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2003.3.22(土) 今日も今日とて神保町 〜 定例、神田神保町めぐり(特別 付録:燃朗直筆神保町マップ) の巻 (2003.4.9 掲載)

 いつものように、神保町めぐりです。しかし! 今回は燃朗が描いた「神田神保 町俺なりマップ」があります。これまで店の場所や燃朗の歩く道筋がいまいち解り にくかった人も、この地図を見ながら読んでもらうと、わかりやすいのではなかろう か。

■ マップはこちら

それでは、古本日記いってみましょう。

■まずは古書展へ
 俺はこの日、いつものように都営地下鉄新宿線に乗って、神保町に向かった、の ではない。3月19日から水天宮〜押上間が区間延長された営団地下鉄半蔵門線 に乗って、神保町へ向かっていた。いやあ、これは今までよりもさらに神保町が近 くなるぞ。
 そうして神保町に到着し、いつものように一番西寄りのA1出口を出る。まずはこ こから、日本教育会館の古書展(城南展)に向かう。1時間くらい会場内をうろつい て、次の4冊を購入。

・島森路子『広告のヒロインたち』(1998年,岩波新書)
 『広告批評』(マドラ出版)編集長による、戦後日本の広告史。広告に登場した女 性を中心に、話を進めていく。原節子から広末涼子まで、全部で39本の広告が年 代順に紹介されている。
 俺は特に広告に興味を持っているわけではないのだが、なんとなく面白そうだっ たので購入
・雑誌『WAVE 22 アート新世紀』(1989年,ペヨトル工房)
 このところ気になるペヨトル工房の雑誌のひとつ『WAVE』。この号は当時の現在 美術の新鋭を紹介している。といっても、俺が名前を知っているのは森村泰昌 ただひとりなのだが。それでも、作品の写真が(モノクロだが)多く掲載されており、 眺めているだけでも面白そうである。
・鋤田正義『映画ワンダフルライフ その登場人物たちと撮影現場の記録』 (1999年,光琳社出版)
 映画『ワンダフルライフ』(監督:是枝 裕和,1998年)の撮影風景の写真集と、出 演者へのインタビュー集の2冊組。実は俺は、映画自体は未見なのである。しか し、監督自ら書き下ろした小説の是枝裕和『小説 ワンダフルライフ』(1999年,ハ ヤカワJA文庫)を読んでえらく気に入った記憶がある。あらすじを書いておくと、物 語の舞台は人が天国に行く前に7日間を過ごす施設。ここでは、生前一番思い出 に残った場面を選び、その思い出を映像化する。その施設にやってきた人々が、 それぞれに自分の一生を振り返り、語っていく。
 この写真集は、独特の雰囲気がある。なんというか、あえて自費出版のような造 本をしているとでもいうか。なお、現在版元の光琳社出版は倒産してしまっている が、アーティストハウスからも同じ本が復刊されている(ただしこちらも版元品切れ かもしれない)。
・『ブック・ガイド'89 美的現代へのライフ・マニュアル』(1988年,河出書房新 社)
 ブックガイドの類は結構好きなのである。この本は、本についてのコラム・アンケ ートとブックガイドからなる。アンケートの回答者まで含めるとかなりの数の執筆者 だ、ひとりひとりの名前までは割愛するが、中には「へえ、こんな人も書いているん だ」という発見もある。まずは気になる人の文章から少しずつ読んでいこう。

 意識したわけではないが、本日の古書展ではなんとなく似た雰囲気のある本を 購入したなあ。そんなことを考えながら会場を後にする。

■神保町交差点西の書店めぐり
 古書展の会場から靖国通りに出て、ほぼお決まりの店を見ていく。まずは波多野 書店へ。店頭で竹永茂生『拾う技術』(2002年,リイド社)を見つける。書名を見 ると辰巳渚『「捨てる!」技術』(2000年,宝島社新書)の反論本かと思いきや、「リ サイクルショップでこんな面白いものを見つけたぞ」という内容のエッセイ集だっ た。まあ、書名は完全にパロディだろうけれどね。著者がかつて「天井桟敷」(寺山 修司主催の劇団)の演出家だったということにも興味を惹かれて購入。
 その後、@ワンダーへ。まずは店頭のワゴンを覗いた後、1階のミステリー・SFの 単行本、各種文庫の棚をひととおり見て回る。3階の雑誌やスポーツ、芸能関係の 棚も眺めるが、本日は購入はなし。ただし別の意味で収穫があった。
 @ワンダーの入っているビルの2階は、風通信社金沢書店という、歴史や社会 科学の本を多く扱う二つの古本屋が入っている。いずれもちょっと縁のないジャン ルなので、かつて一度行ったきり足が遠くなっていたのだが、最近ここに文庫と新 書のコーナーが出来た。新書は、岩波新書・中公新書・講談社現代新書などの教 養系が多いが、KKベストセラーズなどの娯楽系、一時期流行した「○○の謎」とい う漫画やアニメーションについての研究本など、あまり古本屋に並ばないような新 書もある。いわゆる「トンデモ本」と呼ばれるUFOや心霊を扱ったあやしげな本も並 んでいる。もちろん、小説のノベルスもある。文庫も、新書に比べると数は少ない が、それでも一通りのジャンルが並んでいる。これは、今後チェックする楽しみが 増えた。ただ、今日のところは購入はなし。
 @ワンダーを出て、ヴィンテージへ。最近寄っていなかったなあと思ったので、な んとなく2階へ上がる。ここの1階は音楽の雑誌や本が多いので、俺はもっぱら2階 のサブカルチャーの雑誌や本を見ている。
 しかし、こういうときに俺は本に呼ばれていると感じるよ。なぜなら、棚の中から、 雑誌『綺譚 第2号 特集:都筑道夫』(1980年,綺譚社)を見つけたからだ。詳し くは不明だが、つくりといい、定価でなく「頒価」という表示があるところといい、ミニ コミではないかと思う。しかし、執筆人がえらい豪華だぞ。まず表紙が大友克洋。 他に絵を描いているのが山岸涼子や高野文子。執筆者には横田順彌・竹本健治 鏡明・橋本治・宮脇孝雄・伊藤典夫など。都筑道夫自身も鏡明にインタビューを受 けている。そうそう、栗本薫の連載小説もあるぞ。詳細はこれから調べようと思う が、とにかく購入を決める。
 思わぬ収穫に喜びつつ日本特価書籍へ。ここでは種村季弘『偽書作家列伝』 (2001年,学研M文庫)の「ぞっき本(新刊だが特価品扱いで値段の安い本)」を 購入。最近、学研M文庫のぞっき本を見ることがあるが、なぜだ? ぞっき本という と、倒産した出版社の在庫放出と考えているので、ちょっと謎だ。知っている人が いたら教えてください。
 日本特価書籍の先の矢口書店の外の均一台を覗いてから、角を曲がってさくら 通りに入り、ブックパワーRB へ。ここも久々の気がする。スポーツ関係・芸能関係 の棚を見た後、サブカルチャーの本が並ぶ一角へ。ここで別冊宝島347『1980年 大百科』(1997年,宝島社)を見つけ、購入。1980年代に関する本が好きだと言 っていながら、この本は持っていなかったのですよ。なかなかめぐり合わせが悪く てねえ。ということで今回ようやく購入。
 ブックパワーRBを出て、再び靖国通りへ戻る。ブンケンロックサイドの店頭ワゴン で、池内紀『幻獣の話』(1994年,講談社現代新書)を購入。これは俺が最近、 スーパーファミコンの『真・女神転生』(1992年,アトラスに夢中になっているので、 そこに登場するモンスターについて知りたいと思ったから。それから、店内で無料 配布されていたPR誌『本の街 No.270』(2003年)をいただく。内容は神保町近 辺で住む人・働く人のエッセイと、お店の紹介。古本の話だけではないか、巻末に は神保町の地図もあり、なかなか面白そうだ。
 ブンケンロックサイドの隣の神田古書センターでは、1階のワゴンと2階の中野書 漫画部を覗くが、購入はなし。最近あまり中野書店で漫画を買っていないなあ。 寂しいような申し訳ないような。まあ、そんなことを考えていても仕方ないので、隣 岩波ブックサービスセンターへ。雑誌の棚、新書・文庫の新刊を見る。そして定 期的に覗いている「本に関する本」の棚も見る。ここで芳賀健治『インターネットで 古本屋さんやろうよ!』(2003年,大和書房)を見つける。著者は古本うさぎ書 というオンライン古本屋の店主さん。やはりこういう本は気になるので、買ってし まう。

■休憩後、神保町交差点の東へ
 ここまででかなりの本を買ったし、体力が消耗してきたので、昼飯にする。神保町 の交差点を北に曲がり、白山通り沿いの進行方向左の歩道を歩いていくと、5分く らいで天丼の店いもやに到着する。実は「いもや」という店は神保町には6店舗あっ て、とんかつ・天丼・天ぷら定食を扱っている。それぞれの店でひとつのメニューを 扱っているので、入る店を間違えると自分が食べたいメニューにありつけない恐れ があるので注意だ。まあ、どれもうまいのだけれど。今回は、天丼のいもや。天丼 は500円で味噌汁つき。いもやの天丼を食べると、「500円でここまでうまい天丼は そうないようなあ」といつも思う。セルフサービスのたくあんもうまい。かつおぶしの 風味が独特。メニューにはおしんこ(100円)もあるのだが、たくあんがあまりにうま いので実は注文したことがない。

 昼飯の後、再び神保町交差点に戻る。白山通り沿いの古本屋は、また今度とい うことにする。交差点から、久々に靖国通りを東に歩いていく。普段はすずらん通り に入ってしまうので、この風景は久々だ。一誠堂書店田村書店小宮山書店など の店頭を覗いて歩く。小宮山書店は横のワゴンセールや店内の文庫の棚も覗いて みる。
 このうち、田村書店の店頭で糸井重里『インターネット的』(2001年,PHP新 書)を購入。ちなみに、田村書店で店頭の本を買う場合は、出来るだけぴったりの お金を渡そう。それから、店外に店頭本の会計をする店員さんがいるので、そこで 代金を支払おう。というのも、もし店内の奥にいる店主さんに店頭本を持っていっ て、さらにお釣りがいるような支払いをした場合、怒られるからだ。さいわい俺はそ ういう目にはなったことがないのだが、これは本当らしい。岡崎武志氏や坪内祐三 氏のエッセイで読んだことがある。しかし、田村書店の均一台は、「この本がこの 値段なんて!」と驚くような本が並ぶことがあるので、恐れてはいけない。
 小宮山書店の角を曲がって、文省堂書店の「4冊まで100円」の棚を覗く。しかし、 最近は漫画が多くなってしまい(漫画は4冊100円の対象外)、ちょっと残念。そのま ま南に進み、すずらん通りへ入る。いったん神保町駅に戻るようにして、古書かん たんむの店頭、書肆アクセスなど覗く。購入はなかったが、書肆アクセスで、『モク ローくん通信 創刊号』(2003年)をいただく。これは、南陀楼綾繁・内澤旬子の 両氏による古書目録のフリーペーパー。B5サイズ裏表に情報が詰め込まれていて なんとも楽しい。
 そこから今度はすずらん通りを東に向かって引き返し、東京堂書店へ。ここの新 刊平積みコーナーは、やっぱりいい。とにかくここを眺めるだけでも、この店に来る 意味があると思う。ただ、購入はなし。2階のふるほん文庫やさんのコーナーも、今 日は収穫なし。
 その東京堂書店の斜め前、ついこの間まで東京堂書店の仮店舗があった場所 に、新しい書店が開店していた。ふくろうブックステーションという、雑誌とムックの 専門店。一部新刊の書籍も扱っている。バックナンバーも多く、テーマに沿った雑 誌のコーナーもあり、面白いのではないかと思う。ただ、わざわざここまで来て買お うと思えるどうかは難しい。特に新刊の雑誌は、帰り道にある書店やコンビニエン スストアで買ってしまうことが多い。しかし、神保町に来たら寄りたいとは思う。それ からちょっと南に入ってトキヤ書店へ。ここは漫画や、アイドル写真集、雑誌が多 い。しかし、前よりも活字の本や雑誌が減ってしまったので、軽く眺めるだけに止ま る。

■終盤戦 東側の新刊書店を中心にまわる
 再びすずらん通りに戻り、三省堂書店へ。1階の新刊・雑誌のコーナーは、人が あまりに多いので軽く眺めて終わり。2階の文庫・新書の新刊を見て、珍しく5階の コンピュータ関連の本を見る。今後のホームページ作りのヒントが欲しいと思って、 何冊かの本を立ち読み。しかし、購入はなし。
 三省堂の靖国通り側の出口を出て、神保町交差点に向かい歩く。東京ランダム ウォーク神田店で洋書や写真集を眺める。ここは洋書だけでなく、美術全般の和 書もあるので、洋書に興味がない人にも楽しめると思う。なお、これまでこの店はタ トルという名前だと思っていたが、タトルというのは経営する会社の名前(タトル商 )で、店名は東京ランダムウォークらしい。
 そのランダムウォークを出て、靖国通りを横断する。長島書店の店頭ワゴンを見 てから、ヴィレッジヴァンガードへ。ちなみに長島書店は、店内は地下の絶版漫画 のフロアも面白いし、1階も一般の文庫や小説の単行本から、歴史の本など硬め の本まで並んでいる。
 ヴィレッジヴァンガードは、建物を少し入ってから地下に下りたところにあるので、 知らない人は店があるなんて気付かないかもしれない。外にも、50cm×100cmくら いの立て看板しかない。しかし、中に入るとまぎれもなくヴィレッジヴァンガードであ る。本があって、CDがあって、おもちゃやグッズがある。普通の本屋に並んでいる 本(一般的な雑誌やベストセラー)は少ないが、特定のジャンル・作家の本は、そ れこそ三省堂書店にもないような本までそろっている。賛否両論あるとは思うが、 俺は好きなんだよなあ、この雰囲気。今日は本の購入はなかったが、CDを2枚購 入。ここのところ好きになった倉橋ヨエコ『礼』(WINN82053,2000年 ワーナーイ ンディーズネットワーク)『思ふ壺』(WINN82075,2001年 ワーナーインディーズネt ットワーク)を購入。

■まとめ
 ということで、本日の神保町めぐりは終了。しかし、飽きないよなあ。高校生の頃 からかれこれ10年近く通っているが。おそらく、自分の古本への興味のありように あわせて、新しい面白さを見つけられるからだろうな。近いうちにまた行こうと思い つつ、今回の古本日記は終わりです。



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