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2002.9.21(土) 中央線珍道中その4 吉祥寺、そしてみたび西荻窪

吉祥寺初上陸

 思えば6月の高円寺・阿佐ヶ谷にはじまった中央線沿線の古本屋めぐり。その後 荻窪・西荻窪とまわってきて、今回は一応の区切りとして未踏の地吉祥寺を訪ねる ことにした。

 例によって新宿を経由して中央線で吉祥寺へ。さすが3連休の初日、人が多くに ぎわっている。さっそく、駅のそばの吉祥寺古本センターへ。それほど大きな店で はなく、店内はごちゃごちゃした感じだが、棚は単行本だけでなく文庫本も大まか な分類がされていて、見やすくなっている。店内入って右のショーケースの中には 珍しいマンガや小説が並んでいたりもして、更にその前は100円均一のコーナー で本や雑誌がぼんぼん置かれている。なんというか、いかにも駅前の古本屋とい った感じで、なかなかいい雰囲気をかもし出している。
 それぞれの棚を一通り眺めて、積まれていた雑誌の山から『STUDIO VOICE』 (1993年6月号)を購入。特集は「ニュー・テキスト スタジオ・ボイス副読本300冊」。 ブックガイドです。中を少し読んでなんとなく惹かれたので購入。

 古本センターから井の頭通りに出て、そのまま通りを新宿方面に歩くと、よみた が見えてくる。ここは阿佐ヶ谷にも店舗を持っていて、そちらはかつて訪ねたこと がある。阿佐ヶ谷もいい店だが、こちらも広くていい本がそろっている。自分があま り興味のないジャンルの棚(歴史や自然科学など)も、思わず見入ってしまう。そん な風にしていたら、あっという間に1時間半が過ぎていた。ううむ、我ながらすごい。
 よみた屋で以下の4冊を購入。
かんべむさし『むさし走査線』(1981年,徳間文庫)。SF作家かんべむさしのエッ セイ集。俺はなぜか氏の本はエッセイ集しか読んでいないんだよなあ。積ん読にな っているショートショート集もあるのだが。
加藤主税『世紀末死語辞典』(1997年,中央公論社)。新刊で出た頃に見かけて、 「なんだこりゃ?」と思った記憶のある本。しかし、今となってはいい味を出してい る。べらぼうに安かったし、拾い読みしていくと面白そうなので購入。
綱島理友『マスコット物語』(1996年,スターツ出版)。広告に登場するキャラクター を紹介した本。「ペコちゃん」「キューピー」「ヤン坊・マー坊」などなどのルーツを探 る。いいなあ、こういう本。
山口正介『ぼくの父はこうして死んだ』(1996年,新潮社)。名前とタイトルでピンと 来る人はいるだろうか。故山口瞳の息子で、自身も作家である山口正介の目から 見た山口瞳の晩年。

 よみた屋を出て、そのまま中央線の高架線路に戻るようにして歩く。線路を新宿 方向に進むと、ガード下にりぶる・りべろが見えてくる。
 店の外に比較的大きなスペースをとって、雑誌、文庫、マンガなどの均一コーナ ーがある。この均一台で岩崎昶『チャーリー・チャップリン』(1973年,講談社現代 新書)を見つける。この本を持って店内へ。店内は、入ってすぐは雑誌や実用書、 児童書が多い。しかし、奥に行くにつれ、日本史関係の本などの堅めの本も並び、 作家の色紙も置かれていた。店内では滝田ゆう『滝田ゆう落語劇場』(1983年,文 春文庫)を見つける。マンガです。滝田ゆうはなんともいえない味のある絵がいい んだよなあ。

吉祥寺後半戦 ―― 古本屋以外もいろいろと

 りぶる・りべろを出て、隣にあるラーメン屋武蔵屋に入る。こってり系のラーメンだ ったが、個人的にはおいしかった。味の濃さ、油の多さ、麺の固さは好みをオーダ ーできるので、こってりが苦手な人も大丈夫かもしれない。
 さて、昼食を終えて、ふたたび出発である。

 ここでちょっと古本屋めぐりを離れて、アンティークやオリジナルグッズを販売して いるたご舎(たごや)を訪れる。駅からは歩いて5分くらい、吉祥寺図書館のそばに ある。ここは前にホームページを見て、一度行ってみたいと思っていたのである。 アンティークといっても、懐かしい感じの雑貨が多く、見ていて飽きなかった。置い てある商品は違うのだが、どことなく駄菓子屋を連想させる雰囲気がある。
 ここでオリジナルグッズの絵はがきとトートバッグを購入。俺は古本屋を回るとき はリュックを背負っているのだが、本を買っていくうちに、結構肩にずっしりと重み がのしかかる。そこで、重さを分散させるために、トーとバッグはあると便利そうだ と思ったのである。
 ちなみに、たご舎のまわりには雑貨屋や古着屋などが多く、多くの人が連想する であろう吉祥寺らしさが漂っている。

 トートバッグにこれまで買った本を移し替えて、古本屋めぐりを再開する。五日市 街道に出て、西に向かって歩くと藤井書店が見えてくる。近くにスーパーがあること もあってか、人の出入りは多い。本も多い。階段も含めて、さまざまなジャンルの本 が詰め込まれている。堅いのも柔らかいのも。
 ここでは以下の3冊を見つけ、購入。
大沢啓二『OBたちの挑戦X』(2001年,マガジンハウス)。野球好きならご存知、 親分こと大沢啓二が、2001年に始まったプロ野球OBによるマスターズリーグ、そ して自身の野球人生について語る。俺は今の日本のプロ野球には興味はないが、 OBや選手個人には興味があり、野球に関するノンフィクションも好きなのです。
川口和久『投球論』(1999年,講談社現代新書)。ということでこの本も購入。広島 カープ、読売ジャイアンツで投手として活躍した川口和久による投手論・野球論。
別役実『思いちがい辞典』(1999年,ちくま文庫)。様々な言葉をめぐるエッセイ。 序に、「本書は、任意に採りあげられた事柄について、人々の『思いちがい』を促す べく策略されたもの」とある。こうした、常識とは少し違う考え方が語られるところが 別役エッセイの魅力だと、俺は勝手に思っている。学生時代に読んだ『当世・商売 往来』(1998年,岩波新書)も面白かった。

 藤井書店を出て、商店街サンロードを駅に向かって戻るように進む。商店街の中 に、さかえ書店外口書店の二軒が並ぶように立っている。さかえ書店は、社会科 学、人文科学など堅めの渋い本が多い。対照的に外口書店は、小説やマンガが 多く、一般向けの印象がある。この2件がほぼ隣り合わせというのも、面白い。残 念ながら、この2店では購入はなし。

 駅に戻る前に、ヴィレッジ・ヴァンガード吉祥寺店まで足を伸ばす。ここは本屋な のだが、置かれている本はサブカルチャーやマンガなど、限られている。そのかわ り、それらのジャンルに関しては大型書店にもないような本もあり、また関連する雑 貨やCD、お菓子などのグッズも販売している。ごちゃごちゃはしているが、中をう ろうろするだけでも、結構楽しい。俺はここで扱っているような本は必ずしも好きな ジャンルではないのだが、あるジャンルに特化した店作りというのは面白いと思う。 しかし、本は購入せず、本屋に入ったのになぜかチョコレートを買って外に出る。

 これで吉祥寺は終了。パルコブックセンターも見てみたかったし、たご舎の店主 さんに教えてもらったブックステーションにも寄ってみたかったのだが、まあそれは またの機会ということで。
 
そして西荻窪

 ということで、中央線で一駅戻って西荻窪へ。なんだかんだで、夏の間に三回訪 れたことになる。駅に着いて、まず吉祥寺で購入した本を駅のコインロッカーに入 れる。今日は、前回、前々回と行きそびれていた店にまず行ってみる。

 駅の北口を線路に沿って荻窪方向に歩くと、比良木屋に着く。あまり大きい店で はないが、美術・音楽関係の本が目立つ。入ってすぐの棚には俺の好きなサブカ ルチャー系統の本が並ぶ。表の均一台も面白い本が見られた。ここで3冊購入。
外山滋比古『ライフワークの思想』(1983年,旺文社文庫)。英文学者外山滋比古 のエッセイ集。氏のエッセイ集はこれまでに2冊読んでいるが(『実のある話』 1983,旺文社文庫『思考の整理学』1986,ちくま文庫)、いずれも面白かったた め、購入。
唐沢俊一『笑うクスリ指』(2002年,幻冬舎)。薬局の家に生まれ、育った唐沢俊 一のクスリに関するエッセイ。こうした雑学系の本は好きなんだよなあ。ちなみに、 氏には『薬局通』(1996年,ハヤカワ文庫JA)という本もあるので、薬局マニアは要 チェックだ!
赤瀬川原平『東京ミキサー計画』(1994年,ちくま文庫)。赤瀬川原平という人は、 とにかく色々なことをやっていて、ひとことで「こういう人」とは言えないが、1960年代 初めは前衛芸術というかパフォーマンスというか、そうしたことをやっていたのであ る。この本はその記録。中にある写真を見て、そのインパクトで購入決定。いや あ、老人力や路上観察の前に、こういうことがあったのね。

 比良木屋を出て線路の下をくぐり、更に荻窪の方に歩くと、商店街のはずれのあ たりにニヒル牛が見えてくる。ここは、プロアマ問わず個人が作成したものを展示 し、販売するアートギャラリーだ。アーティストのフリーマーケットとでも言えばいい のだろうか。アクセサリー、キーホルダーなどの小物や、自作のCD、カセットテー プ、豆本などが、出展者別に箱に入って置いてある。あまり大きな店ではないが、 ひとつひとつの箱をじっくり見ていくと時間がすぐに経ってしまう。ううむ、面白い。こ こではキーホルダーと、豆本の絵本を購入。絵本は、もと『ぼくも昔は子どもだっ た』。ちょっとしんみりさせられて、色々なことを考えさせられる内容であった。

 ニヒル牛を出て、駅に戻るようにして歩く。前にも訪れたことのあるスコブル社 羽館に足を運ぶ。何度来ても、西荻窪は古本屋が充実していていいなあ。この2 店では、音羽館で渡辺昇一『「人間らしさ」の構造』(1977年,講談社学術文庫) 購入。

 そして、9月末までの期間限定、「北尾堂ブックカフェ」を訪ねる。これでこの夏3 回目。しかし、いつ来てもなにかしら面白い本に出会え、楽しい時間を過ごせたと 思う。本日も以下5冊を購入。
森岡浩『名字の謎』(2002年,新潮OH!文庫)。タイトルどおりの本。新潮OH! 文庫は、新潮文庫にはあまり多くなかった雑学やノンフィクションの本が多いのが 嬉しい。
鈴木隆『匂いのエロティシズム』(2002年,集英社新書)。これもタイトルどおりの 本ですな。といっても、単なる興味本位ではなく、自然科学の側面からも匂いとエロ ティシズムの関係を考察しているようだ。
山中伊知郎『吉野家!』(2002年,廣済堂文庫)。タイトルどおり、吉野家について の雑学本。吉野家の簡単な歴史も書かれているが、それとともに色々なウンチク が楽しそう。
唐沢俊一・鶴岡法斎『ブンカザツロン』(2001年,エンターブレイン)。師匠と弟子 の関係でもある、世代の異なるオタク二人による対談集。前にも何度か古本屋で 見かけて気になっていたので、この機会に購入。
ミニコミ『本箱』(2002年)。本(古本)に関するミニコミ。和綴じで手作りというもの すごく手間のかかった本。丁寧なつくりに惹かれて購入。もちろん内容も興味深 い。関西の古本屋情報、雑誌『少女座』の紹介が2大特集で、その他にも本に関す るエッセイ・インタビューが満載。
 ブックカフェでは、店主の北尾トロさんと本の話を中心に色々と話し込む。本につ いて色々な話ができるのは、やはり楽しい。結局、閉店間際までお邪魔して、ブッ クカフェを出る。


ということで、夏の中央線沿線古本屋めぐりは、これにて終了。しかし、今後も中央 線沿線には訪れる機会もあるだろう。ともあれ新しい店を見つけることもできたし、 いろいろな本も手に入ったし、貴重な経験になったなあ。




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