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2002.12.21(土) 雨の神保町、それでも俺は行く の巻 (2003.1.1掲載)

 その日は久々の土曜日の休みだったが、残念なことに空は雨模様。東京は、朝 から厳しい寒さに見舞われていた。古本屋めぐりをする際、雨の日は鬼門だ。ま ず、店の外にある均一台・均一棚は、軒並み中止になる。もし置かれているとして も、ビニールカバーが被せられた非常に見にくい状態になってしまう。それに、店に 出入りする際に傘を開けたり閉じたり、傘をビニールを入れて店内に持ち込んだり するのは、意外と手間になる。そもそも傘を持って店内に入ると、必然的に片手は 埋まってしまうわけで、本を見る際には面倒だ。と、不利な点ばかりが浮かんでく る。
 しかし、そこで尻込みしていてはいけないのだ! 均一台が覗けなければ、いつ もよりじっくりと店内の本を見ればよいのだし、神田神保町では古書展(古本市)も やっている。あそこは屋内だし、荷物も預かってもらえるので天候は関係ない。な んだったら古書展だけ行って帰ってこよう、というくらいの気持ちで、俺は家を出発 したのであった。ううむ、いつにもまして長い前ふりだ。

■まずは古書展へ
 と、いうことで、俺はいつものように都営地下鉄新宿線の神保町駅に降り立っ た。まずは日本教育会館へ。今回開かれているのは新興展。俺は後日唐沢俊一 氏のweb日記(12/21分)を読んで知ったのだが、この会は和本中心の会であっ た。唐沢氏が「私ごときが入れるようなものではない」と書いているくらいなので、ま あ俺なんて恐れ多いくらいの場なわけだ。しかし、俺はそんなこととはつゆ知らず、 「うーん、ちょっと自分の好みとジャンルが違うなあ」などとのんきに考えつつ「もうこ こで欲しい本が見つからなければ家に帰るんだ」というくらいの気持ちで棚を見て いた。しかし、古書がほとんどとはいえ、一部一般的な古本もある。俺はその一般 書を集中して見ることができるわけで、場合によってはこれはこれでよかったのか もしれない。だからというわけではないが、下記5冊を購入。
●天野祐吉編『日本の名随筆 別冊23 広告』(1993年,作品社)
 『日本の名随筆』シリーズは、漢字一文字の単語にまつわる本巻100冊、漢字二 文字の単語にまつわる別巻100冊のシリーズ。集めているわけではないが、興味 のあるテーマのものを見つけた場合は読んでいる。リンク先に載っている収録作 品を見てもらえれば、なかなか面白そうだと思ってもらえるのではなかろうか。
●千々岩英彰『色を心で視る』(1984年,福村出版)
 著者は心理学者。この本は、色彩と心理に関する話題を集めたもの。ただ、「は じめに」に「本書は、色に関する啓蒙書でもなければ、学術書でもない。そのどちら にも分類できないまったく自由の書である」(p.1)とあるので、それほど硬い本ではな さそうだ。各章のタイトルだけ挙げておくと、「T色を心で視る U色の効果の心理  V色の好みの心理 W色の流行の心理」。なかなか面白そうである。
山口昌男監修『説き語り記号論』(1981年,日本ブリタニカ)
 なんだか、いつもと違った傾向の本が続きますが。これでも山口昌男の著作は 学生時代に何冊か読んだ。今でも気になるんだよなあ。これは山口の他、池上嘉 彦・佐藤信夫・今村仁司・多木浩二などの各氏による、記号論の講義録である。と いっても大学の講義ではなく、「朝日カルチャーセンターの講座『記号としての世 界』(昭和五五年十月一日より十二月三日までの全十回)の記録に加筆訂正した もの」(p.365)である。論文集よりも理解しやすそうだし、講師陣に魅力があったの で購入。
●永田義直編著『古典落語事典』(1988年,緑木出版)
 落語の演目の解説と、一部寄席・落語で使われる言葉を解説した本。ちょっと勉 強してみたいと思いまして。すべての話のあらすじが載っているので、単純に読み 物としても面白そう。
●杉浦日向子『入浴の女王』(1995年,講談社)
 杉浦日向子が、日本各地の温泉・銭湯をまわった様子をつづったエッセイ。ぱら ぱらと立ち読みしてみて、面白そうだったので購入。もちろん、杉浦先生がどういう 人かくらいは俺でも知っていますよ。

 以上5冊を持って、古書展を出る。はじめは「古書展だけでも見られれば」と思っ ていたのだが、一度本を買うと勢いがついてしまって、「よし、いつものコースだけ は回っていこう」と決意する。降りしきる雨もものかは、本日も神保町珍道中のはじ まりー、はじまりー。

■いつものコースを回っています
 ということで、靖国通りを神保町交差点に向かって歩く。波多野書店へ入る。なん といつもは店頭に置いてある台が、店内に鎮座している。更に店内はいつもどおり の本の山。ひええ、これはすごい。人とすれ違うこともままならない状態で棚を眺め るが、眺めるにとどまり、購入はなし。しかしここは、入って右の本・書店に関する 本や広告に関する本の棚は、個人的にはいつも面白いと思います。
 波多野書店を出て@ワンダーへ。ここの均一台も今日は出ていない。しかし、店 に入ってすぐのところにちょっとしたワゴンがあり、雑誌を中心に並んでいる。とり あえず覗きこんで、ここで雑誌を2冊見つける。
●雑誌『ラピタ 2000年4月号 特集:宝物収集術』(小学館)
●雑誌『ラピタ 2000年6月号 特集:決定! Made in JAPAN大賞』(小学 館)
 『ラピタ』は、30〜40代の男性が読むような「大人の趣味の雑誌」である。俺には ちょっと早いのだが、特集に惹かれて購入。『宝物収集術』は、自分のコレクション を限られたスペースにいかに保管するか。色々なコレクターの部屋や収納グッズ が紹介され、真似したくなるようなアイデアがいくつもあった。俺はこの雑誌を読ん だ1週間後に、自分の部屋を充実させるために東急ハンズに行ってしまいました よ。『Made in JAPAN大賞』は、20世紀日本で発明された商品・技術のベスト100。 ちなみにベスト3だけでも挙げておくと、選ばれたのは、
 1位 カップヌードル(日清食品)
 2位 ウォークマンTPS-L2(ソニー)
 3位 新幹線(JRグループ)
 といった商品。ううむ、これもなかなか読み応えがある。
 これらで満足してしまったわけではないが、@ワンダー、3階の@ワンダー3とも店 内での購入はなし。そのまま靖国通りを進み、ヴィンテージ2階の雑誌コーナーを 冷やかした後、日本特価書籍へ。店内で、北原尚彦『キテレツ古本漂流記』 (1998年,青弓社)のゾッキ本(新刊の特価本)を見つけ、購入。寡聞にして知ら なかったが、著者は作家であり、コナン・ドイルの研究者としても知られているよう だ。この本は、著者が購入した変な古本を、つっこみを入れつつ紹介する本。古本 関係の本なら、まあ買ってみるか、くらいの軽い気持ちで購入。読みましたがなか なか面白かったですよ。
 その後、RBワンダー神田古書センター中野書店漫画部などを見て回るが、 購入はなし。そのまま、昼食を神田古書センター内のカレー屋、ボンディで食べる ことにする。古書センターの2階にカレー屋があるのですよ。知っている人には無 用でしょうが、ここは場所をちょっと説明しておこう。はじめての人は戸惑うかもしれ ないので。ボンディに行くには、古書センター2階の中野書店漫画部を右奥に突っ 切りましょう。もしくは、1階の高山本店の右奥の出口(裏口のような部分)から出 て、階段を上りましょう。店自体は見ればすぐにわかるようになっているので、場所 さえわかっていれば大丈夫だろう。
 ここのカレー、値段はいずれも1500円前後だが、なかなかおいしい。好みは分か れると思うが、あまり辛過ぎず、濃厚な欧風カレーです。また、カレーに茹でたじゃ がいもがついてくるのも、特に寒い冬はありがたい。

■後半戦へ
 カレーとじゃがいもで温まって、再び書店めぐりを開始。
 古書センターのすぐそばの新刊書店、岩波ブックセンターで、下記2冊を見つけ て購入。
●綱島理友『綱島探書堂』(2001年,実業之日本社)
 最近燃朗お気に入りの、綱島理友の古本・古本屋にまつわるエッセイ集。前から 気になってはいたが、なぜか手が出なかった。立ち読みしたところなかなか面白そ うなので購入。
●長山靖生『怪獣はなぜ日本を襲うのか?』(2002年,筑摩書房)
 つい最近出たばかりの新刊。著者は古典SFを中心に、近代日本の文学・思想の 研究者。サブカルチャーにも精通している。この本は怪獣・幻想文学・怪奇小説・ 偽書などに関する論考を集めたもの。登場するのは、渋江保・村井弦斎・小酒井 不木・小栗虫太郎に山田風太郎といった人々、さらにはゴジラ・仮面ライダーも取 り上げられる。
 それほど柔らかい本ではないが、内容に興味を持って購入。
 岩波ブックセンターを出ると、神保町交差点に差し掛かる。ここでいつものように すずらん通りに入る。やはりすずらん通りにある各書店も、店外の均一棚、ワゴン はしまわれているか、ビニールで覆われてしまっている。例えば書肆アクセス は、店頭にミニコミ『LB中州通信』の並ぶラックがあり非常に興味をそそられたの だが、ここにも透明ビニールの覆いが掛けられて、気軽に手にとって見られなかっ た。ううむ、惜しい。それでも、『LB中州通信 2000年11月号 80年代大特集』 (リンドバーグ)を購入。漫才ブームを中心とした1980年代日本を振り返る。これ はもう俺の趣味にどんぴしゃりな内容ですね。
 しかし、かんたんむなどは店頭のワゴンや4冊まで100円の文庫本は置いていな かったものの、店の外壁の均一棚はそのままだった。上にひさしがあるとはいえ、 これはちょっとすごいなあ。しかし、今日は店頭・店内とも購入はせず、斜め向かい にある中山書店へ。ここで小沢忠恭撮影・安西水丸文『東京美女1・2』(2000 年,モッツ出版)という写真集を購入。と、書くと、にやにやしながら「へええ」と言う 人もいるであろう。中山書店といえば、棚には一面人文系の古書が並ぶが、その 下の平台にはアダルト雑誌や写真集が並ぶという不思議な店である。そこで写真 集を買ったなどと言おうものなら。しかし、そうではない。この本は、女優さんが東 京の様々な街(町)を訪れた様子を撮影した写真を集めたもの。登場するのは、佐 藤藍子・鶴田真由・森高千里・仲間由紀恵・ともさかりえ、などなど。1冊3000円以 上するのだが、2冊セットで驚くほど安かったので購入。思わぬ収穫であった。
 そのまますずらん通りを東に歩くと、東京堂書店がリニューアルオープン直前だ った。そのため東京堂の仮店舗が臨時閉店していたのは残念だったが、リニュー アルは楽しみだ。
 ということで、その他の主な新刊書店の三省堂神田本店書泉ブックセンター・書 泉グランデに立ち寄る。書泉グランデで雑誌『MSX MAGAZINE 永久保存版』 (2002年,アスキー)を購入。付録はWindows用のMSXエミュレータ入りCD- ROM。つまりこのCDをパソコンにインストールすると、WindowsパソコンでMSXがで きるわけですな。中学生の頃にMSXを触っていた自分としては、懐かしいなあ。こ れは見つけたら買おうと思っていたので、迷わずに購入。

 その後、地下鉄神保町駅へ戻るように靖国通りを西へ歩く。洋書タトルなどを覗 きながら歩くが、雨もあって、軽く見てまわるとどまり、購入はなし。

 と、いうことで、2002年最後の神保町めぐりはかくのごとく終了したのであった。




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