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2003.1.11(土) 吉祥寺・明大前 〜 新春古本買い初め の巻 〜  (2003.1.22掲載)

 1月11日土曜日、俺は久々にJR中央線に乗って西へと向かっていた。今回の目 的はふたつ。ひとつは、いつもネットで古本を購入している古本すうさい堂の店舗 を訪ねること。すうさい堂の店舗は京王線の明大前にあるのだが、この一月末で 吉祥寺へ移転する。ということで移転前の店舗におじゃましたいと思ったのだ。そし てもうひとつは、昨年九月以来四か月ぶりに吉祥寺の古本屋を訪ねること。JR線 から京王線に乗り換えて明大前に行くには、新宿・渋谷・吉祥寺のいずれかで乗り 換えるのが早い。それなら吉祥寺に寄っていこうと思ったのだ。
 ううむ、我ながら緻密な計算に基づいた計画だ。決して行き当たりばったりじゃな いぞ!
 ということで、さっそく吉祥寺の駅に降り立った。

■吉祥寺散策記(前編)
 まずは駅の南口から出て、すぐそばの古本センターへ入る。はじめてきた時は、 ここの位置がわからなかったんだよなあ(古本日記には書かなかったのだが)。南 口を出て、そのまま右(西)に進むと、30秒くらいで店にたどり着く。ビルの1階をち ょっと入ったところで、通りに面した均一台などもないので、注意しないとわかりにく いかもしれないね。
 入ってすぐの100円均一を最初に物色。ここの100円均一は、「棚」というよりも、 「山」だな。そう表現したくなるほど、ごちゃごちゃと色々な本が置いてある。
 この山の中から、ビデオ『ギャグウォーズPart4』(1998年,エキスプレス) 発見。これは、若手お笑い芸人によるコントビデオ。登場するのはBOOMER、プリ ンプリン、アンタッチャブル、プラスドライバー、ファンキーモンキークリニック、エネ ルギー。解散したグループあり、現在人気のグループあり、まあ、色々ですね。そ れから、文庫本の棚で川本三郎『雑踏の社会学』(1987年,ちくま文庫)を見つ けて一緒に購入。これは東京の街についてのエッセイ集です。
 古本センターから井の頭通りに出て、通りを東に進む。すると、左手によみた屋 吉祥寺店が見える。よみた屋は阿佐ヶ谷にも店舗があったのだが、現在は吉祥寺 店一店になったようだ。しかしその分、吉祥寺の品揃えはますます充実しているよ うである。前に来たときも感じたが、この店は表の均一台から店内の各ジャンルの 棚まで密度が濃い。厳選された本がぎっしり詰まっている印象を受ける。店内を見 ていると、あっという間に一時間くらい経過してしまう。
 自分の腕時計を見て驚きつつ、下記の三冊を購入。
川上弘美『溺レる』(2002年,文春文庫)
 川上弘美は『センセイの鞄』(2001年,平凡社)を読んでから気になっている作 家。『溺レる』はつい最近文庫になった短編集だが買い逃していた。この機会に購 入。
雑誌『ur No.8 特集:マルチメディア』(1993年,ペヨトル工房)
 ペヨトル工房は、昨年解散してしまった出版社。美術・音楽・演劇・映画・幻想文 学などのジャンルの本を出版していた。しかし、俺がペヨトル工房について多少な りとも知識を得たのは、まさに解散せんとする頃であった。それからというもの本屋 でペヨトル工房の本を見つけると、なんとなく気になってしまう。特にこの『ur(ウ ル)』の他、『銀星倶楽部』『WAVE』などの雑誌が、気になるなあ。中身の文章とと もに、デザインやレイアウトも含めて、なんともいえないかっこよさがある。この本 は、1993年の時点でマルチメディアについてどんな風に語られていたのか興味が あって購入。
雑誌『ユリイカ 特集:G・K・チェスタトン』(1989年,青土社)
 チェスタトンといえば、「ブラウン神父シリーズ」をはじめとした推理小説で有名だ が、実はそれだけではなく、詩人・文芸評論家・思想家としても知られている。それ らの側面も含めて紹介しているようである。『ユリイカ』はちょっと自分には難しい雑 誌という印象があるが、拾い読みだけでもと思い購入。

 さて、よみた屋を出て、もう少し井の頭通りを東(西荻方向)に進む。すると、今度 は右手にブックステーション和が見えてくる。ブックステーションは、吉祥寺を中心 にチェーン店展開をしている古本屋。いわゆる新古本屋の雰囲気だが、本のジャ ンル分けなどはブックオフよりしっかりしている。自分にとって興味がある棚をじっく り見て行けるので、これはありがたい。
 ちょっと脱線するが、俺がブックオフを好きになれない一番の理由は、本をきち んと並べていないところだ。ジャンルの分け方もよくわからないし、そのジャンルご とに正しく本が並んでいないことが多い。特に単行本にはこの傾向がある。だか ら、目的もなく面白そうな本を探すためにはすべての棚をくまなく見る必要がある わけで、これは非常に疲れる。そして効率が悪い。だから、まあ100円均一だけ(あ とはせいぜい文庫の棚)を眺めて、「巨大100円均一棚」として利用している。
 それに比べれば、ジャンルごとにまとまっているブックステーションは好感が持て る。ここでは次の2冊を見つける。
雑誌『笑芸人 VOL.3 特集:東京コント王道伝承』(2000年,白夜書房)
 全体の約半分が特集で、伊東四郎と三宅裕二の二人を取り上げている。テレビ 東京の小特集もある。『笑芸人』は、なぜか今まで手に取ったことがなかった。この 機会に購入。
イッセー尾形『イッセー尾形の都市生活カタログPART2』(1992年,早川書 房)
 これはイッセー尾形の一人芝居の戯曲。イッセー尾形の一人芝居は、生で見た ことはないが、テレビで放映される舞台の録画中継はだいたい見るし、出版されて いる戯曲も『イッセー尾形のナマ本』シリーズ(小学館文庫)など、何冊か読んでい る。
 ということで未読のこの本を買ったのだが、ちょっと気になることが。この本を開 いた一番初めのページに、筆記体のアルファベットで「issei ogata」と書かれている のである。もしやサインだろうか? しかし、サイン本とはどこにも書いていないし、 値段も定価の半額程度。イッセー尾形のサインは見たことないからなあ。誰か鑑 定できる方いらっしゃったらご一報ください。まあ、中身に興味があったので、サイ ン本であろうがなかろうが構わないのだが。

■吉祥寺散策記(後編・古本はちょっと離れて)
 ブックステーションを出て、JR線の線路に向かって歩く。その途中で通りを少し入 ったところに、よみた屋の新しい店舗であるアーカイブという店がある、という情報 を仕入れていた。そこでちょっと足を伸ばしてみたのだが、シャッターが下りてい た。ううむ、臨時休業だろうか。ちょっと残念。
 そのまま歩いてJR線の高架下に到着。今度は吉祥寺駅に戻るようにして歩き、 途中のりぶる・りべろを見る。店の外の均一コーナー(このスペースだけでも小さめ の古本屋ができるのではないかと思う広さ)を中心に見るが、購入はなし。
 その隣の武蔵屋でラーメンを食べる。前に吉祥寺に来たときにも食べたなあ。な んだかくせになる味だ。とんこつスープに太目の麺がおいしい。
 その後、アンティークとオリジナルグッズの店、たご舎へ。実は1月20日をもって たご舎さんは吉祥寺の店舗から撤退してしまうのであった。というわけで、撤退前 に記念に、というわけではないがおじゃました次第。閉店セール中で、店内も来客 が多く、にぎわっていた。俺も小さなウクレレを購入。店主さんにごあいさつし、少し お話する。店主さんとの話の中で、たご舎が撤退した後に、ここに古本すうさい堂 が入ることを知る。
 なお、今後たご舎さんの販売はネット通販が中心になるとのこと。また店主のた ごもりのりこ氏のイラストレーターとしての活動にも注目です。たご舎のページから も、作品を見ることができますよ。

 たご舎を出て、さて、と考える。時間があれば、五日市街道沿いの藤井書店、駅 前の商店街サンロードのさかえ書店外口書店などの古本屋も覗きたいし、新刊 書店やヴィレッジ・ヴァンガードにも寄りたい。しかし、今日は吉祥寺で終わりでは ないのである。ということで、名残惜しいが駅に向かい、吉祥寺を後にする。

■明大前 〜 潜入! 古本すうさい堂 〜
 吉祥寺から京王井の頭線に乗り、渋谷方面を目指す。住宅街といった雰囲気の 風景の中、20分くらい電車に揺られていると、明大前に到着した。駅を出ると、あ たりは夕暮れ時。ここから古本すうさい堂を目指して歩きはじめる。
 ホームページにも、店舗は迷子になりやすいと書かれていたので、ページに掲載 されている地図と道案内を片手に、歩いていく。てくてく歩いて15分くらい経った頃、 まさに住宅街の真ん中、目の前には日大鶴ヶ丘高校という場所に、古本すうさい 堂を見つける。
 中に入り、まずはご主人にごあいさつ。それから、ご主人から本の話や、店の 話、吉祥寺への移転後の話などを聞きつつ、店内の棚を拝見。ホームページの目 録で欲しい本を探すのも楽しいが、やはり俺は店で実際に本を見て、手にとって選 ぶのが楽しいなあ。ということで、30分くらい店内をうろうろして、下記5冊を購入。
雑誌『中州通信2000年9月号 特集:60年代大特集/熱狂のスポーツ狂騒 曲』(リンドバーグ)
 最近気になる雑誌(ミニコミ)の『中州通信』。この号は、1960年代をスポーツ中 心に振り返る。プロ野球・ボクシング・プロレスなど、そして東京オリンピックも取り 上げている。他にもクレージーキャッツやグループ・サウンズなどの記事もある。
唐沢俊一『トンデモ一行知識の逆襲』(2000年,大和書房)
 これは『トンデモ一行知識の世界』(2002年,ちくま文庫)の続編に当たる本。最 近、氏の一行知識関連の本は気になるなあ。見つけては買っています。
赤瀬川原平『優柔不断術』(1999年,毎日新聞社)
 10年の構想を経て書かれた、優柔不断に関するエッセイ。連載のまとめではな く、書き下ろしというのがすごい。
チチ松村『ゴミを宝に!』(1999年,光文社)
 チチ松村氏は、ギター・デュオ、ゴンチチのメンバー。ゴンチチとしての音楽活動 とともに、エッセイストとしても知られている。この本では、氏が街中に捨てられてい たさまざまな物について語る。役に立ちそうな物からまったく役に立たなさそうな物 まで、実に色々なものを見つけている。面白そう。
伊集院光・みうらじゅん・山田五郎『ザ・会議室』(2001年,光進社)
 2000年4月〜12月放送された『CX NUDE DV』(フジテレビ・土曜深夜)内の「ザ・ 会議室」コーナーを本にしたもの。この番組は、見た記憶がないなあ。内容は、「鋭 い視点から日本の未来像を語り、(頼まれもしないのに)一方的に社会に提言して いく極秘プロジェクト」とのこと。しかし、著者に名を連ねる3人がしゃべるんだから、 まともな内容になりようがない。これは期待できる。すうさい堂ご主人の推薦もあ り、購入。

 以上を購入し、「吉祥寺でもよろしくお願いします」といったあいさつをして、すうさ い堂、そして明大前を後にする。明大前にあるうちに、いつか訪れたいと思ってい たすうさい堂に来ることができて、よかったよかった。吉祥寺移転後も、是非おじゃ ましよう。

■まとめ
 帰りは、明大前から京王線で新宿を経由して帰る。京王井の頭線で渋谷まで出 ようかとも思ったが、比較して帰るのに近い新宿へ。新宿では紀伊国屋書店の新 宿南店に寄り道。これだけ本を買っておいてまだ本を見るのかよ、と我ながら思 う。新刊を中心に物色するが、購入はなし。
 そういえば、タカシマヤタイムズスクエアのまわりには電飾で彩られたオブジェが 並んでいて、なかなかきれいだった。一人で古本を背負ったまま見ていたら、ちょ っと悲しくなったけれど。
 というわけで、こうして今年初めの古本日記は幕を閉じたのであった。まさに「お もしろうて、やがてかなしき古本集め」とでもいったところですな(最後にいつものよ うに意味不明の言葉が出たね)。



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