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木の葉燃朗の週刊ほんトーク

およそ週刊ペースで、気になる本の小ネタ、最近読んだ・読んでいる本を紹介していきます。
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2008年12月 12/7号 12/13号 12/21号 12/27号

2008年12月7日号

●本の小ネタ

 久々だなあこのコーナー。

・マイケル・クライトン氏逝去。
 asahi.com(朝日新聞社):自然への畏敬 最後まで 故M・クライトン氏 - 文化トピックス - 文化
 http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200812030079.html

・『家畜人ヤプー』の作者(と言われる)天野哲夫氏逝去。
 時事ドットコム:天野哲夫氏死去=「家畜人ヤプー」作者と告白
 http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2008120400321
 「家畜人ヤプー」の作者と告白、天野哲夫さん死去 : 文化 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20081203-OYT1T00848.htm

 みなさんは沼正三『家畜人ヤプー』を読んだことはあるかな? 俺はないよ(ないのかよ)。でも、日本SF小説が紹介されると、必ずと言っていいくらい番外扱いで紹介される本。『ドクラ・マグラ』なんかと一緒に、「奇書」として紹介される。 作者は別の文学者や評論家の偽名で、色々な人が正体として言われてきた。私も荒正人氏正体説などをどこかで読んだ記憶がある。この方が書かれたのか。でも、記事でも正確なことは分かっていないらしい。

●読んでいる本

 相変わらず澁澤龍彦『秘密結社の手帖』を。
 よくよく考えると、最近仕事中に休憩時間がないので、本を読む時間が減っている。本屋やCD屋に行く時間も減っている。ああ嫌だ嫌だ。

 マンガは何冊か読んでいて、まず山口いづみ『アカンサス 1』。母親と喧嘩して家を飛び出した女子高生が、従兄弟の経営する店に住み込んで働く、という物語。 その店というのが、ヴィレッジヴァンガードの本店をモデルにしている。このヴィレッジヴァンガードらしい描写は面白い。物語は少女マンガの王道という感じの内容なのだけれど。

 最近は、小説でも映画でもマンガでも、ストーリーの斬新さだけでなく、舞台の描写の丁寧さにも惹かれるようになってきた。平凡な話でも、その舞台が魅力的なら、魅力的な物語になる。

『アカンサス 1』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088462599/garakuta07-22%20/ref=nosim/

 もうひとつ読んだマンガは、石塚 真一『岳 1・2』。「マンガ大賞」という賞を(『もやしもん』や『よつばと!』を抑えて)受賞して話題になって、立ち読みしたら面白くて買ってきたマンガ。まだ続巻がありますが、一話完結なのでまずは最初の2巻を。

 これは、たしかに面白い。舞台は山(長野県の穂高岳)で、そこで人命救助のボランティアとして生活する三歩と、彼が助けられた人、助けられなかった人、そして三歩の過去の物語。私は登山には興味がないし、山を舞台にした小説や映画も読んだり見たりしたことがない。でも、このマンガは面白かった。 山って、人間の生死を分ける場所なのだと感じる。そういう場所での遭難や怪我などは、極限状態である。だから人の色々な感情がむき出しになる。それに対し、色々な経験をしているし判断力も鋭い三歩が(あえて)いつも笑顔でいることが印象的。

『岳 1』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091875718/garakuta07-22%20/ref=nosim/
『岳 2』 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091807305/garakuta07-22%20/ref=nosim/

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2008年12月13日号

●最近読んだ本は、魚喃キリコ『ハルチン1・2』(祥伝社)。1巻は復刊、2巻は単行本にまとまっていなかったもの。
 著者のマンガの中では異色作らしく、私にとっては読みやすかったし面白かった。

 高野文子『るきさん』との共通点を感じる人が多いのは良く分かる。掲載誌が『Hanako』であること、フルカラーで均一のコマが並ぶ構成、働く女性二人のなにげない日常を描いていること、などなど。 1980年代を描いたのが『るきさん』だとすると、1990年代から2000年代にかけてを描いたのが『ハルチン』という気がする。切実さはあるが、まだのほほんとしている。これが2000年代後半(ここ数年)になると益田ミリ『すーちゃん』のような切実さが現れる。

 ちょっと話がずれたけれど、私は『ハルチン』には『るきさん』とともにもう一つ、別のマンガの影響を感じる。それは、いしいひさいち『バイトくん』。『ハルチン』に登場するハルチンとチーチャンのふたりのだらだらした感じが、『バイトくん』の学生たちのだらだらさに通ずるものがあると思う。

Amazon.co.jp:ハルチン
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 アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』も読んでいる。ロジエ『百科全書』という幻の本を探してインターネットの世界にはまり始める読書マニアの老人、18世紀のフランスで、原稿の清書をめぐってトラブルに巻き込まれる2人の男、教え子と関係を持つ大学教授の物語が平行して描かれる。

 まだ、それぞれの物語の関連ははっきりとは分からないが、どの物語も興味をそそる。

Amazon.co.jp:ミスター・ミー
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2008年12月21日号

●アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』を読んでいて、そろそろ読み終わろうかというところ。

 「情報」というものに振り回されてはいけない、というテーマを感じる。別の言い方をすれば、情報にどっぷり浸かっている人間の愚かさ。この小説の表面上は、その「情報」というのはインターネット上の情報のことなのだけれど、実は本だろうがなんだろうが、情報に振り回されるとろくなことにならない。登場人物の何人かが、あまりに書物の世界にもぐりこんでしまい、現実に対処できなくなるところからも、それは読み取れる。

  とはいうものの、作中に登場するロジエの『百科全書』に書かれている理論やエピソードには、奇妙な魅力を感じます。

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●いしいひさいち『バイトくん 8』(双葉文庫)を読んだ。バイトくんの世界は昔から不況や貧乏だが、それでも明るく暮らしている、みたいなことが帯に書いてあったが、いくらいしいさんの学生時代をモデルにしているとはいえ、現実とマンガは違うよ帯を考えた人!

 とはいえ、笑いと(ある程度の)馬鹿さは、生きる上でのエネルギーになるとは思う。

Amazon.co.jp:バイトくん 8 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/457571352X/garakuta07-22/ref=nosim/

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2008年12月27日号

●今は野田昌宏『レモン月夜の宇宙船』(創元SF文庫)を読んでいる。
 短編集『レモン月夜の宇宙船』小説とエッセイを収録した本。

 小説は、野田氏自身や周囲の方をモデルにしているので、フィクションだと
分かっていても不思議なリアリティがある。一冊の画集から謎が広まる『ラプ
ラスの鬼』とか、今のデジタルテレビ・インターネットを予見するような『
五号回線始末記』など、面白い。

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●早草 紀子『あすなろなでしこ』は、日本の女子サッカーの試合を撮影した
記録。今年の北京オリンピックも、アテネ以前も収録されている。
 もっとボリュームがあってもと思うけれど、貴重な記録であることに違いは
ない。

Amazon.co.jp:『あすなろなでしこ』
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