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2003.1.17(金) 年の初めの神保町 〜 おせちもいいけど古本もね の巻  (2003.2.9掲載)

 タイトルはうまいこと言っているようで意味不明だな、我ながら。

 さて。比較的暖かくて天気のよい1月17日、俺は朝から病院にいた。健康診断だ ったのである。しかしまあ。それはどうでもいい話。大事なのはここから。健康診断 の会場は、都営三田線の春日駅のそばだった。春日駅は、水道橋へ一駅、神保 町へも二駅の場所である。そして健康診断は午前中で終了。そうなると、そのまま 帰るわけにはいかない。というわけで、今年最初の神保町めぐりとなったのであ る。

 今回は、水道橋駅から白山通りを南下していくことにする。ということで、まずは 春日から水道橋まで歩いて行く。この辺りには古本屋はないが、天気もいいし、ぷ らぷらと歩くだけでもなんとなく楽しい。後楽園ゆうえんちや東京ドームを横目に見 ながら、10分くらい歩くと水道橋駅に到着。ここから総武線の高架線をくぐりぬけ て、いよいよ古本屋街に入る。地下鉄神保町駅を目指すように南へと歩いていく。
 まずは丸沼書店へ立ち寄る。ここは法律・経済関係の新刊・古書を扱う店。近く にある日本大学の経済学部の教科書などもそろえている。俺は中にある本とは縁 がないが、表の均一台は文庫や新書が中心なので通りかかると覗いている。今日 も2冊を購入。
・出久根達郎『朝茶と一冊』(2000年,文春文庫)
 直木賞作家で、古書店主でもある氏の本にまつわるエッセイ集。これまで氏の本 は読んだことがなかったし、本にまつわる本はやはり気になるので、この機会にと 思い購入。
・著作権法令研究会編著『著作権法ハンドブック第四版』(2001年,著作権情 報センター)
 「なぜこんな本を?」と思うかもしれないが、立ち読みして「著作権に関する一問 一答」の部分に興味を持ったのである。例えば、「ゴーストライターが著名人の名を 使って書いた作品の著作者、あるいは著作権者は誰になるのですか」とか「著名な 作家や画家の作風や画風をまねすることは、権利を侵害することになるのでしょう か。また、既存の小説の主人公の名前や性格を利用して、新しい小説を創作する ことはどうでしょうか」とかいった質問と、それに対する条文や判例を元にした回答 が書かれている。ここだけ拾い読みするだけでも面白そうだと思い、購入。それ に、ホームページをつくっている人間としては、多少は著作権を意識しないといけな いからねえ。

 丸沼書店のの隣の有文堂書店も覗く。ここは本当に小さな店で、ごちゃごちゃと 本が並んでいる。ここでは店頭の均一台から森村稔『クリエイティブ志願』(1986 年,ちくま文庫)を見つける。ビジネスマンのものの考え方、文章の書き方、本の 読み方についてのエッセイ集。俺の好きなちくま文庫だし、内容を立ち読みして面 白そうだったので購入。なお著者は当時、博報堂を経て日本リクルートセンターに 勤務するビジネスマン。

 健康診断のため朝飯を抜いているので、途中で少し早めの昼食にして魚がし日 本一のランチを食べる。ねぎとろ丼。初めて食べたが、なかなかおいしい。味・量 に比べて値段も手ごろで、お得な感じがする。
 休憩をはさんで、どんどん南に進んでいく。続いては英山堂書店へ。ここは小説 の文庫・単行本が多い。ここで都筑道夫『危険冒険大犯罪』(1985年,角川文 庫)を購入。都筑道夫の文庫本は、なるべく見つけたら購入しておきたいと思って いる。
 英山堂書店の隣、日本書房も覗くが、ここでは購入はなし。ここは国文学関係の 本が多く、店頭にも国文学関係の雑誌や日本語に関する新書などが並ぶ。
 日本書房の隣には、かつて研数学館があったのだが、倒産してしまったため今 は大正大学になっている。この道を通るのは久しぶりだったので、「そういえば変 わったんだなあ」と感慨深く思った。
 それから山口書店(店頭に並ぶ大学受験参考書、いわゆる赤本が目立つ)や 本書店(店頭のゾッキ本の他、様々な本が並ぶ)を見る。奥野かるた店にも立ち寄 ってみる。ここは、名前の通りカルタや、様々なボードゲーム・カードゲーム、更に はパズルなどの知育用おもちゃを販売している。2階には古本のコーナーもあり、 おもちゃやゲームに関するジャンルを中心とした本が並ぶ。
 これらの店では購入はなかったが、いずれの店も久しぶりだったので、比較的時 間をかけて見た。
 そうこうするうち、神保町の交差点に到着する。ここから、まずは古書展(下町書 友会)が開かれている日本教育会館へ向かう。日本教育会館での古書展は、金 曜・土曜の2日間行われる。そのため、金曜日の方がいい本が多いといわれてい る。訪れる人も、金曜日の方が気合が入っている(ように見える)。そんな中に混じ って、俺も本を探す。ちょっと数は少ないが、なかなか変わった下記の3冊を見つ け、購入。
・小林賢太郎『小林賢太郎戯曲集』(2002年,幻冬舎)
 小林賢太郎というのは、コント中心のお笑いコンビ、ラーメンズのひとり。この本 はラーメンズのコントの台本を集めたもの。前から彼らのコントはテレビで見ていて 好きだったので、購入。
・豊沢豊雄『頭脳からアイデアを引き出す法』(1959年,竜南書房)
 すごいタイトルだな。内容も、タイトルに負けないくらいの直球勝負。アイデアをも とに発明し、一攫千金を狙おうという本。本の最初にある「成功と富を生む七力条」 を紹介しよう。
 1 具体的な目的をはっきりと書け。ただぼんやりと成功しょう、金を儲けようなど と思っていて成功した人は一人もない。
 2 必成の信念にもえよ。信念のないところに成功はない。
 3 成功までの期限をきれ。
 4 ただちに実行にうつれ、拙速を尊ぶ。
 5 目的にむかつて(原文ママ)、あらゆる角度からアイデアをわかせ。毎日、名 案を生め。アイデアは信念と勇気と快感と能率を生む.
 6 静かに急げ。
 7 最後の一押しまで、がんばれ。
 どうですか。怪しすぎて笑ってしまう。安かったし、ネタにはなりそうだったので購 入。
・三G会『三Gが行く 喜寿三人組のユーモア放談』(1998年,法研)
 これもまあ訳わからんタイトルだが。喜寿をむかえたじいさんたちが、色々な場所 を散歩しながらあれこれと話した内容を自筆の漫画つきで紹介する。ユーモア随 筆といったところか。なんともいえない味のある本だなあ。ちなみに、出版元の「法 研」について調べてみたら、医療・福祉に関する本が専門の出版社でした。俺は知 らなくて、てっきり有斐閣みたいな法律の本を出している出版社だと思っていた。 「お堅い出版社も、時にはこういう本を出すんだねえ」などと、勝手に自分で納得し ていた。
 以上3冊を持って、古書展を出る。
 その後はおなじみの靖国通り、すずらん通り沿いの本屋を見てまわる。@ワンダ 日本特価書籍中野書店漫画部ブックパワーRB岩波ブックセンター古書 かんたんむ小宮山書店、などなど。しかし、古書展までで気力と体力を使いすぎ たためか、ややバテ気味になり、流すように本を眺めていく感じになる。それでも 肆アクセス雑誌『中洲通信2000年6月号 特集:今こそ復活のとき』(リンド バーグ)を購入。現在書肆アクセスの店頭には『中洲通信』のバックナンバーが並 んでいるので、手にとって中身を見たい人は来店することをおすすめします。
 それから、リニューアルした東京堂書店にも行ってみる。雰囲気はだいぶ変わっ ている。かつて入口そばにあったエスカレーターがなくなっており、フロア数も4フロ アから3フロアに凝縮されている。個人的には、4階にたくさん並んでいたサブカル チャー関連本の売り場が縮小されてしまったのは残念だが、特徴のある新刊台は 変わらず魅力があるし、ふるほん文庫やさんのコーナーも2階に健在だし、やはり 神保町に来たら立ち寄りたい店のひとつでる。ここで坪内祐三『三茶日記』 (2001年,本の雑誌社)を購入。
 その後、三省堂書店書泉ブックセンターをちょこっと眺めて帰宅。本当は洋書 タトルだとかヴィレッジ・ヴァンガードお茶の水だとかもまわりたかったのだが、疲労 には勝てずにまた今度とする。

 しかしまあ、久々に(といっても1ヶ月ぶりだが)神田神保町をまわることができ て、なかなか充実した一日であった。




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