックサークルは、漫画・ゲームやフィギュ アなどを主に扱う店だった。古本は、文庫本や単行本が少しある、というような構成。あまり本を買った記憶はないが、それでもなくなっているとなにか寂しい。
 その代わりといってはなんだが、同じフロアにある新刊書店ダイセイコー市川 店」の中に、ふるほん文庫やさんのミニ店舗が出店していた。神保町の東京堂書と同じようなかたちの業務提携だろう。ふるほん文庫やさんの棚を眺めるが、購 入はなし。ふるほん文庫やさんは、1280円・680円・280円という価格分けがされているんだが、「これはちょっと探せばもう少し安く見つかるだろう」と思う本が多い。 どうしても探している本を手っ取り早く見つけるにはいいけれど、それ以外の場合はちょっと躊躇してしまう。
 京成百貨店を出て、すぐ西側にある「ほりだしや」に向かうことにする。しかし、開いていない。看板は出ているので、おそらく開店前なんだろう。もう少し時間が経ってから来ることにしよう。
 ということで、都営地下鉄本八幡駅の出口のある通りに出る。この通りには椿書という新刊書店もある。CD・ゲームショップも併設された、比較的大規模な店。今回は軽く店内を見るにとどまる。購入はなし。

気を取り直して中盤戦

 椿書房を出てすぐ南の交差点を西に行くと、すぐにK-1ブックスが見えてくる。K-1ブックスという店は池袋にもある(光芳書店の支店)が、特に関係はないようだ。こ の店は雑誌・写真集・漫画が多い。そして3分の1くらいはアダルト雑誌。ただ、文庫や単行本も小説中心にそろっている。ここでは、次の2冊を購入。

 『週刊朝日百科世界の文学19 タイムマシン/八十日間世界一周/月世界旅行』(1999年,朝日新聞社)
 『週刊朝日百科世界の文学48 SFと変流文学』(2000年,朝日新聞社)

 この「週刊朝日百科世界の文学」は、A4サイズで30ページほどのパンフレットのようなつくり。全部で121号まで出ていて、すべてそろえれば文学の百科事典になる というもの。このシリーズがバラで何冊か並んでいたが、その中からSF関連のものを見つける。それぞれ、ジュール・ヴェルヌ、H.G.ウェルズなどを紹介したものと、フィリップ・K・ディック、ウィリアム・ギブスンなどを紹介したもの。写真なども多く、資料としても読み物としても面白そうだ。しかし、さすがに全巻そろえる気力はないなあ。
 K-1ブックスを出たあと、京成八幡駅へ戻るようにして歩く。西側の踏み切りの手前に、山本書店が見える。ここは、学生時代によく本を買った店のひとつである。 特に文庫本は、相当な数を買った記憶がある。しかし文庫だけでなく、音楽関係や、囲碁・将棋関係など、特定のジャンルの単行本もそろっている。アダルト雑誌の割合が少ないところにも、店のこだわりを感じる。それほど大きな店ではないが、いい店だと思う。
 今回も久々に店内をひとまわりし、下記の3冊を購入する。

 都筑道夫『未来警察殺人課』(1982年,徳間文庫)
 外山滋比古『男の神話学』(1982年,中公文庫)
 紀田順一郎『新版古書街を歩く』(1992年,福武文庫)

 3冊とも文庫になってしまったが、これは偶然。でも、中公文庫(背の色が薄い桃色で統一されていたころのもの)・福武文庫・ちくま文庫などは、出版社ごとにまと まっているので、目が行きやすい。そういえば、ちくま文庫もこの店でずいぶん買ったなあ。
 ……どうも思い出話が多くなってしまう。先へ進もう。
 山本書店を出ると、京成線の線路を挟んだ反対側にも、古本屋があるのを見つける。かつては記憶にないので、ここ2〜3年の間にできた店だろう。予定にはなか ったが入ってみる。ブックアイランドという店。
 中はいわゆる新古本屋のような品揃え。本とマンガ、CDやゲームやプラモデルなどを扱っている。しかし、はっきりいって魅力を感じなかった。まず、これはその時だけだったのかもしれないが、店員と、店員のうちの誰かの子どもとおぼしき小学生が騒いでいて、非常にうるさかった。これで買おうという気持ちがなくなってし まった。そうなると悪いところばかり見えてきて、置いてある商品がごちゃごちゃしており、さらに埃っぽいのが気になり出す。まあ、埃っぽい古本屋というのは少なくないが、新古本屋のような雰囲気の店では珍しいのではないか。
 ということで、早々に立ち去る。俺がここまで悪い点を書くこともあまりないが、第一印象が悪かったし、正直な感想なので仕方ない。

徐々に勢いづいて終盤戦へ

 再び京成線の踏切を渡り、南へ向かう。京成八幡とJR本八幡の駅の間にある交差点を東に曲がり、5分ほど歩いたところで歩道橋の前を南に曲がる。すると、河書房が見えてくる。ここは、色々な意味でインパクトがあったなあ。
 まず、店頭の「3冊110円」のワゴン。「110円」という中途半端な値段が興味をそそる。このワゴンをざっと見てから、中に入る。しかし、ドアが開きにくい。立て付けが悪いのだ。ちょっと力を入れて扉を押す。
 中は、小さいがこざっぱりしている。もっと言ってしまうと、一部の棚などはちょっとスカスカしている。並んでいるのは文庫、マンガ、単行本がほとんど。しかし、並 べ方に脈絡がない。小説の並ぶ棚に、ブックエンド代わりにHなビデオを紐で束ねたものを置いてあったりもする。店のオヤジさんはどてらを着て、鼻歌を歌ってい る。
 ううむ、なんと独特の雰囲気がある店なんだ。その雰囲気にちょっと圧倒されてしまう。しかし、とりあえず本棚を物色。そうするとこれがびっくり。珍しい本はないが、結構状態がよくて欲しいと思わされる本が安い。棚をじっくり見て、結局次の4冊を購入。

 桜井浩子『ウルトラマン青春記 フジ隊員の929日』(1994年,小学館)
 山口瞳『男性自身素朴な画家の一日』(1988年,新潮文庫)
 山口瞳『温泉へ行こう』(1988年,新潮文庫)
 フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1977年,ハヤカワSF文庫)

 これを持って店を出ようとするが、またもや入口の扉が引っかかる。そこでオヤ ジさん、
「ああ、そこはちょっと持ち上げながら引いてみてよ」
 とひとこと。オヤジさんも解っているけれど修理しないのがすごい。ひょっとして万引き対策か。
 銀河書房を出て、そのまま南下する。JR総武線の高架をくぐって、南西に向かう。15分くらいぶらぶら歩いて、ブックランド・オズに到着する。ここは、うしろ半分がアダルト雑誌・ビデオ。前半分がマンガと文庫。いかにも住宅街の古本屋、といったところ。しかし、全体的にちょいと埃っぽい。
 ここでは関川夏央『戦中派天才老人 山田風太郎』(1998年,ちくま文庫)を見つける。まずまずの状態だったので、購入。
 ブックランド・オズを出て、本八幡駅に戻るように歩く。かつてこの通り沿いに、ビデオ・CDショップに古本売り場が併設されたような店があったのだが、なくなってい た。そのまま再びJRの高架線に戻り、線路に沿って西に歩くと、川井古書店が見えてくる。
 ここは狭い店内に文庫・単行本が詰め込まれたような感じの、いかにも昔ながらの町の古本屋。本は多いが、そんなにごちゃごちゃしていないし、本もきれいなものが多い。ここでは、表の均一台で安部公房『方舟さくら丸』(1990年,新潮文 庫)を見つけ、購入。

おまけとまとめ

 さて、最後は本八幡駅の北側にあるブックオフだ。ここは、レンタルビデオショップのTSUTAYAと隣り合わせになっている。面積はブックオフとしては小さい。だが、 このくらいの広さの方が全部の棚を見られるので、俺にとってはちょうどいい。古本屋に行くと、どうしても自分が興味のある棚は全部見たくなってしまうので、大型店 舗は体力的につらい。しかし、特定の棚を見ないと、「もしかしたらあそこに欲しい本があるんじゃないか」と思えてきて精神衛生上よろしくない。特にブックオフはジャンルの分け方が適当なので、自分に興味のないジャンルも含めて、くまなく棚をチェックしたくなる。
 しかしまあ、大規模だろうが小規模だろうがブックオフはブックオフ。すべての棚を見てみたが、それなりの品揃えだった。それでも下記の本を購入。

 『あずまんが大王THE ANIMATIONビジュアルブック@A』(2002年,メディアワークス)
 横田順彌『さらば地球よ宇宙船〔スロッピイ号〕の冒険』(1992年,徳間文 庫)
 かんべむさし『むさしキャンパス記』(1982年,徳間文庫)
 都筑道夫『全戸冷暖房バス死体つき』(1982年,集英社文庫)

 ということで、本日の古本めぐりは終了。
 じゃなかった。最初に閉まっていたほりだしやを見に行こう。しかし、またもや閉まっていた。看板は出ているし、店の中も電気はついているのだが、ドアに鍵が閉ま っており、中にも人の気配がない。ううむ、タイミングが悪い。
 まあ、これはまた次回ということで。今回の古本日記は、懐かしさと新鮮な発見にあふれていた。たまにはこの町をぶらぶらと歩いてみるのもいいかなあと思いまし た。
 ということで、今度こそ本当におしまいです。



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