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木の葉燃朗のばちあたり読書録

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■著者別「ぬ・ね・の」→「な・に」

リュック・ヌフォンテーヌ『フリーメーソン』 / 根本圭助『異能の画家小松崎茂』 / ノ・ジョンユン:著・二宮清純:監修『日韓サッカー文化論』 / 野口 晴巳『能率手帳の流儀 みずからの成長と人生の豊かさを求めて』 / 野崎正幸『駈け出しネット古書店日記』 / 野田 隆『駅を楽しむ!テツ道の旅』 / 野田昌宏『レモン月夜の宇宙船』 / 則枝忠彦『文庫びっくり箱』 / 法月綸太郎『法月綸太郎の功績』 / 法月綸太郎『法月綸太郎の新冒険』

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2002年6月8日(土) フリートークにて:5月にはこんな本を読んだ(後編)
オンライン書店ビーケーワン:フリーメーソン・リュック・ヌフォンテーヌ『フリーメーソン』(1996年,創元社「知の再発見」双書)
「なんか、怪しい本だねえ」
「フリーメーソンは、簡単に説明すると、ヨーロッパやアメリカに現在も存在する秘密結社です。 よくトンデモ本で題材にされますね」
「この本をきちんと読んだ人間の説明とは思えねえな」
「まあまあ。実は最初は興味本位で読んだのよ。でも、フリーメーソンについて丁寧に紹介した 真面目な本だった。たまに言われる『○○はフリーメーソンの陰謀だ』って話も、ほとんど信憑 性がないことがわかる」
「まあ、われわれの生活にはあまり身近ではないので、一概にどうこうは言えませんけどね」
「図や絵もふんだんに使われているので、入門書としてなかなかいいのではないでしょうか。 『「知の再発見」双書』は、様々なテーマの本が出ていますので、興味がある方は探してみてく ださい」

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2002年9月29日(日)
オンライン書店ビーケーワン:異能の画家小松崎茂根本圭助『異能の画家 小松崎茂』(2000年,光人社NF文庫)
 著者は小松崎茂の弟子であり、小松崎をはじめとする出版芸術の資料館「昭和 ロマン館」館長でもある。その著者による小松崎の伝記。生まれ育った環境から、 画家の世界に入るまで、そして戦前・戦後にわたる仕事と私生活の日々が丁寧に 書かれている。
 そばにいた人間だから書ける本だな。なんでもないような日常のエピソードも、当 時の小松崎の姿を生き生きと描き出している。また、小松崎とともに、当時の挿絵 画家や少年雑誌のエピソードも丁寧に描かれている。図版もモノクロだが、数多く 掲載され、資料的な価値もある。
 ちなみに小松崎茂については、昭和ロマン館のページか、俺の小松崎茂展レポ ートをご覧ください。

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2002年6月5日(水)5月にはこんな本を読んだ(中編)フリートークにて
オンライン書店ビーケーワン:日韓サッカー文化論ノ・ジョンユン:著・二宮清純:監修『日韓サッカー文化論』(講談社現代新書)
「ノ・ジョンユンは、Jリーグ開幕当時にサンフレッッチェ広島に所属した韓国人選手です。その後オランダのチーム・セレッソ大阪を経て、(2002年)現在はアビスパ福岡でプレーしています」
「韓国人Jリーガーのパイオニアです。韓国サッカーの特徴や、オランダでの生活などは興味深かった。韓国のスポーツ選手と徴兵の話は、知っている人には常識 だろうが、俺は勉強になった。ラストにちょっと教訓めいた話が続くのは、人によって好き嫌いが分かれると思うけどね」
「この本を読むと、日韓両国で行われるワールドカップに対する熱狂も一段と高まるのではないでしょうか」

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2009.04.26(日) 「残す物」としての手帳

野口 晴巳『能率手帳の流儀 みずからの成長と人生の豊かさを求めて』(2007年10月・日本能率協会マネジメントセンター) Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天ブックス

 能率手帳でおなじみの、日本能率協会マネジメントセンターの会長による本。

 一般的な手帳術、手帳の使い方の本とは、ちょっと違った点を強調していたのが興味深かった。

 それは、手帳には過去を振り返る役割がある、という点。最近流行している、いわゆる「手帳術」の本では、未来の予定を管理する(そして望んでいる自分になる)ことに重点を置いている印象があるので、本来なら当たり前の「過去を振り返る道具としての手帳」という話が、なんだか新鮮に感じた。

 著者は、若い頃はあまり手帳を使わなかったようだが、記録をするようになってから、手帳がだんだんと埋まっていく。今では半年ですべてのページが埋まるくらいいろいろなことを書いているという(だから1年に同じ手帳を2冊使うらしい)。

 そして、書くだけでなく頻繁に読み返している。手帳の重要な役割のひとつに、読み直すことで自分のやる気を高めるということがあるという。人から褒めて、励ましてもらうことを期待せずに(特に企業のトップはそうした機会が少ない)、自分が記録したものを読んで、自分の励みにする。

 この本を読んでから、私も手帳に書くことが少し変わりました。それまでは考えたり思ったりしていただけのなんでもないこと(本当に日常の喜怒哀楽)も、なるべく手帳に書くようになった。

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2004年4月28日(水)本の本にはこういうものもあるということで
オンライン書店ビーケーワン:駈け出しネット古書店日記野崎正幸『駈け出しネット古書店日記』(2004年,晶文社)
 インターネット古書店文雅新泉堂を営み、ライターでもある氏による古書店主・ラ イターとしての日々の記録をまとめたもの。
 しかし、インターネット古本屋を開業しようとする人がマニュアルにするような性格 の本ではない。そういう書かれ方はしていないので。一人の人が古本屋を開業す るため、車の免許を取ったりパソコンの使い方を覚えたり、更には実際に運営して いく様子を綴った物語だと思って読んだ方がいいと思う。
 それから、著者は反体制・反政府の性格を持っていて、それをあからさまに書く。 物事の捉え方が、はじめに自分の考え方ありきで、それにあわせて解釈していく。 そうした文章が我慢できる人、好きな人はいいけれど、嫌いな人は内容を少し読ん でからこの本を読むか決めたほうがいいと思う。俺は嫌いだけれど、最初に書い たように物語として割り切って読んだので、ぎりぎり我慢できた。
 例えば2001年9月11日の日記で、死人が出ている出来事に関してこういう文章を 書くことには、俺は賛成しない。
「ハイジャックされた飛行機がニューヨークの国際貿易センタービルに突っ込む。 青空に屹立するビルに大きな飛行機が突入し、黒煙を上げてずるずるとビルが沈 みこんでいくまで、まるで映画みたいにきれいな映像だった。パレスチナの人びと がこのニュースを聞いて歓喜する表情とともに、きっとずっと忘れないだろう」(p. 79)
 ある意味で筋は通っていると思うけれども。

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2007-08-10(金) ちょっと電車で旅に出たくなった

駅を楽しむ!テツ道の旅野田 隆『駅を楽しむ!テツ道の旅』(2007年5月、平凡社新書)Amazon.co.jpbk1楽天ブックス

 著者は高校の語学教師のかたわら、日本国内・ヨーロッパの鉄道旅行をテーマに多くの著作を出している方。
 この本では、国内の鉄道を、駅に注目して旅をすることをテーマとしている。

 私は鉄道マニアではないし、旅行もあまり好きではない。そんな私が読んでも、この本は十分面白かった。それは、紹介する駅や路線のユニークさと、それに注目する著者の視点の面白さに惹かれたから。

 例えば、第1章では、東京都内のターミナル駅について書かれている(「駅から始まる鉄道の旅−東京のターミナル今昔物語」、pp.16-35)。ターミナル駅らしさを考えた時、どれだけ多くの路線が通っているかとは別に、ホームの形状が影響するという。具体的には、「櫛形」と呼ばれる、行き止まりの線路が並び、ホームの端がつながっている駅に、ターミナル駅らしさがあるのだという。その意味では、JRでは新宿・東京・渋谷の各駅にはターミナルらしさは薄く、上野駅にはその雰囲気が残っているという。また、東急東横線の渋谷駅は、「四本ある線路の配列を改札口付近から眺めているとヨーロッパのターミナルを彷彿とさせる雰囲気がある」(p.29)という。これは、たしかに分かります。

 こうした着眼点から、全国の鉄道を紹介している。
 中でも興味深かったのは、「土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線」(各駅に、漫画家やなせたかし氏作のキャラクターが配されている)を紹介した第6章(pp.109-124)、名古屋駅周辺の駅を巡る第8章(p.142-159)、富山の「富山ライトレール」と「万葉線」という新旧のトラム(路面電車)を紹介する第9章(pp.161-177)。

 その他の章も含めて、読んでいるとちょっと電車で旅に出たくなった。

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2009年01月10日(土) エッセイのような小説と、小説のようなエッセイと、SFへの限りない愛情と

野田昌宏『レモン月夜の宇宙船』(創元SF文庫)  Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天ブックス

 短編小説集『レモン月夜の宇宙船』の全作品、エッセイ集『SFパノラマ館』からエッセイを抜粋、さらに単行本未収録の小説(「火星を見た尼僧」)・エッセイ(「お墓に青い花を」・「キャプテンたずねて三光年」)を加えたもの。

 小説は、野田氏自身や周囲の方をモデルにしているので、フィクションだと分かっていても不思議なリアリティがある。一冊の画集から謎が広まる「ラプラスの鬼」や、アメリカで騒動を起こしたことで知られるH.G.ウェルズの「宇宙戦争」のラジオドラマを題材に、もうひとひねり加えた「OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN' IN」、今のデジタルテレビや・インターネットを予見したような「五号回線始末記」、その他の作品も、いずれも面白い。

 後半のエッセイも面白い。以前別の本で読んだエピソードもあるのだけれど、それも含めて面白い。同じ話を何度読んでも面白いというのは、語り口のうまさなんだろうなあと思う。面白い落語家や漫才師は、同じネタを何度聞いても面白いのに近いかもしれない。
 アメリカのコレクターとの物々交換の顛末、そして手に入らなかった雑誌についての思い出を語った「ある老コレクターの死」、若い女優とのほのかなロマンスに古本の話がからんでくる「謎の美人姉妹」など、短編小説のようなエピソード(ただし、高橋良平氏の解説でも紹介されているが、いくつかのエッセイはサービス精神からの誇張もあったらしい)。

 一方で、野田氏のSF・本への愛情がはっきりと表れている部分もある。たとえ「ヘンな匂いのするパルプ雑誌一冊一冊のずしりとした手ざわりやあのケバケバしい色の表紙や挿絵が大切なだけなのだ」(p.325)という、物質としての本の魅力、そしてその本が「ひょっとするとだれかがルナ・シティで読んでくれるかもしれない」(p.325)と思いを馳せる様子。これは本の中の情報だけを重視し、「本は図書館で借りればいい」などと言う人にはとうてい理解できないだろう。例えば「スペース・オペラとは読むものではなくて参加するものだ」(p.429)という、「SFってなァ、結局のところ絵だねえ」(p.398)にも匹敵する名言。

 SF小説って面白いよなあと、しみじみと思える本。

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2004.12.5(日) 本の世界のスモール・イズ・ビューティフル
オンライン書店ビーケーワン:文庫びっくり箱・則枝忠彦『文庫びっくり箱』(2001年,青弓社)
 日本の文庫の種類について調べた成果を紹介している本。そもそも、著者は「明治以来延々と続いている文庫出版という分野のうちで、いったい何種類の文庫が 誕生したのだろうかということに興味がある」(p.10)ため、文庫本を集めはじめたらしい。
 あくまで「こんな文庫がある」ということを紹介するのが主なので、特定の文庫について深く紹介している部分は少ない。
 ただ、カバヤ文庫(カバヤキャラメルを集めるともらえた文庫)やアダルト文庫、貸本マンガ文庫に各地の出版社から出ている「ふるさとの文庫」などは、ラインアッ プ紹介にも力が入っていて、面白い。
 また、著者が自分でジャンルを決めたコレクションも面白かった。猿飛佐助の登場する文庫ばっかり集めたりとか、本に仕掛けのある「遊んだ文庫、ふざけた文 庫」(pp.118-121)、「不思議の国のアリス」の関連本を集めた「文庫の国のアリス」(pp.132-140)など。
 それから、戦前に発行されたという「岩波文庫教科書版」は興味深かった。「四六版なのだが、版面は普通の文庫と同じ。広い余白ができるので、教科書に使って 余白はノートにというアイデア」(p.45)とのこと。
 ということでなかなか面白かった。ただ残念だったのは、本の表紙の写真が本文とあっていなかったり、写真についたキャプションが違っていたりという点があった こと。
 しかし、最後に本や文庫に関する参考文献も掲載されていて、資料としても役に立つし、読み物としても面白い本だった。

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2002年7月21日(日) 久々に推理小説を続けて読んだので(の1冊)
オンライン書店ビーケーワン:法月綸太郎の功績法月綸太郎『法月綸太郎の功績』(2002年,講談社ノベルス)
 雑誌、アンソロジーに掲載した中短編を集めたもの。法月氏も歌野晶午氏、我孫 子武丸氏とともに、1980年代後半に講談社ノベルスの書き下ろし推理小説でデ ビューした作家。
 ここ2〜3年に講談社ノベルスでデビューした作家と比べると、やはり格が違う。 「本格推理小説」というジャンルあくまでもこだわるという「らしさ」がある。トリックや 犯人の「意外性」だけでなく、その意外性が持っている「説得力」があるので、結果 として完成度の高い短編群になっている。ダイイングメッセージの「イコールYの悲 劇」、噂の通りに殺人が起こる「都市伝説パズル」、一見無差別に見える連続殺人 を取り上げた「ABCD包囲網」など、質の高い5本の短編を収録。

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2004.11.13(土) 久々の推理小説
オンライン書店ビーケーワン:法月綸太郎の新冒険・法月綸太郎『法月綸太郎の新冒険』(1999年,講談社ノベルス)
 推理小説の短編集。収録されているのは次の六編。
 「イントロダクション」、「背信の交点(シザース・クロッシング)」、「世界の神秘を解 く男」、「身投げ女のブルース」、「現場から生中継」、「リターン・ザ・ギフト」
 いずれも、解決に至るまでの論理性が面白い。もちろん、意外な犯人、トリックな どの仕掛けそのものも面白い。しかし、その見せ方がうまいんだよなあ。
 特に、テレビの事件現場の中継に移っている人物に殺人の容疑がかけられる 「現場から生中継」は、途中に出てきた様々な伏線が、最後に実に効果的に使わ れる。
 それから、小説に登場する探偵の名前も「法月綸太郎」なのだが、この名探偵が 必ずしも万能の天才でないのが面白い。もちろん洞察力・推理力には優れてい て、事件を解決する。しかし、超人的過ぎず、時に人間らしい部分、弱さが現れる。
 俺はそういう探偵の方が、魅力がもてるなあ。あんまり並外れてすごい人物だ と、嫌味に感じたり「名探偵のパロディ」みたいに感じたりしてしまうからねえ。

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