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木の葉燃朗のばちあたり読書録

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■雑誌・ムック → 共著・他

雑誌『ifeel読書風景 No.27 2004年冬号』 / ミニコミ『アートマニア創刊号』 / ミニコミ『アートマニア第二号』 / アミューズ編『2002-2003年神田神保町古書街ガイド』  / エイムック 1440『ノート&ダイアリースタイルブック Vol.2』 / オルタブックス004『アイドルという人生』 / 雑誌『広告批評 2001年2月号 特集:100年後に贈る100人の21世紀最初の日』 / 雑誌『広告批評 2002年9月号 特集:海洋堂おまけ図鑑』 / 雑誌『広告批評 2003.8 特集:ラーメンズ』 / ムックY006『この新書がすごい!−目からウロコのいち押しガイド298』 / 好奇心ブック23『80年代アニメ大全』 / ミニコミ『sumus第6号』 / ミニコミ『sumus別冊 まるごと一冊中公文庫』 / 雑誌『東京人 1996年3月号 特集:ふるほんの宇宙』 / 雑誌『東京人 2002年10月号 特集:神田神保町の歩き方Part3』 / 東京都古書籍商業協同組合:編『古本カタログ』 / エルマガmook『歩きたくなる 東京地図本』・まっぷるマガジン『東京遊ビ地図2008』 / 雑誌『中洲通信 2000年11月号』 / 雑誌『中州通信 2003年10月号 特集:エノケンの凄味』 / 中野晴行:編『マンガ家誕生。』 / ミニコミ『廃本研究 Vol.2』 / 雑誌『文藝 2003年秋 特集:川上弘美』 / 『別冊太陽 手帳の本 1000万人の情報整理学』 / 別冊宝島141『巨人列伝』 / 別冊宝島625『私でも面白いほどわかる決算書』 / 別冊宝島961『音楽誌が書かないJポップ批評34 バンドブーム・クロニクル1988-1990』 / 別冊宝島 1457『80年代こども大全−なつかしのおもちゃ博覧会』 / 雑誌『彷書月刊 2006年5月号 特集「岡崎武志古本劇場」』 /  ミニコミ『本箱』 / 雑誌『隔月刊ユーゲー No.02』 / 『ユリイカ 9月臨時増刊号 特集:川上弘美』 / 雑誌『UP 2004年4月号』

本に貼られているリンク先は、特に記載がない場合オンライン書店bk1の紹介ページです

2004.7.19(月) 小さな雑誌だが、質は高い

雑誌『ifeel読書風景No.272004年冬号』(2004年,紀伊國屋書店)

 特集は「古本の未来形」。考えてみたら、新刊書店で、出版も行う紀伊國屋書店がこういう特集をPR誌で組むというのも、なかなか画期的ではなかろうか。
 特集の主な内容は、次のとおり。

 どれも面白かったが、特に印象に残ったのは山崎有邦氏によるエッセイ「どこかの友人(バクさんの古本屋)」。全国を旅しながら本を探し、メールマガジンで紹介して販売する古本屋の話。フィクションかノンフィクションかは分からないのだが、これは面白かった。

 特集以外の連載も、ブックレビュー・読書コラム・いしいひさいち氏のマンガ・柳家喬太郎氏のエッセイなどがあり、どれも楽しめた。

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2003年1月17日(金) 芸術への扉を開く

雑誌『アートマニア 創刊号』(2002年,クローバーブックス)

 正直に言えば、アート(芸術)のことは、からきしわからない。そんな俺がなぜこの本を購入したのか。そもそものきっかけは、コミックマーケット63の杉並北尾堂のブースで、この雑誌を手に取る機会を得たことだった。見本誌を立ち読みして、特集で取り上げられていた宇田川新聞氏の版画に惹かれ、購入を決めた。この人の版画には、魅力を感じる。懐かしさがあるんだな。それも、「自分が子どもの頃に見たものへの懐かしさ」ではなく、なんというか、多くの人が共通して感じるであろう懐かしさがある。これは俺が言葉で説明してもうまく伝わらないと思うので、興味がある人は、クローバーブックスのページを見てみてください。一部の作品(購入できます)が掲載されています。
 特集以外の内容は次のとおり。

 これらがまた、正直に書いてしまうと俺がまったくといっていいほど知らないジャンルなのだ。『ハンニバル』も、その前作『羊たちの沈黙』も、映画も見ていなければ原作も読んでいない。滝本誠氏は映画・美術・音楽などのジャンルで活躍する評論家だが、俺は『テレビブロス』の川勝正幸氏のコラム(「TooOldtoROCK'N'ROLLTooYoungtoDIE」)で名前を見たことがあるなあといった認識しかなかった。そして芸術については最初に書いたとおり。
 しかし、そんな程度の知識しかない俺が読んでも、興味を引かれる部分が多く、ほぼ一気に読み通してしまった。引き込まれるようなパワーがあり、この本から色々と興味が広がっていきそうである。例えば、滝本誠氏や宇田川新聞氏の名前を今後どこかで見かけたら、間違いなく目が行くだろう。またこの雑誌自体も、今後も読んでみたいと思わされる。

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2003年12月24日(水) 辛酸なめ子ファンは注目だ!

ミニコミ『アートマニア 第二号』(2003年,クローバーブックス)

 アートについてのミニコミ、アートマニア。今号は辛酸なめ子こと池松江美の特集。
 俺も辛酸なめ子という名前は色々な雑誌やwebページで知っていたが、どういう人なのかはあまりわかっていなかった。そんな状態で、このミニコミを読んでみた。
 内容は、撮りおろしの「花開く……マーメイドラブ2003」をはじめ、池松氏のオブジェ作品を紹介する「秘宝カタログ1994-2003」、かつて発行された自費出版の写真集「マーメイド・ラブ」の一部復刊といったグラビアページ。クローバーブックスの平林享子氏によるインタビュー、井上リサ氏との対談、といった活字のページが掲載されている。
 それで、これらの特集を読んでどうだったかというと、実は読めば読むほどわからなくなってくる。しかし、辛酸なめ子(池松江美)の奥深い魅力は感じられる。なんというか、得体の知れないパワーがあると思う。一部の人にとってはもうおなじみの存在だろうが、辛酸なめ子は注目すべき存在です。
 しかし、非常に丁寧に紹介されている。インタビューも、子供の頃の話から語られていて、これを読むだけでも辛酸なめ子の一貫性というものをひしひしと感じる。
 特集以外の連載には、「藤原えりみのゲンダイビジュツ改造講座」、「滝本誠研究」が掲載されている。滝本誠研究では、評論家滝本誠氏の生家(廃墟になりかけている)での蔵書整理を行うのだが、その模様を撮影した写真はかなりの迫力を持っている。
 この内容で1500円なら、俺は安いと思うなあ。

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2007-11-29(木) 紙の魅力

ノート&ダイアリースタイルブック2 (エイムック 1440)エイムック 1440『ノート&ダイアリースタイルブック Vol.2』 (2007年11月、エイ出版社):Amazon.co.jp オンライン書店bk1楽天ブックス

 タイトルどおり、手帳・ノートについて紹介したムック。私は普段あまり手帳やノートについての本は買わない。いわゆる手帳術の本も、カタログのように紹介されている本も。でもこの本は、写真の雰囲気とか、登場している手帳やノートとか、なんとなく気になって購入。
 主な内容は、売れ筋のノート・システム手帳の紹介、システム手帳以外の手帳・ダイアリー紹介、小型のメモ帳の紹介、世界の主なノート・手帳のブランド紹介、ノート・手帳を多くそろえる店の紹介、などなど。
 いやあ、読んでいると、ノートとか手帳とか、あれこれ欲しくなって困ってしまう。たくさんあっても使い切れないのだが、それでも欲しくなってしまう。
 また、バイブルサイズのシステム手帳用のリフィル(ファイロファックスの方眼ガイド&スケール)も付録としてついてきます。

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2004.6.25(金) 古きよき時代を思い返してみよう
オルタブックス004『アイドルという人生』(1998年,メディアワークス)
 1970〜80年代の女性アイドルについてのコラムを集めたもの。執筆者は、宝泉薫・河崎実・杉作J太郎・竹内義和・吉田豪・吉村智樹・リリー・フランキーなどの諸氏。
 宝泉氏のアイドル総括に始まり、取り上げるアイドルをメインにしたコラムが8割。残り2割は執筆者の回想がメインになる。レコードのジャケット写真やブロマイドなどのカラーページも多い。
 しかし、アイドルって芸能界に安住できないんだあ、と思って、ちょっと切なくなる。もちろん、今でも女優・歌手として活躍している人もいるが、岡田有希子・堀口綾子(みるく)のように自ら命を絶った人もいる。男性の芸能人・有名人と結婚・離婚をしている人も多い。
 当時のアイドルを思うと、今のアイドルって割り切っているよなあ。人気がなくなったり、嫌気がさしたりしたらやめればいい、という雰囲気をすごく感じる。いまやアイドルは、なるのもやめるのも敷居が低くなったのだろうかねえ。アイドルとしての建前がないから、街を歩いている子を連れてきてテレビに出せば、アイドルの出来上がりという感じがする。これがいいことなのか、悪いことなのか。
 まあ、そういう暗い話はおいておいて、写真を見るときれいな人は今見てもきれいだなあと思う。麻丘めぐみ(この人は今もきれいだと思う)・岡田奈々・木之内みどり(現:竹中直人夫人)なんて、当時の写真は今のアイドルと比べてもまったく引けをとらない。
 古本屋の均一台で見つけたのだが、値段の分は十分楽しめた。

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2003年12月29日(月) ほんの最近の古さを感じる1冊
雑誌『広告批評 2001年2月号 特集:100年後に贈る100人の21世紀最初 の日』(2001年,マドラ出版)古本
 タイトルどおりの特集である。文章・イラスト・写真など、自由な方法で100人が 2001年1月1日を紹介する。登場するのは赤瀬川原平・イッセー尾形・高橋源一郎・ 田尻智(ゲームデザイナー)・細野晴臣・明和電機・所ジョージ・森村泰昌(芸術 家)、などなど。
 これは面白い。時事的な内容もあり、完全に個人的な内容の話もある。ともかく、 これだけの量並ぶと、数の多さの持つ面白さを感じる。
 それから、2001年1月1日の日本テレビの全CMを記録した特集も面白い。当時ど んなCMが流れていたか、どんな人が出ていたのか、改めて見なおすと興味深い。 出来れば他の主要なテレビ局のCMも見たかったが、それは無理かね。

2002年9月18日(水) 今回はマニアックな感じのものを4冊紹介(の1冊)
雑誌『広告批評 2002年9月号 特集:海洋堂おまけ図鑑』(マドラ出版)
 『広告批評』がどういう雑誌かちょっと説明すると、まず「その時々の広告の批評」 と「特集」がメインで、その他映画、アートに関するページと橋本治氏のエッセイが ある。これが現在の形ですな。
 今月号は、「チョコエッグ」を中心として、おまけつきお菓子で大ヒットを飛ばして いる海洋堂の特集です。「海洋堂おまけ図鑑」をはじめ、海洋堂専務の宮脇修一と 美術家村上隆の対談や、荒俣宏のエッセイなど、なかなか充実した内容。
 俺は、チョコエッグに限らず、日本のおまけつきお菓子については面白いと思っ ている。この間も「グリコのおまけ」なんて本を読んだくらいだからね。しかし、この 本の宮脇修一×村上隆の対談を読む限りでは、両者の考え方に完全には賛成で きない。それでも、俺はたまに海洋堂のおまけつきお菓子を買うこともあるし、そう したおまけがいまや広い世代に受け入れられて、コンビニエンスストアでも買えると いうのは面白い現象だと思う。おまけの原型つくっている原型師へのインタビュー もあるので、興味がある人には一読をおすすめします。
 ちなみに、この雑誌にはおまけはついていませんので、あしからず。

2003年9月18日(木) 他人の頭のよさに納得できる1冊
雑誌『広告批評2003.8 特集:ラーメンズ』(2003年,マドラ出版)
 最近あまりテレビで見かけないラーメンズ。しかし、そこには意味があった。この 特集を読むとわかるのだが、いわゆるテレビのバラエティー番組の枠の中にはお さまらないのがラーメンズなのである。
 そもそも、「ラーメンズってなによ」という方に説明しますと、小林賢太郎、片桐仁 の二人組のコントグループです。設定もセリフもちょっと独特で、例えば「変な日本 語を練習する『日本語学校』シリーズ」、「ひとりが大学教授になって講義をし、もう ひとりは講義の題材である標本として立っているだけの『現代片桐概論』」、「それ ぞれが持っている本をいかに格好よく朗読するかを競う『読書対決』」などのコント がある。クセはあるけれど、それだけに一度好きになるとクセになってしまうネタが 多い。
 今回の特集の内容は、
・対談:ラーメンズ×上田義彦(フォトグラファー)、小林賢太郎×宮藤官九郎、片 桐仁×竹谷隆之(造形師)
・小林、片桐のソロインタビュー
・高橋幸宏、伊藤弘(グルーヴィジョンズ)、KREVA(KICK THE CAN CREW)、椎名 林檎などによるラーメンズにまつわるコラム、コメント
 などなど、誌面の半分近くを使って、ラーメンズが紹介されている。
 コントの台本は小林氏がつくるのだが、その方法論がシステムとして構築されて いて、非常に頭がいい人だと感じさせられる。もちろん、台本の面白さだけでなく、 ふたりの役者としての存在感も、面白さの要因のひとつだろう。特に片桐氏の強烈 な個性も、他にあまり例がない。また、小林氏は文章や漫画、片桐氏は造形(粘土 作品の個展も開いた)と、それぞれ別のジャンルでもクリエイターとして活躍してい る。知れば知るほど興味深いなあ、この人たち。
 それから、『広告批評』自体は、誌面の半分は特集、もう半分は広告に関する連 載からなる。連載も、最近のテレビ・雑誌・ポスターなどの広告を取り上げ、これも また面白い。特に地域限定の広告などは、面白いなあ。

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2007-09-08(土)筋の通った新書ガイドブック
この新書がすごい!―目からウロコのいち押しガイド298 ムックY006『この新書がすごい!−目からウロコのいち押しガイド298』(2001年、洋泉社)オンライン書店bk1Amazon.co.jp楽天ブックス

 2001年時点の新書のガイドブック。まだ新潮新書や光文社新書などは未創刊で、「岩波・中公・講談社の旧御三家に加え、ちくま・平凡社・文春の新御三家も快調に点数を増やしている」(p.4)という状況。取り上げられる新書も、上記六社のものと、加えてPHP新書・集英社新書といったところが中心。

 しかしそれでも、あまり古臭い感じはしない。なぜなら、「さまざまな学問領域を、知識を、テーマを、それがわれわれの『自分』とどう関わるかがわかるように配列されたブックガイド」(p.6)を意識して作られているから。本の選択の際のテーマも、編者の浅羽通明氏の思想が反映されている。この本のまえがきにあたる「21世紀の百冊 いまあえて<定番新書>を作成するという野望について」、更に各テーマの最初の、取り上げる新書についての概説は、すべて浅羽氏が執筆している。このため、複数の執筆者によるガイドブックではあるが、内容には一定のまとまりを感じる。読む人により好き嫌いはあるにしても、立ち位置がはっきりしているので、今読んでも参考になる部分がある。

 以下、テーマと気になった新書を紹介します。

PART1 この「自分」からの出発
・丸山圭三郎『言葉・狂気・エロス』(講談社現代新書):「なつかしのイカ天、ドラクエから東西芸術史まで、話題が四方八方へにぎやかに広がる」(p.8)という内容らしい。
・佐々木正人『知性はどこに生まれるか』(講談社現代新書)
PART2 僕らは文化でできている
・二宮清純『最強のプロ野球論』(講談社現代新書):書店でも古書店でも見かけますが、著者にクセがありそうで敬遠していた。でも江夏豊がミリ単位でボールの落差を調整できたという話とか、最強打者・投手を調べる中で幻の選手が発掘されたとか、興味深そうな話題が登場しています。
PART3 愛と孤独のジレンマ
・度会好一『ヴィクトリア朝の性と結婚』(中公新書):当時のイギリスの格差社会、建前と本音の分離した社会は、今の日本を見る上で参考になりそう。
PART4 「世間」という現実
・栗本慎一郎『自民党の研究』(光文社カッパブックス):衆議院議員時代の経験を、人類学者らしくフィールドワークした記録。
・きだみのる『気違い部落周游紀行』(冨山房百科文庫)
・山岸俊男『安心社会から信頼社会へ』(中公新書):安心と信頼との違い、日本人の他人への信頼度の低さなど、興味深い。
PART5 日本近代ここまでここから
・武田泰淳『政治家の文章』(岩波新書青版)
PART6 マイノリティと世界帝国
PART7 資本制と現代の前提条件
PART8 僕らと身体と物質史

・氏家幹人『大江戸死体考』(平凡社新書):「江戸時代には人の死体がいかに身近なものであったか」(p.147)をテーマにした考察。
・田口善弘『砂時計の七不思議』(中公新書):小さな粒子の集まりである粉粒体の考察。満員電車・トンネル・高速道路の渋滞なども取り上げられているらしい。
・佐倉統『現代思想としての環境問題』(中公新書):「自然保護とは人類(ことに先進国)のエゴである」(p.154)という前提の元に話が進む。
PART9 知識人という生き方
・長沼行太郎『思考のための文章読本』(ちくま新書):日本の思想家の文章のパターンを、数種類に分類してしまった本。
・森銑三『おらんだ正月』(冨山房百科文庫):江戸時代の科学者の列伝。

 上記のテーマとは別に、小テーマでのコラムも掲載されている。中でも面白かったのは、ある新書好きの中年男性が読みそうな本をイメージして紹介した「<新書さん>の謎」と、ニーチェに関する新書九冊を紹介する「<ニーチェ新書>ミシュラン」、そして心理学系の本を紹介する「狼少女カマラは『サブリミナル・マインド』の夢を見るのか 心理学その二重の桎梏、あるいはトンデモ心理学新書の研究」。
 特に「狼少女カマラは……」で挙げられている、トンデモ系ではない下記の心理学の新書も気になる。
・下條信輔『サブリミナル・マインド』(中公新書)
・下條信輔『<意識>とはなんだろうか』(講談社現代新書)
・藤永保『発達の心理学』(岩波新書黄版)
・藤永保『幼児教育を考える』(岩波新書新赤版)

 最後にちょっとおまけ。
 この本も参考に、以前作った各社の新書分類図に手を加えてみました。

クリックすると別ウィンドウで拡大します。82KB。

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2002年12月29日(日) イマイチな3冊(の1冊)
好奇心ブック23『80年代アニメ大全』(1998年,双葉社) 古本
 「好奇心ブック」というのは、「別冊宝島」のようなA5版のムックシリーズ。この本 では、1980年代のアニメーションの中から主なものを挙げて解説している。
 俺の期待としては、「自分が見ていた懐かしのTVアニメについてのあれこれ」を 読みたかったのだが、その期待とはちょっと違う本だった。そもそも、1980年代の アニメなんてそれこそ山のようにあるわけで、「へええ、こんなのがあったんだ」と思 うようなものも多かった。まあ、劇場用作品・ビデオ専用の作品まで含めたらそれ も当然か。
 しかし、どうしてもわかっている人に向けて書かれた本という印象がぬぐえない。 例えば、そのアニメに登場する固有名詞がたくさん出てくるあらすじの紹介なんて、 当時見ていなかった人間にはちんぷんかんぷんですよ。おたくの人たちが知識を 確認するため本のようにも思えた。

2003年3月2日(日) 自分が生まれる前の時代に思いをはせる
ミニコミ『sumus 第6号』(2001年)
 そもそも『sumus』というミニコミの存在を知ったのは、執筆者のひとり、岡崎武志 氏の著作だった。『古本でお散歩』(2001年,ちくま文庫)『古本めぐりはやめられ ない』(1998年,東京書籍)などの古本にまつわるエッセイには、俺が古本好きにな る上で大きな影響を受けた。そのため、岡崎氏の著作やプロフィールに登場する 『sumus』という雑誌も気になってはいた。
 ただ、ミニコミだけにどこでも買えるわけではないこともあって、なんんとなく手が 出ないでいた。実際はsumusのサイトで通信販売もしているし、神保町の書肆アク セス他店頭に並べている書店もあるのだが。そんなこんなで、現物を手にしたのは 今回が最初であった。「新書の昭和三十年代」という特集に惹かれて購入。
 いやあ、この特集は面白かったなあ。新書というと、今書店に並んでいるのはち ょっと硬めの教養系のものを思い浮かべる人も多いだろうが、かつては今の文庫 と同じように、軽めのエッセイや小説などもあり、実に多くの出版社から刊行されて いた。当時出版されていた新書の紹介を見ていると、こんなにあったのかと驚いて しまう。これから古本屋をまわるときに、これまであまり見なかった新書の棚にも注 目したくなる。
 また、この号には戦前の探偵小説雑誌『ぷろふいる』を発行していた熊谷市郎氏 へのインタビューもある。推理小説にあまり詳しくない俺も興味津々で読んだので、 好きな人にはたまらないのではなかろうか。

2003年7月21日(月) 本への、そして本屋への情熱沸き起こる2冊(の1冊)
ミニコミ『sumus別冊 まるごと一冊中公文庫』
 本にまつわる話題が満載のミニコミ、スムース。今号は別冊として、中公文庫を 特集している。
 俺は中公文庫って、他の文庫に比べてあまり注目したことがない。都筑道夫の 本をちょこちょこ集めているくらいかなあ。古本屋では、あのピンク色というか肌色 というか、統一された色の背表紙がまとまって並んでいるのを目にはしているんだ がなあ。
 こうした印象は、この本を読んだ後もそれほど大きくは変わっていない。「よし、明 日から中公文庫探しだ!」とはならなかったですねえ。中公文庫は俺には渋すぎ て、ちょっと手が出ないなあ。しかし、この本自体は読んでいて非常に面白かった。 巻頭の山本善行・岡崎武士の両氏による対談から、中公文庫を数多くそろえる神 奈川県藤沢市の古本屋「聖智文庫」店主へのインタビュー、南陀楼綾繁・内澤洵 子の両氏による「中公文庫の『重箱の隅』」(第一回配本にまつわる話・カバーの色 について・中公文庫のマークや大きさについて、などなど)ほか、興味深く読んだ。

2003年7月1日(火) 古本への情熱高まる2冊(の1冊)
雑誌『東京人 1996年3月号 特集:ふるほんの宇宙』(都市出版) 古本
 1996年といえば、ちょっと前という気がするが、もう7年前なんだよなあ。当時刊行 されたこの雑誌では、まんだらけが新興の古本屋として注文されていたり、いまや 否定的な意見が多いブックオフについても、紀田順一郎氏が新しい形態の古本屋 として注目したりしている(ただし、紀田氏の文書によると当時からブックオフには 批判があったようだ)。オンライン古本屋などは、当時は未来の話であった。インタ ーネットが一般の人々に広がるのは、ちょうど1996年頃からだもんなあ。
 ちなみに、この号に登場する人々を挙げておくと、逢坂剛・川本三郎・小林静生・ 瀬戸川猛資の四氏による座談会、なぎら健壱氏の神田周辺の飲み屋めぐり、林 望・鹿島茂・横田順彌・青木正美・岸部四郎の諸氏による蔵書の紹介、などがあ る。しかし、岸部四郎とは。時代を感じさせるなあ。
 それでも、古本が好きな人の情熱は変わらないと思った。当時の話題を取り上 げている部分が古びるのは仕方がないが、それ以外の記事は、古さを感じさせな い内容だった。

2002年9月18日(水) 今回はマニアックな感じのものを4冊紹介(の1冊)
雑誌『東京人 2002年10月号 特集:神田神保町の歩き方Part3』(都市出 版)
 タイトルだけでほぼ購入決定、でしたな。神保町は、とにかく奥が深い。訪れる人 の興味のありようによって、新しい面が見えてくる。だから神保町に関する文章は 読みたくなるし、読むと行きたくなる。
 今回紹介しているのは、逢坂剛・嵐山光三郎、中野翠・坪内祐三、クラフトエヴィ ング商會などなど。神保町で働く人たちの座談会もあり、俺はここで、神保町にヴィ レッジ・ヴァンガードができたのをはじめて知りました。
 ああ、はやく神保町にいきてえ!

2003年3月17日(月) 1980年代の空気を感じるきっかけになるかもしれない 1冊
雑誌『中洲通信 2000年11月号』(リンドバーグ)
 中洲通信は、九州の中洲にあるクラブのママさんが発行人のミニコミ誌。といっ ても、店のPR誌ではなく、ホームページの紹介によれば「人生を楽しむダントツな 人の雑誌」。毎号特集を組んで、ほとんどのページが特集に関する記事となる。
 この号は「1980年代大特集/MANZAIブーム最高潮」。フジテレビ系「花王名人 劇場」や「THE MANZAI」のプロデューサー澤田隆治と、当時大学生から落語界へ 飛び込んだ春風亭昇太へのインタビュー・70年代後半から現在までのテレビと芸 人との関係の考察などの記事がある。
 お笑い以外の話もある。松村邦洋による1985年阪神タイガース優勝の思い出 や、カリスマ的人気を誇った歌手尾崎豊について。さらには当時のベストセラーの 本や、流行の話も登場する。
 懐かしいなあ。「花王名人劇場」も、漫才ブームの頃は子どもだったがよく見てい た。1980年代は、今思い返すと勢いがあった時代だったと思う。もちろん、いいこと だけでなく悪いことも多かったとは思うが。

2003年12月13日(土) エノケンこと榎本健一特集
雑誌『中州通信 2003年10月号 特集:エノケンの凄味』(リンドバーグ)
 これは前にも書きましたが、この『中州通信』は、中州のスナックのママさんがス ポンサーになって作られているミニコミ。ただ、つくりもしっかりしているし、毎回の 特集も面白いものが多く、俺は時々買っている。
 この号は、喜劇俳優榎本健一(エノケン)の生誕100年を記念した特集。内容は エノケンの未亡人である榎本よしゑさん、エノケン一座の文藝部に所属していた吉 村平吉氏へのインタビュー。小学生の頃に池袋文芸座でエノケン映画のオールナ イト上映を見て、影響を受けたという劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ へのインタビューもある。その他、エノケンの歌の考察や、古川ロッパとエノケンと の比較もある。
 雑誌はそれほど厚くないのだが、内容は詰まっている。ここから他のエノケン本 を読むきっかけになりそうだ。

2002年6月3日(月) フリートークにて:5月にはこんな本を読んだ(前編)
・ミニコミ『廃本研究Vol.2』(杉並北尾堂)
「杉並北尾堂発行のミニコミ誌です。雑誌というよりも本に近い内容の濃さですが」
「大きく分けて、バカミステリー、バカSFと呼ばれる小説を紹介するパート、ライターのコラムや エッセイを中心に、ボツ原稿を集めたパート、そして主にノンフィクションの本の研究パートから なる。しかし、掲載されている文章にほとんどはずれがないよ。人によって好き嫌いはあるだろ うが、俺は楽しめた」

2003年10月16日(木) たまには文学を感じる1冊
雑誌『文藝 2003年秋 特集:川上弘美』(2003年,河出書房新社)
 『文藝』はめったに読まないのだが、今号は特集にひかれて買った。とはいえ、俺 は川上弘美氏のそれほど熱心な読者ではない。これまでに読んだのは『神様』 (2001年,中公文庫)『センセイの鞄』(2001年,平凡社)『パレード』(2002年,平 凡社)の3冊。しかし、これからも少しずつ読んでいきたい作家のひとりである。
 今回の『文藝』では、全体の約3分の1が特集のページに割かれている。川上弘 美初心者である俺には、なかなか興味深い内容であった。
 榎本正樹氏による全著作ガイドや、榎本氏を聞き手にした「川上弘美全作品を 語る」は、これから川上氏の著作を読む際の参考になる。また、長嶋有氏からの 質問に答える形でプロフィールを語るコーナーも、ミーハー的好奇心を満たしてくれ る。
 その他、糸井重里氏、それから水原紫苑氏との1対1の対談や、氏の俳句作品 の収録など、盛りだくさんの内容。
 特集以外は、小説は特に興味を持った作品はなかったが、永江朗氏の連載 「TOKYO書店見シュラン」は面白かった。書店のガイドなのだが、今回は六本木・ 広尾・恵比寿の書店紹介であった。

2006.1.11(水) 20年以上前の手帳術
・『別冊太陽 手帳の本 1000万人の情報整理学』(1982年,平凡社)
 タイトルどおり、手帳をテーマにした様々な文章を掲載した本。B5サイズで、写真も多数使われている。当時の手帳に関する話が色々と読めて面白い。
 主な内容は次のとおり。

・手帳のある心象風景・scene12 手帳有情
 色々な手帳の広告写真風のグラビア。
・ポケット・マガジン 手帳面白雑学
 手帳に関する各種コラムが掲載されている。
 「2001年の手帳 手帳とコンピュータの合体。見えてきたぞ、21世紀」(pp.20-21)では、現在のPDAに近い小型のパソコンが想像されている。ただ、プリントアウトする機能が付いている点はちょっと異なる。今みたいに、メールやインターネットでデータをやりとりすることまでは想像できなかったようだ。
 また当時はポストイットが日本に紹介され始め、話題になっていた頃のようで、「自由自在の空間移動が可能なポスト・イット手帳についてThinking」(pp.28-29)なんていうコラムもある。手帳とともにポストイットを持ち歩き、書いたものは後ほど大きなスケジュールボードに貼っていく。終わった用件は保存用のファイルに張り替える。
 今ならシステム手帳で実行できそうだが、考え方はシステム手帳と共通していると思う。
 他には、「手帳の書き方スピードアップの速記術 手帳用マーク集とスピードメモ法」(pp.30-31)が、今読むとなんとも非実用的で面白い。
 速記のための原則は「カタカナ、ひらがなを使う」「カタカナは今まで通り短く読む」「ひらがなは全部、読み方を変える」(p.30)。一例として、「ひらがなの『お列』『う列』は「ウ」をつけて長く読む」(p.31)という方法がある。
 具体的には、「ひこうき」を「ヒこキ」、「そうこ」を「そコ」、「ぐうすう」は「ぐす」などが挙げられている。
 これを覚える時間を取るより、素直にひらがなかカタカナで書いた方がいいんじゃなかろうか。
  「手帳を使いこなすためのBOOKS」(pp.48-49)というコラムもある。手帳を使った情報整理や知的生産の本は、昔からずっとあるんだなあ。
・Things we found today 胸騒ぎの小物・最新図録
 手帳と一緒に持ち歩くと良さそうなグッズのカラーグラビア。ソニーのカメラ「MAVICA」なんて、面白いなあ。これは、フィルムの替わりにフロッピーディスクに画像を保存するカメラ。
・そこ行くあなたの 手帳拝見
 下記のような方々の手帳拝見。湯村輝彦・大林宣彦(厳密には監督は手帳を持たず、奥様が管理している)・巻上公一・米長邦雄・仲畑貴志、などなど。
・あなたの知らない 手帳の業界大研究
 「能率手帳」の研究とか、明治・大正当時に丸善が発売した手帳の紹介とか。
・使用者にとっての手帳 手帳とは何か? その将来を探る
 奈良總一郎・今泉浩晃・橘川幸夫の三氏による対談や、今後の手帳についてのアンケート結果。
・こんな手帳あんな手帳 全手帳型録
 「型録」は「カタログ」のもじりですね。当時の手帳247冊を紹介している。一般的に使われる手帳の他、「空手手帳」、「りんご手帳」(りんご生産者用の情報が掲載されている)、「土木現場手帳」、「銀行員手帳」など、様々な手帳が紹介されている。
 中でも興味深かったのが、出版社の発売していた手帳。なんと各出版社はもちろん、著作者(作家など)の住所・電話番号まで載っている。一部書面でも紹介されていて、安部公房の自宅(仕事場かもしれない)が調布だったことなどが分かる。

 最近も手帳に関する本は流行していますが、最近の本はなんとなく立ち読みした限りでは実用一点張りという印象がある。手帳を使って金持ちになるとか、偉くなるとか。
 それに比べると、この本の方がなんとなく遊び心が感じられて、個人的には好きだなあ。
 まあ、出版当時は、この本も実用性重視で、それから20年を経過したからこその「味」というものが出た、ということかもしれないけれど。

2003年5月1日(木) 「知的」ということに思いを馳せる1冊
別冊宝島141『巨人列伝』(1991年,JICC出版=現 宝島社)
 明治から昭和の戦前にかけての、主流から外れた部分に位置する知識人の評 伝集。こうしたテーマは、山口昌男『「挫折」の昭和史』(1995年,岩波書店)・『「敗 者」の精神史』(1995年,岩波書店)や、荒俣宏『大東亜科学綺譚』(1996年,ちくま 文庫)などでも取り上げられている。この本は、数人の執筆者により、次の三部に 分けて書かれている。登場するのは次のような人々。
 1.知の巨人論:熊楠の世紀…南方熊楠・宮武骸骨・寺田寅彦・柳田國男・黒岩涙 香・医師としての森欧外・福来友吉 など
 2.悪党論:反逆する人生…田中正造・中里介山・大杉栄・内田百けん(けんは門 の中に月) などなど
 3.越境者論:忘れられた人々…海外への冒険・探検を繰り広げた人々、建築家・ 美術家たち
 登場する人物は、いずれも魅力的である。ただし、紹介者でもある執筆者によっ て、その魅力は大きくも小さくもなる。一番面白かったのは、短めの評伝を中心に 半分程度の人物を紹介した長山靖生氏の文章だった。
 他にも、紀田順一郎、倉坂鬼一郎などの諸氏の名前も見られた。

2002年5月6日(月)4月に読んだ本(フリートークにて)
別冊宝島625『私でも面白いほどわかる決算書』(宝島社)
「で、こういう本も読むわけね。本当に節操がないなあ」
「しかし、経済の知識がほぼ皆無の俺にも、わかりやすかった。入門書としてはい いんじゃない。これで全部が解るなんてことは、無責任には言えないけど」
「たしかに、知識をゼロから増やすきっかけとしては有効だよね」
オンライン書店bk1の紹介ページ(文庫版)

2004年2月10日(火) 自分の音楽のル−ツのひとつを探れた1冊
別冊宝島961『音楽誌が書かないJポップ批評34 バンドブーム・クロニクル 1988-1990』(2004年,宝島社)
 内容は、タイトルどおりです。1980年代後半のバンドブームの、更に後半の3年間 を振り返るもの。各年のバンドブームに関する年表あり。バンドやジャンル・音楽に 関するキーワードなどの紹介あり、CDレビューあり。オオキトモユキ(元カステラ)、 宮田和弥(元ジュン・スカイ・ウォーカーズ)、氏神一番(カブキロックス)などへのイ ンタビューあり。といった、なかなか充実した内容。
 1988年〜1990年といえば、俺は10歳〜13歳の頃。まだ音楽を聞き始める前です な。だからこの本に登場するバンドの多くについては、あまり記憶がない。しかし、 中学生になって自分もまわりも音楽を聴くようになった頃は、バンドブームの最後 期、そして生き残りといえるバンドたちが活躍していった頃に重なる。そういう意味 で、色々と勉強になりましたよ。今プロデューサーや作曲家として活躍している人 が当時どんなバンドにいたかとか、現在現役のミュージシャンがどんなバンドの影 響を受けているのかなど、ずいぶんいろんなことがわかったなあ。
 ちなみに俺が中高生の頃は、Xとブルーハーツに人気があって、ちょっと背伸び した人がさかのぼってボウイを聴いているような状況だった。俺はそんな中で「テク ノ、テクノ」と騒いでいた少数派の一人だったが、それでもバンドブームの影響は少 なからず受けているのかなあと、読みながら思った。電気グルーヴやYMOを聴く一 方で、実はBAKUも聴いていたし(今でもアルバム持っています)、ブルーハーツや ユニコーンも、自分でCDは買わないまでも友達に聴かせてもらって「いい」と思った こともあったし。
 当時、あるいはその前後に日本の歌謡曲・ロック・ポップス(今なら大きなくくりと して「J-POP」と呼ばれる音楽)を聴いていた人には、思い出に触れられて面白い と思いますよ。まあ、中には今では思い出したくない恥ずかしい青春の日々もある でしょうが、それも含めて思い出ってことで。
 ちなみに、この前編として、別冊宝島942『音楽誌が書かないJポップ批評33 バ ンドブーム・クロニクル1985-1987』(2004年,宝島社)もあります。こちらはナゴム レコードの面々、ブルーハーツ、ボウイ、レピッシュなどが取り上げられているよう ので、興味がある方はこちらもどうぞ(俺は未読ですが、買いました。詳しい内容は また今度紹介します)。
オンライン書店bk1での紹介ページ
『バンドブーム・クロニクル1988-1990』
『バンドブーム・クロニクル1985-1987』

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2007-10-30(火)当時を体験した人が思い出すには楽しい本

80年代こども大全―なつかしのおもちゃ博覧会 (別冊宝島 1457)別冊宝島 1457『80年代こども大全−なつかしのおもちゃ博覧会』 (2007年7月、宝島社)Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天ブックス

 1980年代の、男の子向けのおもちゃや食玩(当時そういう言葉はなかったけれど)を紹介した本。下記のような商品が紹介されている。

 他にも、元タミヤの前ちゃんと、メカニックマンという、ミニ四駆ブームを支えた二人の対談とか、越智善彦(おちよしひこ)氏の書き下ろし漫画なども掲載されている。

 私は1977年に生まれて、1980年代はばっちり小学生だったので、懐かしいです。自分が実際に買ったり遊んだりした覚えがある物事がたくさん出てくる。
 ただし、当時を知らない人が読んでも、なにがなんだか分からない可能性がある。当時まだ生まれていなかった人とか、当時すでに大人で、これらの商品を知らなかった人とか。
 なぜなら、ちゃんとしたデータベースというよりも、担当した執筆者の趣味や経験に基づいた記事がほとんどのため。だから例えば、「ゲーム&ウォッチ」が巻頭フルカラーで8ページ割いているのに、ファミコンなどのテレビゲームが巻末あたりの四色カラーで4ページという、ちぐはぐな取り上げ方も見られる。また女性向けのおもちゃは、まったく取り上げられていない。
 商品の写真も掲載されているのだけれど、それもページ数の都合か資料収集の状況によるものか、あくまで抜粋という感じの分量。

 そう考えると、1980年代当時を子供として過ごした人が、自らの体験や記憶で補完しつつ、当時を懐かしむための本だろうと思う。そういう楽しみ方をする分には、非常に楽しい本です。
 タミヤの前ちゃんが、スクウェア(現スクウェア・エニックス)を経て、現在は楽天に勤務しているとか、ビックリマンシールの大流行した「悪魔VS天使シール」は、おまけシールとしては10代目(つまりあのシールの前にもビックリマンシールと呼ばれたおまけがあった)とか、ガンダムの「エルメス」がプラモデルや玩具では「NT専用MA」という商品名になっていたのは、HERMESからのクレームによるとか、この本で初めて知ったことが結構あります。
 テレビ番組「RCカーグランプリ」のナレーションが小倉智昭(小倉のお兄さん)だったことも、この本を読んで思い出した(たしかにあの人の声だった)し、当時自分も持っていたものを次々と見て、懐かしさに浸ってしまった。

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2006.05.24(水) 岡崎武志氏の色々が分かる
・雑誌『彷書月刊 2006年5月号』(彷徨舎)
 『彷書月刊』は古本・本の情報と、古本の目録を掲載する雑誌。今回の特集は「岡崎武志古本劇場」。連載の第百回目、および、これまでの連載の単行本化を記念して、ということなのだと思います。
 特集部分の目次は下記のとおり。

・山本善行「岡崎武志が上京するまで」
・対談:岡崎武志・坪内祐三「人生いたるところ古書店あり」
・岡崎武志「均一小僧の気まぐれ古書店紀行[特別編](100)−自祝! 連載百回記念 大森再訪」
・南陀楼綾繁・内澤旬子「10円コンビの岡崎武志邸『アンダーグラウンド書斎』訪問記」
・上野崇之・白石恵子・鈴木賢一・長井弘勝・本上ひろし・馬越寛晃・石関善治郎・樋口玲子・村岡眞澄・石丸徳秀・岡崎日向子「岡崎武志を語ろう」
・岡崎武志「小津『麦秋』デッサン」・「一九九二年 高円寺日記」・「岡崎武志青春アルバム」・「岡崎武志略年譜」

 どの記事も興味深いのだが、まず岡崎氏自身による「年譜」が面白い。大阪で学校の先生をされていた頃に、雑誌(『鳩よ!』など)に漫画を連載されていたとか、ブックオフと東京古書会館の即売会に行かれるようになったのが同じ一九九六年であるとか。
 それから、高円寺に引っ越した頃の一九九二年の二月から三月にかけての日記も、興味深い。マガジンハウスの雑誌『自由時間』のライターとなり、同時に校正の仕事などもされていたこと、当時マガジンハウスの編集者だった滝本誠さんと仕事をされていることなどが分かる。

 また「岡崎武志を語ろう」では、岡崎氏ゆかりの方々による文章が掲載されている。中学校の頃の担任の先生、教師時代の同僚、ともに雑誌を作られた仲間、雑誌・書籍の編集者、娘さん、などなど。こうした方々の文章を読むと、なんというか、岡崎氏は文章はもちろんなのだが、人柄もいいんだよなあと感じる。
 あとは、内澤旬子氏による岡崎氏の書庫のスケッチには圧倒される。俺は最近、増えつつある自分の部屋の本とCDをどうしようどうしようとずっと思っているのだが、そんな悩みなど吹き飛んでしまうくらいのすごい量の本。

(参考)
 『彷書月刊』の連載のうち、1998年から2005年までの8年分をまとめた本。
オンライン書店ビーケーワン:気まぐれ古書店紀行・岡崎 武志『気まぐれ古書店紀行』(2006.2,工作舎)
「これまで行ったことのない古書店を目指して、初めての駅を降り、初めての町を散策しようじゃないか…。著者による書き込みあり。しかし、この本は古本にあらず! 『彷徨月刊』人気連載を集大成」(オンライン書店bk1の紹介文)

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2002年10月18日(金)
ミニコミ『本箱』(2002年)
 大阪で発行された、本に関する同人誌。二大特集として、「大阪を中心とした関 西の古本屋の紹介(地図つき)」と「雑誌『少女座』の紹介」があり、その他もすべて 本にまつわるあれこれでまとめられている。
 古本屋の紹介は、自作の細かな地図や古本屋の周辺にある「本が似合う空間」 の紹介もあり、丁寧につくられているという印象を受ける。
 また、中身だけでなく外見もなかなかすごい。一冊一冊手作りの和綴じ本、しかも 表紙には布が張られている。これは相当な手間がかかっているぞ。
 しかし、こうした本好きの人々が世の中にいると思うと、俺も読書家の末席を汚 すものとしては非常にうれしい。
 なお、購入したい方はこちらのURLでどうぞ。

2002年7月24日(水)
雑誌『隔月刊 ユーゲー No.02』(2002年,キルタイムコミュニケーション
 この雑誌の知名度がどれくらいのもんかわからんのだが、まずは簡単に説明 を。
 『ユーゲー』は、ゲーム雑誌である。しかし、普通のゲーム雑誌ではない。もともと キルタイムコミュニケーションからは、『ユーズドゲームズ』(季刊・以後『旧ユーゲ ー』)『ナイスゲームズ』(年2回刊・以後『ナイゲー』)という2冊の雑誌が刊行され ていた。
 『旧ユーゲー』は、「中古ゲームの専門誌」。スーパーファミコン以前のゲームにつ いてマニアックに掘り下げる雑誌だった。『ナイゲー』は、「発掘系ゲーム雑誌」。プ レイステーション・セガサターン以降のゲームの中で、メジャーではないがいいゲー ムを紹介する内容だった。
 この両誌が統合されたのが、『ユーゲー』である。特定のテーマでゲームを紹介 する特集と、連載ページからなる、中身の詰まった雑誌である。
 No.02の特集は「眩しすぎる!夏ゲー特集」「ドリームキャスト保護計画!」、そし 「女神転生」シリーズ研究。連載には、「美食倶楽部バカゲー専科」(バカなゲー ムを紹介して笑うコーナー)「ゲーム19XX」(特定の年に発売されたゲームを振り 返り、読者のアンケートを募る)「今月の一本」(知る人ぞ知る名作ゲームの紹介 などなどがある。
 最近の俺といえば、ゲームを遊ぶ時間よりもゲームについての本を読む時間の 方が多くなっているくらいなのだが、そんな俺にはまさにぴったりの雑誌である。だ が、この雑誌を読むと、ついついゲームが遊びたくなってしまう。少なくとも、ゲーム が買いたくなるのは間違いない。
 「昔はよくゲームやったなあ」という人は、手にとって見てください。懐かしさと新鮮 さで夢中になるかもしれませんぞ。

2004年2月14日(土) 不思議な魅力に触れてみましょう
『ユリイカ 9月臨時増刊号 特集:川上弘美』(2003年,青土社)
 1冊まるまる作家川上弘美氏を特集したもの。初めに全体についての感想を書 いてしまうと、川上氏については他の人が色々紹介する文章を読むよりも、ご本人 の書いた小説なりエッセイなりを読んだ方が面白い。これは俺の勝手な意見だし、 俺も作家によっても違うのだが。
 ただ、この本の中で蜂飼耳氏も次のように書いている(p.198)。
「川上弘美の書く世界を知りたいひとは、解説めいたものに手を伸ばすのではな く、書かれたものに直接あたるしかない」。「つまり、あらすじがどうの、テーマがどう のといっても、なにもはじまらない。言葉そのものにあたるしかない、ということ だ」。
 ということで、個人的にはちょっと物足りなかった。それでもなかなか面白く読み ました。特に次のような部分。
 ・川上氏の新作掌編小説6編
 ・川上氏と歌人穂村弘氏との対談
 ・川上氏が作家堀江敏幸氏とともに都電荒川線に乗り、途中下車しながらの対 談
 ・評論家(幻想文学中心)の東雅夫氏による、「誌上再現、カワカミさん家の本 棚」(川上氏の読書歴の紹介)
 その他、各著作(小説・エッセイ集)の評論や、久世光彦・田辺聖子・江國香織な どの諸氏による川上氏についてのエッセイもあり、人によって色々な楽しみ方がで きると思いますよ。
 でも、俺はやっぱり川上氏が書き、しゃべる部分が面白かったなあ。
オンライン書店bk1の紹介ページ
青土社の公式ページでの紹介(目次もあります)

2004.9.11(土) たまには知的に行こうじゃないか
雑誌『UP 2004年4月号』(東京大学出版局)
 東京大学出版局のPR誌。定価50円ですが、書店によっては「ご自由にお持ちく ださい」となっている場合もあります。
 この号の特集は「アンケート 東大教師が新入生にすすめる本」。さすがにかなり 高度な本も多いですが、知的好奇心は刺激されます。中には、俺にも読めそうな 本を紹介していただいている方もいらっしゃいます。
・本郷和人氏(史料編纂所助教授、日本中世学)
 いきなり「学生時代の私はダメ人間だった。実はいまもそう変わらないが、勉強 はしない、気力はない、もてない」(p.15)と書いてもらえると、なんとなく親しみが持 てる。
 『中島敦全集』(筑摩書房・リンク先はbk1。以下同じ)『もてない男』(1999年,ち くま新書)を紹介。
・金子邦彦氏(総合文化研究科・教養学部教授、理論物理)
 印象に残っている本として、小説を数多く挙げている。偶然にも上の本郷氏と同 じ『中島敦全集』(筑摩書房)や、イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』(1995年,白 水社)、カート・ヴォネガット『猫のゆりかご』(1979年,ハヤカワ文庫)、小松左京氏 のSF小説など。
 一方で、藤垣裕子氏(総合文化研究科・教養学部助教授、科学技術社会論)の ように、「いずれ皆さんは各界でこの国を引っぱっていく人材になる可能性が高い」 (pp.25-26)などと堂々と書いてしまう方もいる。
 特集以外のコーナーで気になったのは、馬場章氏の「大学でゲームを研究しま せんか?」。東京大学ゲーム研究プロジェクト(公式サイト)の紹介。俺もこのプロ ジェクトのサイトは、トップをさらっと見ただけですが、なかなか面白そうです。
 雑誌の目次は、下記の通りです。出版社のサイトからバックナンバーを取り寄せ ることも可能ですよ。
・安達裕之「学問の図像とかたち40 日本無双の結構」
・アンケート 東大教師が新入生にすすめる本 
・遠藤秀紀「骨を愉しむ 『体高を稼ぐ』」
・管啓次郎「[書評]4 心を語る指」
・高山宏「かたち三昧4 うねくった漱石」
・馬場章「大学でゲームを研究しませんか?」
・松浦寿輝「[文化季評]2 藤田省三あるいは知識人の品位」


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