木の葉燃朗のがらくた書斎>>2007年木の葉燃朗が読んだ本ベスト5
2007年木の葉燃朗が読んだ本ベスト5
2007年に印象に残った本は、かなり変則的なラインナップになりました。以下、順不同で紹介します。
●イビチャ・オシム:著・長束 恭行:訳『日本人よ!』
イビチャ・オシム前サッカー日本代表監督による本。他人がオシム氏の言葉を解釈したのではなく、オシム氏自身の言葉を翻訳したという点が、他のオシム本にはない特徴。
この本を読んでいたときは、よもや半年もたたずにオシムさんが病に倒れるとは思っていなかった。今もオシムさんが日本代表を率いていたら、選手だけでなく、指導者・マスコミ・ファンなど、日本サッカーに関係する多くの人の考え方を変えてくれただろうと思う。単に日本代表が強くなるかどうかに止まらず、サッカー観が変わったに違いないと、今も思っている。
この本でも、サッカーを中心に、「プロフェッショナルとは」ということについて、真摯に説いている。
イビチャ・オシム著・長束 恭行訳『日本人よ!』(2007年6月,新潮社)Amazon.co.jp・オンライン書店bk1・楽天ブックス
サイトに書いた書評「オシム監督の言葉に真摯に耳を傾けるならば、日本サッカーに関わるすべてが、一段階高いレベルに到達することができるだろう」
●岡本太郎『今日の芸術』
一番印象的だったのは、読む人を行動させるため(芸術をはじめさせるため)に、うまく挑発し、気持ちを奮い立たせてくれる文章。けっして挑発に反発したくなるのではなく、「よし、いっちょやってやろう!」という気持ちにさせてくれる。音楽でも絵でもなんでも、新しく挑戦しようと思う人、行き詰っている人は、年齢に関わらず勇気づけられるのではないかと思う。私は勇気づけられました。
それから、繰り返しが重要な芸(芸道)と、常に古いものを乗り越えていく芸術との違いや、日本固有の文化とはなにか、という話も繰り返し登場する。芸術は決して心地よいものではなく、強い意志を感じさせ、時には受け入れがたいものであるとか、日本の文化は、中国をはじめとする外国の文化を、表面的に取り込んできたとか、人によっては反発するであろう話も出てくるが、自信と責任を持って発言していると感じたので、私は興味深かった。
『今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社文庫)』 岡本 太郎 光文社 Amazon.co.jp・オンライン書店bk1・楽天ブックス
●フィリップ.K.ディック『最後から二番目の真実』、他
復刊された『最後から二番目の真実』をはじめ、『アンドロイドは電機羊の夢を見るか』、『流れよわが涙、と警官は言った』と、フィリップ.K.ディック作品を改めて読み、その魅力に目覚めた一年であった。
魅力的な舞台設定、広がり続ける筋書き、まとまりきらないラスト、というのが、ディックの小説の魅力だと、改めて思った。
サイトに書いた『最後から二番目の真実』の書評「読んでいて飽きない。まとまりきらないラストも許せる。」
『最後から二番目の真実 (創元SF文庫 テ 1-18)』 フィリップ K.ディック 佐藤 龍雄 東京創元社 Amazon.co.jp・オンライン書店bk1・楽天ブックス
●綱本将也/ツジトモ『GIANT KILLING』
まだ完結していないマンガを取り上げるのは、これから評価が変わってしまう可能性もあるのですが(例えば私にとって、『のだめカンタービレ』はそうだった)、ここはあえて。
監督・戦術に焦点を当てたという意味で、画期的なサッカーマンガ。特別な能力を持った選手や必殺技がなくとも、サッカーを魅力的に描けることを教えてくれる。そして、こういうマンガが受け入れられるくらいに、日本のサッカーファンも成熟してきたのではないかと、Jリーグ開幕からサッカーを見るようになって15年経った私は思うのです。
『GIANT KILLING 1 (1) (モーニングKC)』 綱本 将也 ツジトモ 講談社 Amazon.co.jp・オンライン書店bk1・楽天ブックス
●こうの史代全作品
原爆が投下されて10年が経った広島と、現在の被爆者二世の世代を描いた『夕凪の街、桜の国』をはじめとして、こうの史代さんの作品を順番に読んでいった。
各作品に共通するのは、特別ではない人が、特別ではない毎日を一生懸命生きていることの尊さ。そして、日々を生きるためのユーモアとやさしさの大切さ。
サイトに書いた『夕凪の街 桜の国』の書評:「大きな声でなくても、しっかりと伝わること」
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