「古本日記」目次へ戻る
2002.11.3(日) 神田古本まつりレポート 〜 人は本に出合い、俺も本に 出合う(相当意味不明)の巻 〜

 今年もやってきた「神田古本まつり」。やはり、いつも以上に気持ちが高まる。ち なみに、「古本まつり」とは、10月30日から11月4日まで神田神保町で行われた催し の総称。実際は個々の催しにも様々な名称があるのだが、今回はそれぞれの催し も含めて「古本まつり」と呼ぶことにする。

まずは靖国通り(西側)
 地下鉄神保町の改札を抜け、地上へと上がる。最近いつも使っている、一番西 のA1出口を出ると、いきなり古本まつりの雰囲気が漂う。靖国通り沿いの歩道 に、各店舗がワゴンを出店し、特価本を販売している。これは今年からの試み。町 全体が盛り上がっている印象を受ける。さっそくワゴンを覗く。お、爆笑問題『爆笑 問題のザ・コラム』(2001,講談社)を発見。購入。テレビ番組『秘密の爆笑大問 題』(NTV系)の1コーナーを活字化したもの。爆笑問題の大田光がその時々の話 題についてニュースキャスターらしくしゃべり、田中が時々突っ込みを入れる。木村 太郎や筑紫哲也のパロディだな。
 なんだかんだいって、爆笑問題の本は気になる。

 今回は、各店のワゴンが次々と並んでいて、ワゴンを見て歩くだけでも大変そう だ。しかし、各店とも掘り出し物を並べていそうだし、今回はとにかくじっくり見ていく ことにする。
 隣のワゴンは、波多野書店が出している。ここのように靖国通り沿いの店が出店 している場合もあれば、神保町のその他の地区の店や、神保町以外の店が出店 している場合もあるようだ。ここでは山田俊雄『ことばの履歴』(1991,岩波新書赤 版)を購入。言葉に関する雑学エッセイ。最近こうした本が流行しているようだが、 俺は昔から好きである。波多野書店は店内も覗く。ここはごちゃごちゃとしている が、ジャンルごとに本がまとまっていて、「おっ」と思う本も多い。しかし、今回は購 入はなし。

 靖国通りを東へ東へと進む。すぐに@ワンダーが見える。まずは店内を回る。ミ ステリー・SF小説・幻想文学の単行本・文庫本(絶版のものも多数含む)や、映画 館系の本が多くて興味を惹かれるのだが、それにあった値づけがされているの で、気軽に買うにはちょっと厳しい。でも、本当に欲しい人は納得して買える値段だ と思う。3階のワンダー3でも雑誌や芸能。スポーツ関係の本を見るが、購入はな し。
 一旦外に出て、ワゴンを覗く。@ワンダーは、普段から店頭の特価本の棚が多い のだが、今回はそれに加えてワゴンもあり、見ごたえがある。じっくり探して次の2 冊を購入。
安田均『安田均のFANTASY GAME FILE』(1996,冨士見書房)
 安田均氏は、ゲーム制作や小説の創作・翻訳を行うグループSNEの代表であ る。氏が1988年から1993年まで雑誌『ドラゴンマガジン』(富士見書房)に連載した 海外ゲームの紹介をまとめたもの。コンピュータゲームもあれば、トーキングRPG やカードゲームもある。俺は最近あまりテレビゲームで遊ぶこともないのだが、相 変わらずゲームに関する本を読むのは好きだなあ。
磯田和一『東京[23区]でてくちぶ』(1994,東京創元社)
 東京23区にある建物などをイラストと写真で紹介した本。イラストに味があって、 なんとなく気になったので購入。こういう本を読むと散歩に行きたくなる。

 他にも、『図説 社会科年鑑』(1958年,小学館)などという非常に大きな本も見つ ける。多分、当時の小学校の図書館や学級文庫に並んだ資料集の1冊なのだろ う。面白そうだとは思ったのだが、あまりの大きさと「買っても読まないだろう、これ は」という気持ちに邪魔されて購入はしなかった。
 @ワンダーの隣のワゴンは、火守文庫が出店しているようだ。ここはかつて吉祥 寺に店舗があり、現在はインターネットで販売をしている。ここで井出薫写真集『17 才/セブンティーン』(1994,コンパス)を発見。ううむ、知っている人はいるだろう か、井出薫。1990年代前半に活躍した女優さんです。結婚し、現在は引退してい る。「文學ト云フ事」(1994年,フジテレビ / 関西テレビ)に出演していたのを見て、 ファンになったんだ。「文學ト云フ事」とは、文学作品の予告編の映像と、解説から なる知的な深夜番組であった。彼女は、明治・大正時代の文学作品に出てきそう な雰囲気があった。
 そんな懐かしさもあり、購入。

 それから、出店されているワゴンや、店の中を覗きつつ歩く。ブンケン・ロックサイ の店頭では渡辺紳一郎『西洋語源物語』(1974,旺文社文庫)を購入。これも言 葉に関する雑学本だな。この店の中は洋邦の音楽関係の雑誌が並び、女性客も 多い。
 そうこうするうち、神田古書センターへたどり着く。ここの7階にあるブンケンショイ は、ブンケン・ロックサイドの姉妹店。女性アイドル関係の品揃えが豊富。ちなみ に両店の店主さんは姉妹。そういう意味でも姉妹店。
 階段を上り2階の中野書店漫画部へ。なんと、一部を除いて割引のサービスを 行っている。神田古本まつり記念ということらしい。この機会にと思い、下記の2冊 を購入。
手塚治虫『手塚治虫ランド』(1977,大和書房)
 ショートショート・エッセイなど、文章中心の本。SFに関するものが多いような印象 を受けた。
石ノ森章太郎『墨汁一滴』(2000,H2O)
 「墨汁一滴」というのは、石ノ森章太郎が1960年代に発行していた肉筆回覧誌。 石ノ森氏が高校生の頃からトキワ荘に入ってからの時期に当たる。この本は、そ の「墨汁一滴」から石ノ森氏自身が書いたページを抜粋して集めたもの。限定3000 部発行の1冊。10代の頃からこれだけの情熱を持って行動していたというのはすご いなあ。

 本日は他のフロアへは立ち寄らず、古書センターを出る。すると、神田古本まつ りのメインともいえる青空掘り出し市の会場に到着する。ここの熱気はすごい。古 本まつりらしさをもっとも感じさせる場面だろう。
 しかし、俺は敢えてここは流すように見る。理由は、とにかく人が多すぎてゆっくり 本が見られないこと。そして、並んでいる本のジャンルなどが把握できないこと。た だそれでも、なにかあるのではないかと期待してしまうのが古本好き。ということ で、簡単に見て歩く。そのまま見て歩くとさくら通りに入る。

さくら通り ―― 靖国通りとはまた違った雰囲気が漂う
 こちらでは神保町ブックフェスティバルが行われている。こちらは古本ではなく、 書店・出版社による新本特価セール、周辺の商店による出店などが、さくら通りか らすずらん通りにかけて並ぶ。もちろん、両通りにも古本屋はあるので、それらが 一緒になってにぎやかさを感じさせる。ここを歩いて、次の2冊を購入。
『スポーツ20世紀@ サッカー 英雄たちの世紀』(2000,ベースボールマガジン 社)
『スポーツ20世紀E サッカー 名勝負の記録』(2000,ベースボールマガジン社)
 ベースボールマガジン社が出した『スポーツ20世紀』シリーズから、サッカーを取 り上げた2冊である。サッカーに関する本は何冊か読んでいるが、この2冊はA4 サイズという大判であり、かつての選手や試合の写真が多く掲載されているので購 入。

 そして、さくら通り沿いの古本屋、ブックパワーRB本店の店頭でも、富田勝『だん ぜんタブチくん!』(1983,二見書房)を購入。「タブチくん」とは、もちろん田淵幸一 氏である。この本は、田淵氏の法政大学時代の同期生で、南海ホークスなどで活 躍した富田勝が、学生時代・プロに入ってからの様々なエピソードを紹介したも の。当時の法政大学野球部といえば山本浩二・星野仙一・江本孟紀など、そうそう たる面子がそろっていたわけで、これは面白そうだと思ったわけだ。

さくら通りからすずらん通りへ
 そのままさくら通りを東に進み、すずらん通りへ。靖国通りはあとで回ることにし、 ブックフェスティバルの出店とすずらん通りの古本屋を見ていくことにする。日曜日 は、通常は神保町の古本屋は休みが多い。しかし今日は、ほとんどが営業してい る。そんな中を歩いて、まずブックフェスティバルで下記3冊を見つける。
山下武『大正テレビ寄席の芸人たち』(2001,東京堂出版)
 かつて、「大正テレビ寄席」というテレビ番組があった、らしい。俺の生まれるずっ と前の話、昭和30年代後半から40年代にかけての頃だ。この番組に興味を持った のは、司会を務めていた牧伸二氏の『牧伸二のウクレレ人生』(1995年,みくに出 版)を読んでから。そこでこの本を見つけてしまっては、買わずにはいられまい。当 時番組に出演していた芸人たちのエピソードを集めたものである。
ナポレオンズ『超カンタンおもしろマジック』(1997,日本文芸社)
 「こんな本を買ってるのか」とお思いの方もいるでしょうが、買っているのです。別 にここでネタを仕入れて、どこかで人気者になろうってんじゃないよ。手品のテクニ ックを知りたいと思ったわけで。まあしかし、しばらくは俺の周りの人は俺が仕入れ た手品を披露されるであろう。
『日本特撮・幻想映画全集』(1997,勁文社)
 最近、古本屋では勁文社のゾッキ本をよく見かける。これもその1冊だろう。戦後 すぐの1948年から、1996年までの日本の怪獣映画・怪奇映画・SF映画などを網羅 したもの、メジャーなものから、カルトなものまでそろっている。これはなかなか資 料的価値がある。こういう本を出していた勁文社が倒産してしまったのは、惜しい ことだ。

 ブックフェアのワゴンではなかなかの収穫があった。すずらん通りでは、地方出 版社の本専門の新刊書店書肆アクセスや、ブックス湘南などの古本屋も見て回る が、購入は古書かんたんむでの下記2冊にとどまる。
南伸坊『5年1昔』(1990,小学館)
 1984年から1990年までのその時々の流行語について、南伸坊が色々と語るエッ セイ。今では死後となっている言葉も多く、なんともいえない古さが面白い。
小出義雄『君ならできる』(2000,幻冬舎)
 高橋尚子を育てた小出義雄監督によるエッセイ。シドニーオリンピック直前に出 版され、高橋選手が金メダルを獲得したことでずいぶん売れた記憶がある。当時 だったら絶対読む気がしなかっただろうが、今なら読んでみようかなと思う。時間が たって古本になると、面白そうに思える本というのもある。

 ブックフェスティバルのワゴンを覗きつつ、途中そば屋でカツ丼を食べつつ、東京 堂書店へ到着。1階の新刊を見てから、2階のふるほん文庫やさんのコーナーを 除く。横田順彌『ヨコジュンのわんだあブック』(1985,角川文庫)を見つけ、購入。 これはエッセイ集ですな。
 ブックフェスティバルは、三省堂の前あたりで終点となる。そのまま青空古本市の 三省堂会場を覗く。これは、三省堂1階のイベントスペースを使った古本屋の出店 である。夕方になり比較的人出も落ち着いたようなので、少し時間をかけて棚を眺 める。しかし、購入はなし。三省堂の新刊も見るが、惹かれるものはなかった。

三省堂から靖国通りへ ―― ラストスパート
 三省堂を出て、再び靖国通りへ。こちらにも、古本屋の特設ワゴンが並んでい る。終了まであまり時間がない中、下記2点を見つけて購入。
横田順彌『メビウスの8つの謎』(1993,廣済堂文庫)
荒俣宏『開化異国助っ人奮戦記』(1991,小学館)
 横田氏の本は、ミステリーの短編集。荒俣氏の本は、明治時代に日本で活躍し た外国人の紹介。

 靖国通りを神保町駅に戻るようにして歩き、洋書タトル田村書店小宮山書店 の店頭も覗くが、ここでは購入はなし。小宮山書店が店のそばでいつもやっている ガレージセールが片付け始めていて見られなかったのは惜しかった。

 ということで、今回はなかなか充実した神保町めぐりであった。本当はもっといき たい店もあったし、日本教育会館(毎週末に古書展が行われる)での古書特選即 売会も見たかったが、まあわがままを言ったらきりがないということで、本日はこれ にて終了。
 ちなみに、購入した本の重さは約8Kgでした。ああ。



「古本日記」目次へ戻る

inserted by FC2 system