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木の葉燃朗のばちあたり読書録

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■著者別「く」

日下 三蔵『日本SF全集・総解説』 / 串間努『ザ・ガム大事典』 / 串間努編・南陀楼綾繁ほか著『ミニコミ魂』 / 国枝 史郎 『神州纐纈城』 / クラフト・エヴィング商会『じつは、わたくしこういうものです』 / アンドルー・クルミー (著), 青木 純子 (翻訳) 『ミスター・ミー』 / 暮沢 剛巳『現代美術のキーワード100』 / 黒咲一人『55歳の地図実録! リストラ漫画家遍路旅』

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2008年04月07日(月) 小説を読んで、書きたくなる

 日下 三蔵『日本SF全集・総解説』 (2007/11、早川書房)Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天ブックス

 架空のSF全集の解説というスタイルのブックガイド。全29作家+アンソロジーに14作家を収録で、計43人の日本の作家とその作品を紹介している。元々は、著者が出版社に勤務していた頃に実際に全集を作ろうと企画を考えていたのが始まりだったらしい。
 SF小説好きの人には、紹介される作品にはそれぞれのこだわりがあると思うが、紹介される作家はほぼ異存はないのではないか。近年デビューした作家はまだ取り上げられていないが、それはある程度評価の定まった作家を紹介する「全集」というスタイルである以上、仕方がないだろう。
 読んでいると、日本のSF小説が読みたくなる。知っているつもりの作家でも、改めて作品の紹介をされると、「そんな作品があるのか」と思って、読んでみたくなる。また、意外と兼業の作家が多いことも印象的だった。そう思うと、「自分もいつかは」と、小説を書いてみたいという思いがふつふつとわいてくる
 最後に取り上げられている作家の一覧を紹介します。

第1期
星 新一/ 小松 左京/ 光瀬 龍/ 眉村 卓/ 筒井 康隆/ 平井 和正/ 豊田 有恒/ 福島 正実/ 矢野 徹/ 今日泊 亜蘭/ 広瀬 正/ 野田 昌宏/ 石原 藤夫/ 半村 良/ アンソロジー(安部 公房・新田 次郎・都筑 道夫・佐野 洋・加納 一朗・生島 治郎・河野 典生・山野 浩一・石川 喬司・久野 四郎・宮崎 惇・斎藤 哲夫・戸倉 正三・畑 正憲)

第2期
田中 光二/ 山田 正紀/ 横田 順彌/ 川又 千秋/ かんべ むさし/ 堀 晃/ 荒巻 義雄/ 山尾 悠子/ 鈴木 いずみ/ 石川 英輔/ 鏡 明/ 梶尾 真治

第3期
新井 素子/ 夢枕 獏/ 神林 長平/ 谷 甲州/ 高千穂 遥/ 栗本 薫/ 田中 芳樹/ 清水 義範/ 笠井 潔/ 式 貴士/ 森下 一仁/ 岬 兄悟/ 水見 稜/ 火浦 功/ 野阿 梓/ 菊地 秀行/大原まり子

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2002年12月26日(木) マニアックな2冊(の1冊)
串間努『ザ・ガム大事典』(2000年,扶桑社文庫)
 タイトルどおりの本である。日本(および一部海外)のガムの歴史についての本。 明治末から現在にいたるまでのガムの歴史を丁寧に書いた労作。しかし、決して 堅苦しい内容ではない。ガムという身近な話題だし、がムにまつわるあれこれのコ ラムなど、気楽に読める文章が多い。
 しかし、こういってはなんだが、ガムなんて注意して集めたり調べたりするような 人がいなければ、あっという間に消えてしまうと思う。いつでも、いつまでも手に入 ると思っていると、知らないうちになくなってしまう。著者の串間氏や、この本にも出 てくる昭和30年代に『我無』というガムに関する同人誌をつくった人々のように、こう したものを丁寧に保存して紹介してくれる人がいるのは、嬉しい。
 まあ、難しいことを考えなくても、この本は図も多く、見ているだけでも楽しい。な お、扶桑社文庫からは似たようなジャンルの本として串間努『ザ・おかし』(1999 年)串間努・町田忍『ザ・ジュース大図鑑』(1997年)串間努・久須美雅士『ザ・飲 みモノ大百科』(2000年)なども出ているので、興味のある方はどうぞ。

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2003年9月6日(土) ミニコミを知る!

ミニコミ魂 串間努編・南陀楼綾繁ほか著『ミニコミ魂』(1999年,晶文社)オンライン書店bk1Amazon.co.jp楽天ブックス

 この本はミニコミの紹介が中心。つくり方についてはあまりページは割かれてい ないが、この本を読むとやはりミニコミをつくりたくなる。ミニコミの歴史や、販売し ている店の紹介など、詳しく書かれている。目黒考二氏・米沢嘉博氏・下関マグロ 氏などへのインタビューも興味深い。串間努氏による「私の個人メディア半生紀」も 面白かった。
 もしかしたら、紹介されているミニコミの中には現在は発行されていないものも多 いかもしれない。インターネットでのホームページに移行してしまった発行者もいる だろう。しかしミニコミは、フリーペーパーであれ、コピーで作られた小さな本であ れ、独特の魅力がある。この本を自分が好きなミニコミを探すきっかけにして、世 界が広がる楽しさを味わってみるのもいいのではないだろうか。

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2008-03-22(土) 未完であることが許せるような惜しいような

・国枝 史郎 『神州纐纈城』(1995年、講談社大衆文学館)

 舞台は戦国時代、武田信玄が治めていた頃の信州。信玄に仕えていた武士の土屋庄三郎は、ある日手に入れた紅布に導かれるように、富士山麓の本栖湖にある纐纈城へと向かう。庄三郎を信玄の命により追う少年高坂甚太郎もあり、彼らと出会う様々な人々があり、と話が進んでいく。
 しかし、非常にいいところで未完で終わってしまう。読んでいる途中がものすごく面白いだけに、これはなんとも残念。正確には、話が進むにつれて、どんどん話が大きくなるので、面白さと引き替えに話が広がって、大風呂敷の仕舞い方が難しくなってしまったとでも言えばいいのか。しかし巻末エッセイで半村良氏が書いているように、「あの味は連載という発表形式から生じているのだ」(p.412)、「大まかな案だけでとにかく書きはじめ、自分自身も読者の一人と化して毎回をにぎやかに書き綴って行ってはじめて生まれるものなのだろう」(p.413)、「したがって『蔦葛』や『纐纈城』が未完の形で残っていることを、私はさして残念に思わない」(p.414)というのが、この小説を読む時の読者の意識として大切なのだろう(『蔦葛』とは、やはり未完の長編『蔦葛木曽桟』)。

 とにかく、途中から庄三郎以外の人物が次々と登場して、それぞれに様々なエピソードが付随する。人物は塚原卜伝のように実在の人物をモデルにしている者もいるし、架空の人物も多い(私は歴史に疎いので、もしかしたら実在の人物を架空の人物と勘違いしているかもしれない)。纐纈城と光明優婆塞率いる富士教団との対立、妻とともに逃げた男を探して強盗・殺人を犯す陶器師こと北条内記、能の面を作りながら、裏家業として人間の顔を細工する謎の美女月子、瀕死の人間から内臓を取り出して秘薬を作る、かつての上杉謙信の家臣直江蔵人など、これでもかこれでもかという感じで次々と登場する。彼らが時々で出会いながら、物語は進む。それぞれの回(これが連載された単位だと思う)に山場があり、読み進めるほどに次々と先が読みたくなる。
 だけど、いずれのエピソードもまとまる前に未完で終わってしまうのは残念。そこまでが面白かったので許せてしまうような、でも最後が読みたかったような、複雑な気持ちになる。
 でも、読んでいるうちはとにかく面白いので、読んで損はないと思います。

 なお、今は河出文庫版が手に入りやすいようです。
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2002年6月5日(水)5月にはこんな本を読んだ(中編)フリートークにて
クラフト・エヴィング商会『じつは、わたくしこういうものです』(平凡社)
「まず、実在する人物の写真がある。その写真に、架空の氏名・職業が書かれて いる。そしてその人のインタビューがある。という凝ったつくりの本」
「その職業が、またいいんですよ。『ひらめきランプ交換人』『月光密売人』『二代目 アイロンマスター』など、興味をひかれるんじゃないでしょうか。装丁やレイアウトも 含めて、センスがあります」
「かっこいいねえ」
・オンライン書店bk1の紹介ペ−ジオンライン書店ビーケーワン:じつは、わたくしこういうものです

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2009-01-05(月) 知に取り憑かれた者たちの年代記

ミスター・ミー (海外文学セレクション)アンドルー・クルミー (著), 青木 純子 (翻訳) 『ミスター・ミー』(2008年10月・東京創元社) Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天ブックス

 3つの物語が順番に登場し、並行するように進んでいく小説。
 最初は、ジャン=ベルナール・ロジエの書いた『百科全書』という幻の本を探して、インターネットの世界にはまり始める読書マニアの老人の話。二つ目は、18世紀のフランスで、原稿の清書をめぐってトラブルに巻き込まれるフェランとミナールという二人の男の話。最後は、ルソー研究者で、教え子に愛情を抱く大学教授の話。
 この三つの、初めはまったく関係がないように思えるエピソードが、徐々にリンクしていく。

 読み進めるうちに感じてくるのは、登場人物は「知(知識・情報)」に取り憑かれているような人物たちだ、ということ。読書マニアの老人は、書物に埋もれて生活をしているのだが、生活するための知恵、現実を生きる方法には驚くほど疎い。その世間知らずで、それでもロジエの『百科全書』を追い求めようとする情熱が、さまざまな事件を巻き起こす。特に、虚実ないまぜのインターネット上の情報を、とても純粋に受け取ってしまうことで、物語は徐々に奇妙な方向に進んでいく。
 フェランとミナールも、特にミナールは思い込みが激しく、機転が利かない。その上、清書を任された書物を読むうちに、そこに書かれた理論に夢中になり、やがてその理論を実行しようとする。大学教授も、典型的な象牙の塔に籠るタイプの学者。

 「知に取り憑かれている」という表現をしたけれど、もっと率直に言ってしまうと、「知に溺れた愚か者たち」と表現できるかもしれない。その様子は、悲しくもおかしい。

 しかし、彼らを魅了する知識に、なんとも言えない魅力があるのも事実。特に断片的に登場するロジエの『百科全書』とそれにまつわるエピソードには、『百科全書』自体を読んでみたいと思わされる。例えば、冒頭に登場する「火には再生能力がある、それゆえ火もまた生命体だと信じていたという」(p.7)黄色族(ザンティック・セクト)なる種族の話や、ロジエが言及したという、ニコラス・クレリという文学研究者による文学の物理学的な分析方法(pp.76-82)。更に、ミナールが自分の疑問を解き明かすため、紙片と糸で作り上げた推理機械、などなど。

 そして思うのは、こうした部分に面白さを感じる私もまた、知に取り憑かれた者(知に溺れた愚か者)かもしれないということ。そう思うと、自分のことも、悲しく、おかしく思えてくる。

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2009年06月28日(日) 現代美術の基礎知識

暮沢 剛巳『現代美術のキーワード100』(2009年・ちくま新書) Amazon.co.jpオンライン書店bk1楽天市場

 現代美術を鑑賞するときにポイントとなるキーワードを、一語見開き2ページで紹介する本。
 はじめに20世紀の美術の概要の解説がある。続いて、前半は世界と日本の現代美術において中心となったキーワードを時代ごとに紹介する「動向編」。後半は現代美術を捉えるうえで重要な用語を紹介する「コンセプト編」。

 コンパクトな本だが、勉強になった。

 私は、伝統的な美術作品(絵画や彫刻など)よりも現代美術(映像やパフォーマンス、インスタレーションなど)の方が好き。その理由は、現代美術の方が比較的鑑賞の仕方が自由な印象があるから(美術作品を自由に鑑賞すればよいという考え方は、森村泰昌氏の著作で学んだ)。
 しかし、現代美術について勉強したことがないので、鑑賞した時に思ったこと、考えたことをなんと表現すれば良いのか分からないことがあった。もちろん、それを自分なりの比喩で表現することも大事だと思うのだが、基本的な部分は共通する用語を使った方が伝わりやすいと思う。例えば、「会場内に色々なものを配置して、その場所自体が作品になっている」と表現してもいいのだが、それは「インスタレーション」と呼べる、とかね。

 そうした時に、この本で知ったキーワードが活きてくるのではないかと思う。また、これまでばらばらに知っていた言葉のつながりが分かるのも、面白かった。

 最後にもうひとつ、20世紀美術の解説で興味深かった点を紹介したい。それは、1960年代をさかいに、それまで生まれていた「○○イズム」という用語に代わり、「○○アート」という用語が生まれていったという話。なぜかと言えば、「それまでの常識に照らせば誰しも美術と認める代物ではなかった」(p.28)作品が生まれたから。敢えて「アート」と付ける必要が生じたという。
 「○○イズム」も「○○アート」も、言葉としては色々な用語を聞いていたが、そこにこうした違いがあるというのは、初めて知ったし、興味深かった。

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2005/09/27 人が生きる上で大切なのは、金よりも人とのつながりだ

黒咲一人『55歳の地図 実録!リストラ漫画家遍路旅』(日本文芸社・ニチブン・コミックス) オンライン書店bk1楽天ブックスAmazon.co.jp

 著者は、『週刊少年マガジン』などで連載をしていた漫画家。この漫画は、仕事の依頼が途絶えた著者が、2003年の冬に四国遍路の旅に出た際の様子を漫画と文章で描いている。目次には「作者の体験をもとに描かれたフィクション」(p.2)とあるが、あとがきを読むと、出会った人や著者の経験したことは事実のようである。
 とにかく、この旅に臨む覚悟がすごい。身の周りのものはすべて廃棄し、自作の原稿さえも一部を友人に預けたのみで、後は捨ててしまう。そして、自転車に全財産を積み込み、フェリーで四国へ向かうのである。おそらく、この経験を後々漫画にしようという思いは、旅に出た時にはない。
 そして四国に着いてからも、お金を節約するため、食事もほとんどせず、寝る時はテントを張って野宿。そしてひたすら自転車を押して歩き続ける。最初の方は、「この人は途中で行き倒れてしまうのではないか」と思ってしまう。

 しかし、途中で運命的な出会いが訪れる。一度は著者と同じように仕事や財産を失くし、死を覚悟して放浪する中で遍路の先達になった「一心さん」。この一心さんに様々なアドバイスを受けながら、旅を続けていく。こういう出会いがあるというのは、まさに「事実は小説より奇なり」というところ。
 その後、再び一人で遍路を続けるのだが、それからも多くの人に出会い、助けられながらの旅である。大げさでなく、人との出会いがなければ死んでいてもおかしくない場面もいくつか登場する。

 そして巡礼が終わった時、著者は言う。
「人は独りでは/生きては/いけないし/生きる意味もない/”生きる道”/それは人と/出会う道である」(p.211)
 その人々との出会いを発表したいというのが、今回の漫画の連載をする原動力になったという。
 人が生きる上で大切なのは、金よりも人とのつながりだ、ということをひしひしと感じた。それくらい、著者の経験には説得力があった。

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